エアコンのポンプダウンとは?引っ越し前に知っておきたい作業内容

エアコンのポンプダウン作業を行う専門業者のイメージ 故障・トラブル対応

こんにちは、エアコンラボのアキです。

引っ越しでエアコンを取り外すことになり、業者から「ポンプダウンをします」と言われて戸惑っていませんか。この記事では、業界団体や官公庁が公開している一次情報だけを使って、ポンプダウンが何をする作業なのか、家庭用エアコンにどの法律がかかるのかを整理します。

先にお伝えすると、この記事はポンプダウンを自分で行う方法を紹介するものではありません。メーカー自身が「お客様ご自身では行わないでください」と案内している作業だからです。

  • ポンプダウンが具体的にどんな工程なのか(業界団体の公開手順)
  • 家庭用エアコンの冷媒にかかる法律は、実は業務用と違うこと
  • 依頼先はどこで、事前に何を伝えればよいのか

エアコンのポンプダウン作業を行う専門業者のイメージ

ポンプダウンとは冷媒を室外機に閉じ込める作業

ポンプダウンとは、エアコンを取り外す前に、室内機と接続配管の中にある冷媒を室外機側へ集め、バルブを閉じて閉じ込める作業です。これをしてから配管を外すことで、冷媒を大気に逃がさずに済みます。

業界団体が公開している6つの工程

一般社団法人 日本冷凍空調工業会(JRAIA)は、セパレート形エアコンを取り外すときのポンプダウンの一般的な作業方法を、次の6工程として公開しています。あくまで工事を行う側の手順であり、読者の方が実施することを想定したものではありません。

工程 内容
1 三方弁のチャージポートに圧力計(ゲージマニホールド)を取り付ける
2 二方弁を全閉にする
3 冷房運転または強制冷房運転させる(暖房運転では不可)
4 圧力計がほぼ0MPa(0kgf/cm2)になるまで運転する
5 三方弁を全閉にし、運転を停止させる
6 圧力計を外し、接続配管を外す

冬場など冷房運転ができない条件のときは「強制冷房運転」で行いますが、その操作方法はメーカーごとに異なるとJRAIAは注記しています。手順そのものも一般的な例で、各メーカーで違う場合があります。出典: 日本冷凍空調工業会「ポンプダウンの一般的な作業方法」

省略すると起きること

JRAIAの「工事の際の安全上の注意」では、圧縮機を運転したまま、かつバルブを開放した状態で冷媒配管を外すと、空気などを吸引して冷凍サイクル内が異常高圧になり、破裂やケガの原因になると明記されています。冷媒ガスが火気に触れると有毒ガスが発生する、という注意も併記されています。

また同工業会は、ポンプダウンができない場合には必ず二方弁と三方弁の両方を全閉にしてから配管を外し、室内機と配管に残ったフロン類は冷媒回収機で回収するよう努めてほしい、としています。冷媒が抜けたまま再設置するとガスの補充が別途必要になります。出典: 日本冷凍空調工業会「工事の際の安全上の注意」

圧力計の数値を確認している様子

家庭用エアコンの冷媒にかかる法律

「ポンプダウンはフロン排出抑制法で義務づけられている」と書かれた記事をよく見かけますが、家庭用エアコンについては正確ではありません。所管官庁の説明を確認しておきましょう。

放出禁止の対象は業務用とカーエアコン

フロン排出抑制法(平成13年法律第64号)の第86条は「何人も、みだりに特定製品に冷媒として充塡されているフロン類を大気中に放出してはならない」と定め、第103条で違反者を1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金としています。ただしここでいう特定製品とは、同法第2条が定める業務用の機器(第一種特定製品)とカーエアコン(第二種特定製品)です。

環境省のFAQも「家庭用のエアコン、冷蔵庫及び衣類乾燥機並びに使用を終了した自動車に搭載されているカーエアコンは本法に基づく回収その他の義務はありません」と明記しています。なお業務用か家庭用かは使用場所ではなく製造・販売された区分で決まるため、自宅にある機器でも業務用として販売されたものなら対象になります。出典: e-Gov法令検索「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」環境省「フロン排出抑制法」ポータルサイト FAQ

家庭用は家電リサイクル法で回収が義務

では家庭用エアコンの冷媒が野放しかというと、そうではありません。家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法、平成10年6月5日法律第97号、2001年4月施行)が家電4品目を対象に、製造業者等に対して品目ごとに定められた55〜82%のリサイクル率の達成と、フロン類を使用している家庭用エアコン等からのフロン回収を義務づけています。

機器 冷媒を扱う根拠法
家庭用エアコン 家電リサイクル法(製造業者等がフロンを回収)
業務用エアコン・冷凍冷蔵機器 フロン排出抑制法(第一種特定製品)
カーエアコン 自動車リサイクル法/同法第2種特定製品

つまり「罰則が直接かからないから放出してよい」という話ではなく、回収の責任が別の法律で組み立てられているということです。出典: 環境省「家電リサイクル法の概要」

自分で行うことをおすすめしない理由

メーカーが明確に止めています

日立のエアコンサポートページには「お客様ご自身によるエアコンの据え付けや移設、取り外し、分解は行わないでください。水漏れや感電、火災の原因になる恐れがあります」と書かれており、設置・移設・取り外し工事は販売店や設置業者へ相談するよう案内されています。私も、メーカーがここまではっきり書いている作業を読者の方に勧めることはできません。出典: 日立「エアコンの設置(据付け)・移設・取り外しについて知りたいです」

工具も冷媒ごとに専用

JRAIAは、配管・フレアナット・工具はR410AおよびR32専用のものを使い、既存のR22用部材を流用すると冷凍サイクルの破裂など重大な事故の原因になると注意しています。据付時のエアパージに使う真空ポンプも排気速度27L/分(60Hz)程度が適当とされ、ゲージマニホールドとチャージホースは冷媒ごとに専用です。さらに家庭用エアコンには「冷媒による追い出し」用の冷媒は初期充填されておらず、誤ったエアパージをすると能力が低下する場合があるとされています。出典: 日本冷凍空調工業会「エコロジー工事の方法・手順」

引っ越しでエアコンを運び出す様子

引っ越しで依頼するときの段取り

引っ越し業者のエアコン工事は附帯サービス

国土交通省 近畿運輸局の引越Q&Aによると、引っ越しの請求は基本運賃・料金に附帯サービス費用(荷役費用、クーラーの取り付け費用、ハウスクリーニング費用等)が加算される形になります。エアコン工事は運送そのものとは別枠なので、見積書に含まれているかを必ず確認してください。

同ページでは、キャンセル料は引越日の3日前までは無料、前々日は見積書記載の運賃・料金の20%以内、前日は30%以内、当日は50%以内とされています。日程を動かしにくい以上、取り外しと取り付けの手配は早めに固めておくのが安全です。出典: 国土交通省 近畿運輸局「引越Q&A」

依頼前に伝えておきたいこと

  • メーカー名・型番・製造年(強制冷房運転の操作方法がメーカーごとに違うため)
  • 冷媒の種類(室外機の銘板に記載。R22かR410A・R32かで部材が変わります)
  • 室内機・室外機の設置場所と、配管の状態や配管長
  • 取り外し日と取り付け日、引っ越し当日との前後関係
  • 再設置せず処分する場合は、家電リサイクル法に沿った引き取りの可否

エアコンのポンプダウンに関するよくある質問(FAQ)

Q1. 家庭用エアコンならポンプダウンをしなくても違法ではないのですか?

A. フロン排出抑制法第86条の放出禁止は業務用機器とカーエアコンが対象で、家庭用エアコンは同法の回収義務の対象外です。ただし家電リサイクル法で製造業者等にフロン回収が義務づけられており、業界団体も冷媒を大気に放出しない工事を推奨しています。放出してよいという意味ではありません。

Q2. 冬でもポンプダウンはできますか?

A. JRAIAの手順では暖房運転では行えず、冬期や周囲条件で冷房運転ができない場合は強制冷房運転で行うとされています。操作方法はメーカーごとに異なるため、機種を伝えて業者に確認してもらってください。

Q3. ポンプダウンができない機器はどうなりますか?

A. JRAIAは、二方弁と三方弁を両方全閉にしてから配管を外し、室内機と配管に残ったフロン類は冷媒回収機で回収するよう努めることを求めています。冷媒回収機を持つ業者かどうかを事前に確認しておくと安心です。

まとめ・エアコンのポンプダウン

ポンプダウンは、圧力計がほぼ0MPaになるまで冷房運転して冷媒を室外機に集め、バルブを閉じてから配管を外す6工程の作業です。家庭用エアコンはフロン排出抑制法の回収義務の対象外ですが、家電リサイクル法で回収が義務づけられており、冷媒を逃がさない工事が業界の標準になっています。

メーカーが自身での取り外しを明確に止めている以上、依頼先は販売店・設置業者・エアコン専門業者です。引っ越しが決まったら、機種と冷媒の種類を手元に控えて早めに相談してみてください。

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