こんにちは、エアコンラボのアキです。
「冷房をつけたまま窓を開けっ放しにしていた。電気代はどれくらい増えてしまったんだろう」「換気のために窓を開けたいけれど、エアコンは止めるべきなのか」。エアコンと窓の関係は、夏も冬も気になるところですよね。
この記事を書くにあたって、私はまず「窓を開けっ放しにすると電気代が何円増えるか」という公表値を探しました。「開けっ放し」そのものの公表値は見つかりませんでしたが、それに近い条件の検証データがダイキン工業の公式サイトにありました。真夏の日中12時間、30分に1回・5分間の窓開け換気をしたときとしなかったときの消費電力量を、実際に測った数字です。
ですので、この記事では「開けっ放しなら◯円増えます」とは書きません。ダイキンの検証値と公的機関の数字を、条件ごと正直に並べていきます。
- ダイキンが公表している「窓開け換気あり/なし」の消費電力量と、その実施条件
- 「開けっ放し」の公表値を探した結果
- 資源エネルギー庁が公表している「窓などの開口部からの熱の出入り」の割合と、その数字の限界
- 条件つきで公表されている省エネ効果の数値(年間kWh・年間円)と、その使いどころ
- 窓が開いたままのとき、エアコン側で何が起きているのか(メーカーの説明)
- 換気で窓を開ける必要があるとき、電気代の側からできること

ダイキンが「窓開け換気あり/なし」の消費電力量を公表しています
最初に、この記事でいちばん大事な数字を出します。ダイキン工業が検証企画「夏場に窓開け換気をする際、エアコンはつけっぱなしにすべきか」で公表している実測値です。
真夏の12時間で1.50kWh、電気代にして約40.5円の差
エアコンをつけっぱなしにしたまま、30分に1回・5分間の窓開け換気をした場合と、換気をしなかった場合の比較です。
| 窓開け換気 | 消費電力量(12時間) | 電気代(27円/kWh換算) | 実施日・最高気温・天候 |
|---|---|---|---|
| なし | 4.02kWh | 108.5円 | 2020年8月12日/35.4℃/晴一時雨、雷を伴う |
| あり | 5.52kWh | 149.0円 | 2020年8月8日/33.6℃/曇一時雨後晴 |
差は1.50kWh、1日あたり約40.5円。基本設定は「冷房/設定温度26℃/風量自動/換気オフ」、場所は神奈川県横浜市、時間帯は7:00〜19:00と明記されています。
ダイキン自身が「本調査は、1つの住宅を使用し、天気や気温などの条件が近い複数の日に実施したものです。そのため、厳密な同条件での比較ではありません」と但し書きを付けています。上の表でも、換気なしの日のほうが最高気温は1.8℃高い。それでも消費電力量は換気ありのほうが多い、という読み方が正確です。
同じ検証には、換気のたびにエアコンを消すかどうかの比較もあり、つけっぱなしのほうが1日で約45.7円安いという結果でした(詳しくはFAQで)。
ただし、これは「開けっ放し」の数字ではありません
ダイキンが測ったのは30分に1回、5分間だけ窓を開ける換気です。12時間のうち窓が開いていたのは合計約2時間。開けっ放しにした場合の数字ではありません。この値をそのまま「開けっ放しにすると1日40円」と読むのは誤りです。
「開けっ放し」そのものの消費電力量は、次のところを当たりましたが見つかりませんでした。
- 資源エネルギー庁の省エネポータルサイト…省エネ行動ごとの効果は数値で公表されていますが、「窓を開けた状態」という項目はありません
- ダイキン工業の上記の検証企画(夏・冬とも)…条件はいずれも「30分に1回、5分間の窓開け換気」です
- ダイキン工業の換気に関する特設ページ…「気になる電気代。」の記述はありますが数値はありません
- 日立のエアコンFAQ「よく冷えない」…原因の説明のみで、電気代の増加量はありません
- 日本冷凍空調工業会の家庭用エアコンのページ…能力選びと断熱の重要性のみで、窓開け時の消費電力量はありません
そもそも、なぜ「1時間◯円」が作れないのか
電気代の計算式そのものは単純です。
電気代(円) = そのときの消費電力(kW) × 運転時間(h) × 電力量料金の単価(円/kWh)
単価は公表されていますし、運転時間は自分で分かります。問題は真ん中の「窓を開けているときの消費電力(kW)」で、これは1つの数字に決まりようがない量です。窓の大きさ、開けた幅、外気温、日射、風速、部屋の断熱性能、エアコンの能力で全部変わります。ダイキンが実施日と天候まで書いて数字を出しているのは、条件を全部書かないと数字が出せないテーマだからです。ネットでよく見る「1時間30円前後」「12時間で360円」といった数字は、その条件が書かれていないことがほとんどなので、この記事では再掲しません。
この記事で書けること・書けないこと
| 問い | この記事で扱えるか | 理由 |
|---|---|---|
| 30分に1回・5分間の換気で電気代は何円増えるか | 扱える | ダイキンが条件つきで公表(12時間で1.50kWh・約40.5円) |
| 窓を開けっ放しにすると電気代は何円増えるか | 扱えない | 開けっ放しの条件で測った公表値が見つからなかった |
| 窓を開けっ放しにすると電気代は増える方向か | 扱える | 資源エネルギー庁が「ドア・窓の開閉は少なく」を省エネのコツとして公表している |
| 窓などの開口部は熱の出入りにどれくらい関わるか | 扱える | 資源エネルギー庁が割合を公表している(閉じた窓の話である点に注意) |
| 公表されている省エネ行動の効果は何kWh・何円か | 扱える | 条件つきで年間の数値が公表されている |
| 窓が開いたままだとエアコン側で何が起きるか | 扱える | メーカーが「冷房能力を超える熱源」として説明している |
| 窓を開けっ放しにするとエアコンが壊れるか | 扱えない | そう書いている一次情報が見つからなかった |
公的機関が公表しているのは「開口部からの熱の出入り」の割合です
窓と冷暖房の関係で、公的機関がはっきり数字を出しているのはここです。資源エネルギー庁の省エネポータルサイト「省エネ住宅」のページに、次の記述があります。
夏の冷房時に入ってくる熱の約7割は窓などの開口部から
資源エネルギー庁「省エネ住宅」(省エネポータルサイト)の「開口部の断熱」の項に、こう書かれています。
住宅の断熱で重要なのが、開口部の断熱性能を高めることです。なかでも窓は、熱の出入りが大きいので、断熱上の重要なポイントとなります。冬の暖房時に、室内に逃げ出す熱の約6割が窓などの開口部からで、夏の冷房時に、室外から侵入する熱の約は、約7割は窓などの開口部からです。
同じページには、家庭のエネルギー消費のうち約30%を占めているのが暖冷房であることも書かれています。つまり、家で使うエネルギーの3割が暖冷房で、その暖冷房の負荷の大半を窓などの開口部が作っている、という構図です。
| 季節 | 熱の向き | 窓などの開口部が占める割合 | 出典の記述 |
|---|---|---|---|
| 夏(冷房時) | 室外 → 室内へ侵入 | 約7割 | 資源エネルギー庁「省エネ住宅」開口部の断熱 |
| 冬(暖房時) | 室内 → 逃げ出す | 約6割 | 同上 |
この数字に付いていない情報があります
ここは正直に書きます。資源エネルギー庁のこのページには、約6割・約7割の根拠になった調査名も、住宅の仕様も、外気温の条件も書かれていません。「どんな家で、いつ、どうやって測った値なのか」は、このページからは分かりません。
ですので私は、この数字を「日本の住宅一般に必ず当てはまる定数」としては扱いません。公的機関が省エネ施策の説明として示している概数、という位置づけで読むのが妥当だと思っています。それでも、窓が熱の出入りの主役だという方向性を国が示している事実には意味があります。
これは「閉じた窓」の話であって「開けた窓」の話ではありません
ここも混同されやすいところです。約6割・約7割は、ガラスとサッシを通り抜ける熱の話です。窓を開けたときに空気そのものが出入りする話ではありません。
同じページには、住宅の断熱性能は外皮平均熱貫流率(UA値)、日射遮蔽性能は冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)で示す、という説明もあります。どちらも「窓が閉まっている状態」を前提にした指標です。窓を開けた瞬間、これらの指標が想定していない経路で空気が動きます。つまり「7割」を根拠に「窓を開けたら消費電力が7割増える」とは、まったく言えません。別の話です。
なお同じページには、日射遮蔽について具体的な比較も1つだけ載っています。
ブラインドなどを設置する場合は、窓の外側に取り付ける方が、内側に取り付けるよりも、3倍近くの効果があります。
資源エネルギー庁の省エネのコツでは「ドア・窓の開閉は少なく」が筆頭です
「窓を開けっ放しにすると損なのか」という向きの話であれば、公的な記述があります。
冷房時の工夫の1行目が、まさにこれです
資源エネルギー庁「無理のない省エネ節約(空調)」のエアコンの省エネレッスンには、冷房時の工夫として次の4項目が挙げられています。順番も原文どおりです。
- ドア・窓の開閉は少なく。
- レースのカーテンやすだれなどで日差しをカット。
- 外出時は、昼間でもカーテンを閉めると効果的。
- 扇風機を併用。風がカラダにあたると涼しく感じます。
暖房時の工夫も1行目は同じ「ドア・窓の開閉は少なく。」で、2行目が「厚手のカーテンを使用。床まで届く長いカーテンの方が効果的。」、そして最後に「※適宜、換気をしましょう」と注記されています。国の省エネの案内でも、換気そのものは否定されていません。
数値がついている省エネ行動は4つあります
同じページには、条件つきで効果を数値化した省エネ行動が示されています。この中に「窓を開けない」という項目はありません。あくまで参考として、どういう桁の話なのかを掴むために引用します。
| 省エネ行動 | 前提条件(原文) | 年間の省エネ量 | 年間の節約額 |
|---|---|---|---|
| 冷房の設定温度を1℃上げる | 外気温度31℃の時、エアコン(2.2kW)の冷房設定温度を27℃から1℃上げた場合(使用時間:9時間/日) | 電気30.24kWh(原油換算7.62L、CO2削減量14.8kg) | 約940円 |
| 冷房は必要なときだけつける | 冷房を1日1時間短縮した場合(設定温度:28℃) | 電気18.78kWh(原油換算4.73L、CO2削減量9.2kg) | 約580円 |
| 暖房の室温を20℃を目安にする | 外気温度6℃の時、エアコン(2.2kW)の暖房設定温度を21℃から20℃にした場合(使用時間:9時間/日) | 電気53.08kWh(原油換算13.38L、CO2削減量25.9kg) | 約1,650円 |
| 暖房は必要なときだけつける | 暖房を1日1時間短縮した場合(設定温度:20℃) | 電気40.73kWh(原油換算10.26L、CO2削減量19.9kg) | 約1,260円 |
| フィルターを月1〜2回清掃 | フィルターが目詰りしているエアコン(2.2kW)とフィルターを清掃した場合の比較 | 電気31.95kWh(原油換算8.05L、CO2削減量15.6kg) | 約990円 |
出典は資源エネルギー庁「無理のない省エネ節約」の算出根拠に明記されていて、「省エネ性能カタログ2015年夏版」(資源エネルギー庁)および「家庭の省エネ大事典2012年版」(一般財団法人省エネルギーセンター)を元に作成、掲載データは省エネルギーセンターの実測値、とされています。
金額換算の単価は31円/kWhです
上の表の「円」は、次の単価で換算されています。
- 電気:31円/kWh[令和4年7月 公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会 新電力料金目安単価(税込)]
- 原油換算係数:電気0.252L/kWh(省エネ法施行規則第4条)
- CO2排出係数:電気0.488kgCO2/kWh(電気事業者別排出係数 令和2年提出用「代替値」)
電力量料金の単価は、実は公的なものが2系統流通しています。31円/kWhと27円/kWhの違いについてはエアコンとテレビの電気代の記事で詳しく整理しているので、単価そのものが気になる方はそちらをご覧ください。
公表値どうしを割ると、1時間あたりの目安までは出せます
ここは、条件をすべて示したうえでの計算です。同じ資源エネルギー庁のページに、冷暖房の期間も公表されています。
- 冷房期間:3.6か月(6月2日〜9月21日)112日
- 暖房期間:5.5か月(10月28日〜4月14日)169日
- 中間期:84日
「冷房を1日1時間短縮した場合(設定温度28℃)、年間で電気18.78kWhの省エネ」という公表値を、同じサイトが公表している冷房期間112日で割ると、こうなります。
18.78kWh ÷ 112日 = 約0.168kWh(冷房1時間あたり)
0.168kWh × 31円/kWh = 約5.2円(冷房1時間あたり)
前提:設定温度28℃、資源エネルギー庁が示す冷房期間112日、単価31円/kWh。出典はすべて同一サイトの公表値で、私が決めた数字は入っていません。
暖房側も同様に、40.73kWh ÷ 169日 = 約0.241kWh、31円/kWhで約7.5円(暖房1時間あたり、設定温度20℃)となります。
ただし、これは「窓が閉まっている、ごく標準的な運転」の平均値です。窓を開けたときにこれが何倍になるのかは、繰り返しになりますが公表されていません。この5.2円という数字を勝手に2倍3倍して「窓を開けると1時間10円」と書くことは、私はしません。それをやった瞬間に、出典のない創作になります。
窓が開いたままのとき、エアコン側では何が起きているのか
金額は出せませんが、「機械の中で何が起きているか」はメーカーが公表しています。ここは電気代の増減を理解するうえで役に立つ部分です。
メーカーは「冷房能力を超える熱源」という言い方をしています
日立「よく冷えない/冷たい風が出てきません。」(エアコン よくあるご質問)の冒頭には、こう書かれています。
部屋が冷えないと感じる原因には、外気温の急上昇や猛暑の継続、または室内に大勢の人がいたり熱器具を使用したりするなどの冷房能力を超える熱源があることで、冷えるまでの時間が長くなることがあります。
ここで挙げられているのは外気温・在室人数・熱器具ですが、考え方は同じです。部屋に入ってくる熱がエアコンの冷房能力を上回ると、設定温度に届くまでの時間が延びる。開いた窓から熱と湿気が入り続けている状態は、まさにこの「能力を超える熱源」が居座っている状態にあたります。
「サーモオフ」に入らない、という状態です
同じ日立のページには、エアコンの動き方についてこう説明されています。
エアコンは天井付近の暖かい空気を吸い込み、冷却して部屋全体を冷やします。吸い込んだ空気が設定温度に達すると「サーモオフ」という仕組みにより、自動的に運転を停止します。
ここが電気代の話につながります。エアコンがいちばん電気を使うのは「設定温度に向かって冷やしている最中」で、設定温度に達してサーモオフに入っている間は消費電力がぐっと下がります。窓が開いていて室温が下がりきらないと、サーモオフに入る時間が来ないまま運転が続くことになります。
この点は業界団体の説明とも一致します。日本冷凍空調工業会「お部屋に見合った能力のエアコンを選ぶ」には、次のように書かれています。
インバータ制御のエアコンは、運転開始時に急速冷・暖房ができ、設定温度に近づくと効率の良い運転に自動的に変わります。運転時間の大半が、能力・消費電力をセーブした効率的な運転のため、大きな省エネ性を発揮します。
つまり今のエアコンの省エネ性は、「運転時間の大半が、設定温度に近づいたあとの効率の良い運転である」という前提の上に成り立っています。窓が開けっ放しでその前提が崩れると、省エネ性が発揮される時間帯が減る。これが、金額は出せなくても確実に言える構造です。
能力の選び方も、そもそも「負荷に見合っているか」で決まっています
同じ日本冷凍空調工業会のページは、能力選びについてこう書いています。
効率の良い運転のためには、お部屋の広さや冷・暖房負荷に見合った能力のエアコンを設置することが大切です。
断熱の良い家屋は最大の省エネ効果があります。
カタログの適用畳数は「部屋の広さ」だけでなく「冷暖房負荷」に見合っているかで見る、という書き方です。窓を開けるという行為は、部屋の広さは変えずに負荷だけを増やす行為なので、その前提から外れていきます。畳数の目安そのものについてはエアコン2台の電気代の記事で条件まで整理しています。
「壊れる」と書いている一次情報は見つかりませんでした
ここも正直に書きます。「窓を開けっ放しで使い続けるとエアコンが壊れる」「コンプレッサーの寿命が縮む」という記述を、メーカーのFAQ・取扱説明、業界団体、公的機関のいずれにも見つけられませんでした。
日立のページで「点検・修理が必要」とされているのは、設置直後から冷たい風が出ない、冷房16℃・風速自動にしても冷風が出ず室外機のファンが回らない、タイマー・みはり・除湿のいずれかのランプが点滅している、といった具体的な症状です。窓の開閉は挙げられていません。
ですので、この記事では「窓を開けっ放しにすると壊れます」とは書きません。書けるのは「効率の良い運転に入れない時間が長くなる」というところまでです。故障を心配するより、次の見出しにある現実的な対処を先に試すほうが確実だと思います。
なお、同じページには参考情報として、自動クリーン運転を搭載した機種ではつけっぱなしで運転していると24時間ごとにフィルター掃除のため冷房が停止することがあり、掃除中は約11分間の送風運転になる、という記述もあります。「急に冷えなくなった」と感じたとき、窓のせいだと決めつける前に確認したいポイントです。
換気で窓を開ける必要があるとき、電気代の側からできること

ここまで読むと「じゃあ換気はどうすれば」と思いますよね。換気の方法そのものはエアコンの臭いと換気の記事で、メーカーと厚生労働省の案内を条件つきで詳しくまとめています。この記事では電気代・熱負荷の側に絞って整理します。
住宅の居室の換気回数は、法令で0.5回/hと決まっています
意外に知られていませんが、住宅にどれだけの換気が必要かは法令に書かれています。建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第20条の8第1項第1号イ(1)に、必要有効換気量の式が定められています。
Vr = nAh
Vr:必要有効換気量(1時間につき立方メートル)
n:住宅等の居室にあっては0.5、その他の居室にあっては0.3
A:居室の床面積、h:居室の天井の高さ
この式の意味は、住宅の居室は1時間あたり部屋の空気の半分を入れ替える能力の換気設備を備えることです。2003年の建築基準法改正で導入された、いわゆる24時間換気の根拠がここにあたります。
電気代の観点で大事なのはここです。24時間換気が正常に動いている住宅では、窓を閉めていても、この0.5回/h分の外気は入り続けています。そのうえで窓を開ければ、その分が上乗せされます。「窓を開けないと空気が入ってこない」という前提で開けっ放しにしているなら、まず自宅の給気口と換気扇が動いているかを確認するほうが先です。
エアコン自体は、基本的に換気をしていません
「エアコンをつけているから換気されている」という誤解はよくあります。日立「エアコンを運転すると室内が換気されますか?」によると、同社で給気・排気機能を搭載していたのは2008年までに発売された機種で、機種によっては給気機能のみとされています。同ページには「配管の穴やドレンホースなどから、わずかに外気が入り込むことがあります」という注記もありますが、これは換気として当てにできる量ではありません。
同ページの注意書きも引用しておきます。
密閉した部屋で使用するときや、ストーブなどの燃焼器具と同時に使用するときは、エアコンの換気機能だけでは不十分な場合があります。こまめに窓を開けたり、換気扇などを使って室内を換気してください。
燃焼器具と併用するときの換気については、エアコンと灯油代を比べた記事でも一酸化炭素の観点から扱っています。
窓を開ける前後に効くのは、日射を止めることです
金額の出せる対策として資源エネルギー庁が挙げているのは、窓の開閉頻度そのものよりも日射遮蔽です。冷房時の工夫の2番目と3番目が「レースのカーテンやすだれなどで日差しをカット」「外出時は、昼間でもカーテンを閉めると効果的」でした。前述のとおり、ブラインドは窓の内側より外側に付けたほうが3倍近い効果とも書かれています。
窓を開けている間に入ってくるのは、空気だけではありません。カーテンを開け放って直射日光を入れたまま換気すると、空気の入れ替えが終わったあとも室内に熱が残ります。換気で窓を開けるときも、日射が強い時間帯は日差しを遮る側の対策を外さない。これは公表値の裏付けがある、数少ない具体策です。
状況別に、まずやることを整理しました
| あなたの状況 | まず確認すること | 根拠になる公表情報 |
|---|---|---|
| うっかり開けっ放しにしていた | 窓を閉める。金額は特定できないが、閉めればそれ以降は通常の運転に戻る | 日立:能力を超える熱源が無くなれば冷えるまでの時間の問題に戻る |
| 換気のために開けたい | 24時間換気の給気口・換気扇が動いているか。日差しを遮る対策を外していないか | 建築基準法施行令 0.5回/h、資源エネルギー庁 冷房時の工夫 |
| 家族が開けてしまう | 「開けない」ではなく「開ける時間帯と日射対策」を共有する | 資源エネルギー庁「※適宜、換気をしましょう」 |
| 冷えが悪いのは窓のせいだと思っている | フィルターの汚れ、室外機周りの物、風向・風速、eco機能の設定 | 日立「よく冷えない」の対処方法一覧 |
自分で測るなら、そろえるべき条件があります
「じゃあ自分で測ってみよう」と思った方へ。窓の開け閉めだけの差を出すには、少なくとも次を同じにする必要があります。逆に言えば、これらが揃っていない測定値は「窓の影響」を表していません。
- 外気温と湿度(同じ日でも午後と夕方では違います)
- 日射の量(晴れと曇りで別物です)
- 在室人数と使っている家電(日立が挙げている「熱器具」にあたります)
- 設定温度、風量、風向の設定
- 測定を始める前の室温(冷え切った部屋からと、暑い部屋からでは初動の消費電力が違います)
これだけの条件を揃えるのは家庭では難しく、ダイキンのように実施日・天候・設定まで書ける環境が要ります。「開けっ放しの電気代」がなかなか出てこないのは、そのためだと理解しています。
まとめ:「換気」の数字はある。「開けっ放し」の数字はまだ無い
ここまでの内容を整理します。
- ダイキンは「30分に1回・5分間の窓開け換気」なら実測値を公表。真夏の12時間で換気なし4.02kWh(108.5円)、換気あり5.52kWh(149.0円)、差は1.50kWh・約40.5円
- 「開けっ放し」の条件で測った公表値は、今回探した範囲(資源エネルギー庁・ダイキン・日立・日本冷凍空調工業会)では見つかりませんでした
- 資源エネルギー庁は、冬の暖房時に逃げる熱の約6割、夏の冷房時に侵入する熱の約7割が窓などの開口部からだと公表しています。ただし調査名・条件は同ページに書かれておらず、これは「閉じた窓」を通る熱の話です
- 資源エネルギー庁の省エネのコツでは、冷房時・暖房時とも1行目が「ドア・窓の開閉は少なく。」です。同時に「※適宜、換気をしましょう」とも書かれています
- 公表されている省エネ行動の効果は、冷房設定温度を1℃上げると年間30.24kWh・約940円、冷房を1日1時間短縮すると年間18.78kWh・約580円など。単価は31円/kWh(令和4年7月・全国家庭電気製品公正取引協議会)です
- 公表値どうしから、冷房1時間あたり約0.168kWh・約5.2円(設定温度28℃、冷房期間112日)までは出せます。ただしこれは窓が閉まっている前提の平均値です
- 窓が開いていると、設定温度に届かずサーモオフに入る時間が来ません。今のインバータエアコンの省エネ性は「運転時間の大半が設定温度に近づいたあとの運転」であることを前提にしています
- 「窓の開けっ放しで壊れる」と書いた一次情報は見つかりませんでした
- 換気自体は必要です。住宅の居室は換気回数0.5回/h以上が法令で求められており、窓を閉めていても24時間換気が動いていれば外気は入っています
数字が無いと落ち着かない気持ちはよく分かります。それでも、条件の分からない「1時間30円」を信じて行動を決めるより、「窓を開けている間はエアコンが効率の良い運転に入れない」という構造を理解して、開ける時間を自分で決めるほうが、結果的に納得できると思います。
エアコンの窓開けっ放しと電気代に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 一晩じゅう窓を開けっ放しでエアコンをつけていました。電気代はいくら増えますか?
A. 「開けっ放し」の金額を答えられる公表値は、今回探した範囲では見つかりませんでした。ダイキンが公表しているのは「30分に1回・5分間の換気」を12時間続けた場合で、換気なしより1.50kWh・約40.5円多いという値です。窓が開いていたのは合計約2時間なので、一晩の開けっ放しには当てはめられません。もう1つの参考として、資源エネルギー庁の公表値から計算できる冷房1時間あたりの目安は約0.168kWh・約5.2円(設定温度28℃、冷房期間112日、31円/kWh)ですが、これは窓が閉まっている前提の平均値で、窓を開けた場合の値ではありません。気づいた時点で窓を閉めれば、それ以降は通常の運転に戻ります。
Q2. 網戸だけにしてガラス窓を開けている状態も同じですか?
A. 網戸は空気を通すためのものなので、ガラス窓が開いていれば外気は出入りします。資源エネルギー庁が示す開口部の断熱の話(約6割・約7割)は、ガラスとサッシを通る熱についての説明で、網戸には断熱の役割がありません。逆にガラス窓が閉まっていて網戸だけ出ている状態であれば、熱の出入りはガラスとサッシの性能で決まります。なお、網戸ごしの通風でどれだけ電気代が変わるかについては、今回探した範囲では公表値が見つかりませんでした。
Q3. 短時間の換気なら、エアコンは止めずにつけたままのほうがいいですか?
A. この問いには公表値があります。ダイキンの検証(30分に1回・5分間の換気を12時間)では、換気のたびに電源をオン・オフすると7.51kWh(202.8円)、つけっぱなしなら5.82kWh(157.1円)で、つけっぱなしのほうが1日約45.7円安いという結果でした。冬の検証(暖房・設定20℃)でも、オン・オフ4.02kWh(108.5円)に対しつけっぱなし3.48kWh(94.0円)で、約14.5円安くなっています。日本冷凍空調工業会も、インバータエアコンは設定温度に近づくと効率の良い運転に変わると説明しており、方向は一致します。ただしダイキン自身が「住宅やエアコン、気候によって結果は変わります」と注記しています。
Q4. 冬の暖房でも、窓を開けっ放しにすると電気代は増えますか?
A. 増える方向であることは、資源エネルギー庁が暖房時の工夫の1行目に「ドア・窓の開閉は少なく。」を挙げていることから言えます。ただし冷房と同じく、開けっ放しで何円増えるかの公表値は見つかりませんでした(ダイキンの冬の検証も条件は「30分に1回・5分間の窓開け換気」です)。参考までに、公表値から計算できる暖房1時間あたりの目安は約0.241kWh・約7.5円(設定温度20℃、暖房期間169日、31円/kWh)で、冷房時の約5.2円より大きい値です。また同庁は、暖房時は厚手のカーテンを使い、床まで届く長いカーテンのほうが効果的だとしています。
Q5. 窓を開けっ放しにするとエアコンが故障しやすくなりますか?
A. そう書いている一次情報は見つかりませんでした。日立が点検・修理が必要な状態として挙げているのは、設置直後から冷たい風が出ない、冷房16℃・風速自動にしても冷風が出ず室外機のファンが回らない、タイマー・みはり・除湿のいずれかのランプが点滅している、といった症状で、窓の開閉は含まれていません。冷えが悪いと感じたときは、フィルターの汚れ、室外機の周りの物、風向・風速の設定、eco機能が入っていないかを先に確認するよう案内されています。
Q6. 24時間換気があるなら、窓は開けなくていいのですか?
A. 建築基準法施行令が住宅の居室に求めている換気回数は0.5回/h(その他の居室は0.3回/h)で、これは常時の最低限として設けられているものです。実際にどれだけ換気されているかは、給気口が開いているか、換気扇が動いているか、フィルターが詰まっていないかで変わります。窓開け換気の具体的な方法やタイミングについては、メーカーと厚生労働省の案内をまとめたエアコンの臭いと換気の記事をご覧ください。
◆アキのひとこと
この記事を書くのに、いちばん時間をかけたのは「数字を探すこと」ではなく「無いことを確かめること」でした。エアコンの制御そのものは、設定温度に届くまでは能力を出し、届いたら絞る、という素直な作りになっています。窓が開いていると前半がずっと続く。そこまでは自信を持って書けます。でも、それが何円なのかは条件次第で、条件を私が決めてしまったら、それはもうデータではなく作り話です。だから、書かないという選択をしました。

