エアコンの配管カバーと水漏れ|「防水構造ではない」と施工要領書にある

エアコン室外の配管カバー(化粧カバー)が壁に取り付けられている様子 故障・トラブル対応

こんにちは、エアコンラボのアキです。

配管カバー(化粧カバー)を付けているのに、その足元や継ぎ目から水が垂れている。あるいはこれから付けようとしていて、「カバーを付ければ水漏れは防げるのか」を知りたい。この記事は、その両方の疑問に対して部材メーカーとエアコンメーカーが公開している資料に何と書いてあるかだけを並べたものです。

配管や外壁の施工は私の専門ではありませんので、原因の切り分け表を自作したり、費用の相場を挙げたりはしません。先に結論だけ書いておくと、配管カバーを作っている因幡電機産業は、施工要領書の冒頭で「防水構造ではありません」とはっきり書いています。カバーは水を止める部材ではない、というのが出発点になります。

  • 配管カバーが防水部材ではないと部材メーカーが明記していること
  • カバーの中に雨水がたまる前提で施工が組まれていること
  • 「カバーがあるからシールは不要」がメーカーの記載と逆であること
  • カバーの中の結露について書かれていること
  • フタを自分で開けて確認する構造になっていない理由

エアコン室外の配管カバー(化粧カバー)が壁に取り付けられている様子

配管カバーは「防水構造ではありません」と施工要領書に書いてある

部材メーカー自身の一文が、いちばん強い根拠になる

配管化粧カバー「スリムダクト」を製造している因幡電機産業は、屋外用シリーズの施工要領書の1ページ目、「はじめにお読みください」の最初のお願いとして次のように書いています。

スリムダクトLDは防水構造ではありません。雨水侵入のおそれのある箇所については、防水処理が必要です。とくに壁貫通個所には、壁面内への雨水侵入防止のため、接合部やかん合部、貫通部、壁設置部、ビス穴などに、コーキング処理やパテ埋めなどを施し、防水処理を行ってください」(スリムダクトLD 施工要領書)。同じ文言はスリムダクトSDの施工要領書にも同じ位置で載っています。

同じページの冒頭には「本製品は、配管用化粧カバーです。それ以外の用途には使用しないでください」という一文もあります。用途は「化粧」であって「止水」ではない、と製造元が定義しているわけです。

公表されている性能試験に、防水の項目がない

もう一つ、分かりやすい材料があります。因幡電機産業が公開しているスリムダクトLDの性能試験報告書には、試験項目が4つ載っています。

試験項目 公表されている結果
耐候性(促進耐候試験0〜2000時間) 2000時間で割れ、クラック等の異常なし
木ねじ取付け強度 LD-70は274N(28kgf)、LD-90は392N(40kgf)
フタかん合抜け強度 4410N(450kgf) ※長さ2mに換算した数値
熱伸縮長さ(−20〜60℃) 150mmの供試品でフタ部0.80mm(変化率0.5%)、底部0.65mm(0.4%)

耐候性・強度・熱による伸び縮みは数値で公表されていますが、防水性や止水性の試験項目は載っていません。カバーに水を止める性能を期待していると、そもそも性能として測られていないものを当てにすることになります。

屋内用のカバーには、この注意書きがない

ちなみに同社の室内用シリーズ(スリムダクトMD)の施工要領書を見ると、「防水構造ではありません」の一文も、コーキング処理の手順もありません。屋外に出る部材にだけ防水の注意が付いている、という整理です。室内側のカバーの中で気にされているのは別の点で、こちらは「特にドレンホースは排水勾配が必ず保てるように配管して下さい」と書かれています。

カバーの中に雨水がたまることは、メーカー側が想定している

「ダクト内への雨水の溜まり」という言葉が書かれている

先ほど引用した【お願い】には、続きがあります。「また、横引き設置などでダクト内への雨水の溜まりが懸念される場合やダクト内への防水が必要とされる場合も同様の処理を行ってください」。

つまり、カバーの中に雨水がたまる状況があること自体は、作っている側が前提として書いています。「カバーで覆ったのだから中は乾いているはず」という読み方は、資料の書きぶりとは合いません。とくに壁面を横に走らせる配管(横引き)で名指しされています。

施工要領書には「水を抜く」部材も手順も出てこない

では、たまった水はどこから出るのか。屋外用SD・LDの施工要領書を通して読んでも、水抜き穴・排水口・ドレン孔にあたる部材や手順は出てきません。出てくるのは、入れないための処理のほうです。手順は10段階で、その最後がコーキングです。

手順 内容
(1)〜(2) サイズ選定、壁面貫通穴あけ(LD-70はコアドリル径φ70以下、LD-90はφ90以下)
(3)〜(5) ウォールコーナー底部・ダクト底部の取り付け(φ3.5mmまたは4.0mmの座付きナベビス)
(6)〜(7) 配管施工、固定サドルの締め付け
(8) 壁面配管貫通穴止水処理(貫通穴と配管のすき間を止水パテで完全に塞ぐ)
(9) フタ部取り付け
(10) コーキング処理(接合部・かん合部・貫通部・壁設置部・ビス穴にシリコーンシーラント)

そして(10)には「とくに、図−12に示す位置の処理を怠りますと、屋内への雨水侵入の原因となりますので留意してください」と書かれています。室内側に出てくる水の話が、部材メーカーの施工要領書に明記されているということです。カバーは水を排出する部材ではなく、コーキングとパテで水を入れないようにして初めて成立する部材だ、と読めます。

「カバーがあるからシールは要らない」は、メーカーの記載と逆

日立はカッコ書きで「配管カバーを使用した場合も」と書いている

壁の貫通穴を通る配管と、その周囲のすき間を埋めるシール処理の位置関係

ここがこの記事でいちばんお伝えしたい部分です。エアコンメーカーの据付説明書にも、配管カバーを名指しした記述があります。

日立のルームエアコン据付説明書の「配管の断熱と仕上げ」には、こうあります。「壁穴部と配管ブッシュ・配管のすき間を[配管カバー(市販品)を使用した場合も]完全にシールしてください。シールが完全でないと壁内や室外の高湿空気が流入し、露たれの原因になります。また壁内や室外の臭いが室内に流入する原因になります」。

わざわざカッコ書きで「使用した場合も」と付け加えられている、という点が重要です。カバーを付けたらシールを省いてよい、という誤解が起きうることを見越した書き方になっています。同じ箇所には「配管カバー(市販品)を使用する場合は、配管ブッシュを取り付けないでください」という指示もあり、カバーの有無で施工の中身が変わることも示されています。

シャープも「化粧カバー仕上げの場合も必要です」と付記している

シャープのルームエアコン工事説明書でも、配管穴の仕上げについて「必ずパテまたはコーキング材でシールして仕上げてください。(化粧カバー仕上げの場合も必要です)」と書かれています。続けて「※シールが不完全な場合、雨水の浸入による壁内部の腐食や室内へのホコリの吸い込みの原因となります」とあります。

同書ではウォールコーナー(壁の貫通部を覆うカバー部材)についても「ウォールコーナー取り付け後、コーキング材ですき間を埋める。シールが不完全な場合、壁内部に雨水が侵入し、腐食等の原因となります」と、カバーを付けたうえでコーキングする手順が示されています。

2社とも、書いていることは同じ方向です。カバーはシールの代わりにならない。壁穴まわりの部材そのものについてはエアコンのパテ隠しの記事エアコンの粘土(パテ)の記事で扱っていますので、そちらもどうぞ。

カバーの中の結露について書かれていること

配管を固定するサドルの締め過ぎが名指しされている

カバーの内側は、配管がただ通っているわけではありません。施工要領書には「配管は配管固定サドル(SL-300)などで必ず支持固定してください」とあり、続けて次の注意が書かれています。

「配管固定サドル(SL-300)の結束時には、保温材を潰すと結露するおそれがありますので、締め過ぎに注意してください」。

カバーの中で配管を留める部材を強く締めると、その下の保温材が潰れて結露する、と製造元が書いているわけです。結露した水はカバーの内側に出ますから、外からは見えないまま下へ流れていくことになります。同じ注意書きには「本製品は、スリムダクトLD内部で冷媒配管材を結束するためのものです。屋外露出配管の結束やケーブルなどの結束用途としては使用しないでください」ともあります。

似た趣旨は、前出の日立の据付説明書にもあります。冷媒配管の断熱について「保冷用断熱材を使わなかったり保冷用断熱材のビニールテープ巻きを締めすぎると…断熱効果がなくなり露が付き露たれおよび壁にシミやカビが発生します」「間隔をおいて締めすぎないように巻きます」と書かれています。強く締めるほど安心、ではないという点で、部材メーカーとエアコンメーカーの言い分は一致しています。

カバー自体の不具合として挙げられているのは「熱変形」

もう一つ、因幡電機産業が技術資料で1章を割いて説明しているのが熱変形です。カバーは樹脂製で、ダクトの表面温度が60℃を超えると変形するおそれがあり、負荷がかかっている状態ではそれより低い温度でも変形することがある、とされています。「年間数件発生しています」という記述付きです。

設置場所として避けるよう挙げられているのは次の3つです。

  • 金属材料で加工された軒先など、輻射熱でダクトが高温になることが予想される近辺
  • 蓄熱する壁や、遮熱塗料で塗装した壁
  • 風通しの悪い狭い場所や、熱が発生する設備の周り

また横引き配管については「配管のたわみや蛇行による応力がダクトに掛からないように配管固定サドルで固定してください。ダクト2mに対し最低2箇所固定することをお薦めします」「屋外での横引き配管ではできる限り距離を短くしてください」とされています。使用温度範囲は−20〜60℃です。

中が見えないカバーを、自分で開けて確認していいのか

フタは工具で留められていて、最後にコーキングされている

配管カバーの継ぎ目とウォールコーナーの取り合い部分

ここははっきり書いておきます。この記事では、カバーを開ける手順は書きません。理由は施工要領書の記述そのものです。

  • フタ部は「付属のタッピングビスで壁面および底部にビス止め」する、と手順(9)に書かれている
  • ウォールコーナーにはズレ防止用のピンがあり、フタ端部の半貫き穴とかん合させる構造になっている
  • フタかん合抜け強度は、長さ2m換算で4410N(450kgf)と公表されている
  • 手順の最後(10)が、かん合部・ビス穴も含めたコーキング処理になっている
  • 施工要領書に「点検口」という部材も、フタを開けて中を見る手順も出てこない

つまり、開けること自体が防水処理をやり直す作業になります。中に水がたまっているかどうかを確かめるために、水を入れないための処理を壊すのでは本末転倒です。しかも冷媒配管は素人が触ってよい部位ではありません。

カバーの外側で、触らずに確認できること

水漏れに気づいたときにまずすべきことは、メーカー各社で共通しています。日立の水漏れについてのFAQは「エアコンから水が漏れている場合は、いったんご使用をお控えください」「スイッチを切り、コンセントから電源プラグを抜いてください」と案内しています。ダイキンの室内機から水が漏れるときのFAQも「ご使用を控えてください」としています。

そのうえで、カバーの外に出ている範囲で見られるのは次のあたりです。カバーには触らず、目とスマートフォンのカメラだけを使ってください。

  1. ドレンホースの先端から排水が出ているか(先端は通常カバーの外に出ています)
  2. 先端が地面や水につかっていないか、植木鉢などでふさがれていないか
  3. 水が垂れているのがカバーのどの高さか(壁際・継ぎ目・下端)
  4. いつ垂れるか(冷房や除湿の運転中だけか、運転していないときや雨のあとにも垂れるか)
  5. 壁の穴のまわりのパテやコーキングにひび・すき間・脱落がないか

4番目は、資料の内容と照らすと切り分けの入口になります。因幡電機産業と2社のエアコンメーカーが雨水・高湿空気の話をしているのは、いずれも壁貫通部とカバーの接合部の防水処理についてです。運転と関係なく水が出るなら、その系統を業者に伝える価値があります。

相談するときに伝えるとよい項目

問い合わせるとき、次の内容を写真とあわせて伝えると話が早くなります。カバーがあると業者側も外から中を見られないため、症状の情報がそのまま調査の手がかりになります。

  • カバーが屋外側だけか、室内側にも付いているか
  • 新築時からか、後付けか(後付けならおよその時期)
  • 水が出る位置・時間帯・天候との関係
  • 壁面を横に走る区間(横引き)があるか、その長さの目安
  • カバーの近くに金属製のフードや軒先があるか

最後の項目は、前述の熱変形の注意点にそのまま対応します。なお、既設の配管に後からカバーを付ける場合について、施工要領書には「ウォールコーナー後付用は、既設配管の状況によっては後付施工できない場合があります。施工に当っては、現場の状況をよく確認のうえで行ってください」と書かれています。カバーを付けるかどうかの判断そのものは化粧カバーは必要ないのかを整理した記事に、テープや保温材が傷んで配管が露出している場合は銅管むき出しの記事にまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 配管カバーを付ければ水漏れは防げますか?

A. 因幡電機産業は施工要領書で「防水構造ではありません」と明記しており、水を止める性能はうたっていません。防水を担うのは、壁貫通穴の止水パテと、接合部・かん合部・ビス穴などのコーキング処理です。カバーを付けても、これらの処理は省略できないと日立・シャープの説明書にも書かれています。

Q2. カバーの中に水がたまることはありますか?

A. 施工要領書に「横引き設置などでダクト内への雨水の溜まりが懸念される場合」という記述があり、たまる状況は想定されています。ただし水抜き穴のような排水の仕組みは資料に出てきませんので、対策として書かれているのは防水処理のほうです。

Q3. カバーを外せば原因が分かりますか?

A. フタは付属のタッピングビスで壁面と底部に留められ、かん合部やビス穴はコーキングされる前提です。開ければ防水処理をやり直す必要が出ますし、中にあるのは素人が触ってよい部位ではない冷媒配管です。この記事では開ける手順は案内していません。

Q4. カバーの中で結露が起きることはありますか?

A. 因幡電機産業は、配管固定サドルの結束について「保温材を潰すと結露するおそれがありますので、締め過ぎに注意してください」と書いています。日立も断熱材のテープ巻きを締めすぎると「断熱効果がなくなり露が付き露たれおよび壁にシミやカビが発生します」としています。

Q5. 修理や補修の費用はどれくらいですか?

A. 配管カバーまわりの補修費について、公的機関やメーカーが公表している相場は見つかりませんでした。カバーの長さ、曲がりの数、高所作業の有無、壁の状態で変わりますので、現地を見た見積もりで確認してください。この記事では金額の目安は書きません。

まとめ

  • 因幡電機産業は施工要領書の冒頭で「スリムダクトLD(SD)は防水構造ではありません」と明記している
  • 公表されている性能試験は耐候性・木ねじ取付け強度・フタかん合抜け強度・熱伸縮の4項目で、防水の試験項目はない
  • 「横引き設置などでダクト内への雨水の溜まりが懸念される場合」という記述があり、水抜きの部材や手順は資料に出てこない
  • 施工手順は10段階で、(8)が壁面貫通穴の止水パテ、(10)がコーキング処理。怠ると「屋内への雨水侵入の原因」とされている
  • 日立は「[配管カバー(市販品)を使用した場合も]完全にシールしてください」「シールが完全でないと…露たれの原因」と書いている
  • シャープも「必ずパテまたはコーキング材でシールして仕上げてください。(化粧カバー仕上げの場合も必要です)」と付記している
  • カバー内部では、配管固定サドルの締め過ぎで保温材が潰れると結露するおそれがある、と製造元が書いている
  • カバー自体の不具合として資料に挙がっているのは熱変形(表面温度60℃超)で、年間数件発生しているとされる
  • フタはビス止めとかん合(2m換算で4410N)で留められ、最後にコーキングされる。開けて点検する構造ではない

カバーの中が見えないのは不安ですが、資料を読む限り、見るべきものはむしろカバーの外にあります。壁穴まわりのパテとコーキング、ドレンホースの先端、そして水が出る時間帯と天候。ここまで記録できていれば、業者に伝えるべきことは十分そろっています。無理に開けず、まずは運転を止めて記録するところから始めてください。

タイトルとURLをコピーしました