エアコンのガス補充は自分でできる?法規制と正しい依頼先を解説

冷媒ガスの点検作業を行う専門業者のイメージ 故障・トラブル対応

こんにちは、エアコンラボのアキです。

冷房の効きが悪くなると、「ガスが減ってきたのかな」と考える方は多いと思います。そこで「エアコンのガス補充」を調べ始めた方に、先にお伝えしたいことがあります。

エアコンの冷媒(ガス)は、使うことで減る消耗品ではありません。減っているとすれば、どこかから漏れています。そして充塡そのものは、個人が道具を買ってやる作業ではありません。

この記事では、官公庁とメーカーが公開している情報だけを根拠に、いま何を確認すればよいかを整理します。

  • 冷媒が「消耗品ではない」といえる根拠
  • 業者を呼ぶ前に自分で確認できること
  • 家庭用エアコンとフロン関連の法律の関係
  • どこに相談し、何を確認して依頼するか

冷媒ガスの点検作業を行う専門業者のイメージ

エアコンのガス補充が必要になるのはどんなときか

まずは「そもそもガスは減るのか」という前提から確認していきましょう。

冷媒は使って減る消耗品ではありません

エアコンの「ガス」は、正しくは冷媒と呼ばれます。室内機と室外機を結ぶ配管の中を回りながら、熱を運ぶ役割を担っています。

三菱電機は自社の解説記事で、冷媒ガスは「本来ならば減少することはなく、気化と液化を繰り返して温度調節の役割を果たすもの」と説明しています。

出典は三菱電機「くらトク」エアコンのガス漏れの解説です。

つまり、ガソリンのように走った分だけ減るものではありません。閉じた回路の中を、同じ量がぐるぐる回り続けているだけです。

ここを取り違えると、「古いから補充が要る」という発想になってしまいます。年数が経ったこと自体は、補充の理由になりません。

減っているなら原因は「漏れ」です

それでも冷媒が足りなくなることはあります。同じ三菱電機の解説では、ガス漏れの原因として次の3つが挙げられています。

  • 取り付け工事の不備(配管の折れ・穴あき・接続不良)
  • 室外機の移動や転倒による接続不良や部品の損傷
  • 熱交換器・配管・バルブなど内部部品の腐食

3つとも「漏れ」が原因です。ですから、補充だけをしても漏れ口はそのまま残ります。配管がむき出しになっている状態を放置している場合も、傷みの進行には注意が必要です。

入れても入れても効きが戻らない、という相談が絶えないのは、この構造が理由です。直すべきは漏れ口であって、量ではありません。

自分のエアコンの冷媒はR32かR410Aか

冷媒には種類があります。ダイキン工業は、2015年以降の同社製の家庭用エアコンにはR32を使用していると案内しています。

あわせて、冷媒の種類と質量は仕様書や室外ユニットの機械銘板に記載されている、とも説明されています(ダイキン工業「フロンについて(ルームエアコン)」)。

ここで大事なのは、封入量が「だいたい」ではなく質量で決められている点です。機種ごとに数値が決まっているので、勘で足してよいものではありません。

室外機の銘板を一度スマートフォンで撮っておくと、相談のときにそのまま見せられて便利です。

効きが悪いときに先に確認したい3つのこと

冷媒漏れを疑う前に、自分で確かめられることがあります。順番に見ていきましょう。

フィルターの掃除は2週間に一度が目安

環境省の節電情報では、フィルターの掃除は2週間に一度が目安とされています。掃除をすることで、冷房時は約4%、暖房時は約6%の消費電力の削減につながるとされています。

目詰まりした状態は、冷媒が足りないときとよく似た「効きが悪い」症状を生みます。まずはここを片づけてから判断しましょう。

同じ資料では、設定温度の目安として夏の冷房は28℃、冬の暖房は20℃が示されています。夏に1℃高くすると約13%(約70W)、冬に1℃低くすると約10%の削減になるとされています(環境省 COOL CHOICE「家庭でできる節電アクション」)。

室外機のまわりを片づける

同じ環境省の資料では、室外機の吹出口に物を置くと冷暖房の効果が下がると案内されています。

物置き代わりに使っていたり、植木鉢が前をふさいでいたりしないでしょうか。これだけで体感が変わることもあります。

また、霜や氷が配管についているときは、いったん運転を止めてください。無理に氷をはがすと、配管やフィンを傷めることがあります。

症状から原因を切り分ける

ここまでの内容を、確認の順番として表にまとめます。

気づいた症状 まず疑うこと 次にすること
風は出るが冷えない。フィルターが汚れている フィルターの目詰まり 掃除して1〜2日ようすを見る
室外機の前に物が置いてある 吹出口がふさがれている まわりを片づけて再確認する
配管に霜や氷がついている 冷媒不足を含む異常 運転を止めて相談する
掃除しても改善しない。10年近く使っている 冷媒漏れや部品の劣化 メーカーの修理窓口に連絡する

症状の見分け方は、ぬるい風しか出ないときの原因の記事でも整理しています。

室外機の配管に霜がついている様子

ガス補充を自分でやってはいけない理由

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

家庭用エアコンと法律の関係を整理します

フロン排出抑制法の対象となる「第一種特定製品」は、業務用のエアコンや冷凍冷蔵機器です。家庭用のエアコンは同法に基づく回収などの義務の対象ではなく、家電リサイクル法の対象になります(環境省「フロン排出抑制法」ポータルサイト FAQ)。

そして業務用の機器では、フロン類の充塡と回収は、都道府県知事の登録を受けた第一種フロン類充塡回収業者が行うことになっています。冷媒を扱う仕事は、登録された事業者に任せる制度になっているわけです。

家庭用も野放しではありません。家電リサイクル法では、エアコンを含む4品目が対象とされています。フロン類を使っている家庭用エアコンなどは、含まれるフロンを回収しなければならないと定められています。

再商品化率も55〜82%という基準が課されています(環境省「家電リサイクル法の概要」)。

要するに、冷媒は社会全体で「大気に出さない」前提で管理されています。個人がボンベを買って足す、という使い方は想定されていません。

市販の補充キットに手を出さないでください

通販などで冷媒の缶やキットを見かけることがありますが、家庭用エアコンに使うことはおすすめできません。理由は3つあります。

  • 封入量は機種ごとに質量で決まっている。多すぎても少なすぎても不具合の原因になる
  • R32は、日本冷凍空調工業会が微燃性(A2L)冷媒として安全基準やガイドラインを整えている冷媒である
  • 種類の違う冷媒が混ざると、その後の修理や回収そのものが難しくなる

日本冷凍空調工業会は、微燃性冷媒をISO 817でA2Lに区分されるものと説明しています(日本冷凍空調工業会「燃焼性を有する冷媒の安全性評価プロジェクト」)。工業会が専用の指針を作るほどの扱いを要するもの、と考えてください。

なお、車用として売られている補充キットも見かけますが、当ブログでは扱いません。家庭用エアコンとは規格が別物です。

保証が使えなくなるおそれもあります

ダイキン工業はルームエアコンの保証期間を、お買い上げ日から1年間と案内しています。冷媒系統の部分については5年間です(ダイキン工業「保証について(ルームエアコン)」)。

冷媒が漏れているなら、まさにこの冷媒系統の話です。自分でバルブを開けてしまうと、もともと使えたはずの保証が使えなくなるおそれがあります。

それに、いったん手を加えると「元から漏れていたのか、触ったから漏れたのか」の切り分けが難しくなります。原因調査の面でも不利になってしまいます。

冷媒ガスの圧力を確認するゲージマニホールド

エアコンのガス補充を業者に依頼するときの進め方

では、実際にどこへ連絡し、何を確認すればよいのでしょうか。

相談先はメーカーの修理窓口か購入した販売店

三菱電機は、いつものように使っていて効きが悪いと感じたら、メーカーの修理窓口へ相談するよう案内しています。まずはここが基本の窓口です。

賃貸住宅にお住まいの場合は、先に管理会社や大家さんへ連絡してください。設備として備え付けられたエアコンは、勝手に手配すると費用の扱いでもめることがあります。

相談のときは、次の情報をメモしておくと話が早く進みます。

  • いつ頃から、どんな症状が出ているか
  • フィルター掃除をしたのはいつか、効果があったか
  • 室外機の銘板に書かれた型番と冷媒の種類
  • 設置した年と、引っ越しや移設をしたかどうか

費用は見積もりで確認します

この記事では、あえて金額の相場を書いていません。冷媒漏れの修理費用について、公的機関がまとめた統計が見当たらないためです。

漏れ箇所や配管の状態によって作業内容が変わるので、実際に見てもらわないと金額は決まりません。2〜3社から見積もりを取り、内容を並べて比べると判断しやすくなります。

見積書を受け取ったら、次の点を確認してみてください。

  • 漏れ箇所を探す調査が費用に含まれているか
  • 使う冷媒の種類と、入れる量が示されているか
  • 出張費や診断料が別建てかどうか
  • 作業後に再発した場合の対応が決まっているか

◆アキのワンポイントアドバイス

私が読者の方におすすめしたいのは、電話をかける前に室外機の銘板を撮っておくことです。冷媒の種類と質量が書かれているので、窓口での確認がぐっと短く済みます。

そして「補充だけお願いします」とは言わないことです。漏れを直さないまま入れても、また同じ症状に戻ります。伝えるべきは症状であって、作業の指定ではありません。

修理か買い替えかの判断材料

年数が経った機種では、買い替えも選択肢に入ります。判断の目安になるのが部品の保有期間です。

ダイキン工業は、ルームエアコンの補修用の性能部品について、製造を打ち切った時から10年と案内しています(ダイキン工業「部品保有期間について」)。

この期間を過ぎていると、部品が手に入らず修理できないことがあります。窓口に型番を伝えて、部品があるかどうかを先に聞いてみるとよいでしょう。

エアコンのガス補充に関するよくある質問(FAQ)

Q1. ガスは何年かごとに補充するものですか?

A. いいえ。三菱電機は、冷媒ガスは本来ならば減少することはないと説明しています。定期的に足すという考え方の設備ではありません。減っているなら漏れを疑ってください。

Q2. 補充キットを使えば安く済みますか?

A. おすすめしません。封入量は機種ごとに質量で決まっており、量を誤ると不具合につながります。冷媒系統の保証が使えなくなるおそれもあります。

Q3. 家庭用エアコンにフロン排出抑制法は関係ありますか?

A. 同法の第一種特定製品は業務用の機器です。家庭用エアコンは家電リサイクル法の対象で、廃棄する際にフロン類の回収が求められます。捨てるときは自治体や販売店の案内に従ってください。

Q4. 賃貸の場合、費用は誰が払いますか?

A. 契約内容によって変わります。備え付けの設備であれば貸主側が負担するケースもあります。自分で業者を手配する前に、管理会社へ連絡してください。

まとめ・エアコンのガス補充で押さえておきたいこと

冷媒は使って減るものではなく、減っていれば漏れが起きています。ですから、補充だけを繰り返しても症状は戻ってきます。

効きが悪いと感じたら、まずフィルターの掃除と室外機まわりの片づけです。環境省の資料でも、2週間に一度の掃除で冷房時は約4%、暖房時は約6%の消費電力の削減になるとされています。

それでも改善しないときは、メーカーの修理窓口か販売店へ相談してください。市販のキットで自分で入れるのは、封入量の管理、冷媒の性質、保証のいずれの面から見ても割に合いません。

見積もりでは、漏れ箇所を探す調査が含まれているかを確認しましょう。落ち着いて順番に進めれば、余計な出費をかけずに解決に近づけるはずです。

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