エアコンの音漏れは3つの意味がある|据付説明書と法令で確認できること

隣の部屋にエアコンの音が漏れる様子をイメージした部屋の写真 故障・トラブル対応

こんにちは、エアコンラボのアキです。

「エアコン 音 漏れ」という言葉は、実は3つのまったく違う相談が混ざっています。自分のエアコンの音が隣に漏れていないかという心配、外の音が配管穴から入ってくるという悩み、そして「シュー」という冷媒の音の心配です。どれなのかを先に決めないと、調べても答えにたどり着けません。

この記事では、メーカーの据付説明書と法令・業界団体の資料に実際に書かれていることだけを並べて整理します。とくに「壁の穴をパテでふさげば防音になる」という話については、3社の据付説明書を読んだうえで、書かれていなかったことも正直にお伝えします。

  • 「音漏れ」の3つの意味と、自分がどれなのかの決め方
  • 配管穴のシールについて、据付説明書が挙げている理由
  • 集合住宅の壁・窓に求められている遮音の数値
  • メーカーが据付場所に求めている条件と、相談先

エアコンのある部屋と壁を見上げるイメージ写真

「エアコンの音漏れ」は3つの相談が混ざっています

まず、あなたの悩みがどれに当たるかを決めてしまいましょう。ここを決めるだけで、読むべき記事が変わります。

(1)自分の家の運転音が、外や隣の部屋に漏れていないか

「夜つけっぱなしにしているけれど、隣に聞こえていないだろうか」という心配です。この場合、音を出しているのは自分のエアコンなので、着目するのはどこにどう据え付けられているかです。後半で、メーカーが据付場所に何を求めているかを見ていきます。

なお、室外機そのものの音が近所に響いているかどうかという相談は、ベランダのエアコン室外機がうるさい原因と対策が本題として扱っています。この記事では重複を避けて、据付説明書に書かれている条件の確認までにとどめます。

(2)外の音が、配管穴やサッシから入ってくる

「エアコンを付けてから外の音が気になるようになった」「壁の穴のあたりから音が入る気がする」というケースです。この場合、音源は自分の家の外にあり、問題になるのは建物側の遮音壁を貫通している穴の処理です。ここがこの記事のいちばんの中心になります。

(3)「シュー」「プシュー」という冷媒の音

運転の切り替わりで鳴る「シュー」「プシュー」を「ガスが漏れている音では」と心配されている場合は、この記事の範囲ではありません。エアコンのプシュー音は故障?エアコンのガス漏れのサインとは?で、メーカー公式FAQをもとに整理しています。そちらを先に読んでください。

配管穴のシールは、据付説明書では「音」のためとは書かれていません

「壁の配管穴をパテでしっかりふさげば防音になる」という説明を見かけることがあります。そこで、家庭用エアコンの据付説明書を3社分読んで、シールを求めている箇所とその理由を書き出してみました。

壁のすき間をふさぐ作業のイメージ写真

メーカー 据付説明書の記述 挙げられている理由
日立(据付説明書) 「雨水や外気の浸入などがないよう完全にシールし」「壁穴部と配管ブッシュ・配管のすき間を[配管カバー(市販品)を使用した場合も]完全にシールしてください」 壁内や室外の高湿空気が室内に流入し露たれの原因になる/壁内や室外の臭いが室内に流入する原因になる
シャープ(据付説明書) 「必ずパテまたはコーキング材でシールして仕上げてください。(化粧カバー仕上げの場合も必要です)」 雨水の浸入による壁内部の腐食/室内へのホコリの吸い込み
富士通ゼネラル(据付説明書) 「壁と壁穴用パイプ・ウォールキャップの隙間をシーラパテなどで完全にふさぐ」「外壁の配管穴と配管の隙間には、雨水が吹き込まないようシーラパテなどで完全にふさいでください」 壁内の高湿空気が室内に侵入し露たれの原因になる/壁内のにおいが室内に侵入する原因になる

3社とも、すき間を「完全に」ふさぐことを強く求めています。ところが、その理由として挙がっているのは雨水・湿った空気・におい・ホコリであって、音や遮音という言葉は、いずれの据付説明書にも見当たりませんでした。配管まわりの部材側も同じで、因幡電機産業のスリムダクトLDの施工要領書は「壁面貫通穴と配管のすき間を止水パテで完全に塞ぎます」と書いていますが、こちらの目的も止水で、同資料には「スリムダクトLDシリーズは防水構造ではありません」と明記されています。

つまり、「パテを詰め直せば静かになる」という言い方は、メーカーの資料では裏づけられません。逆に、すき間が空いているなら、音とは関係なく露たれ・におい・雨水の問題として直す価値があるというのが、説明書から読み取れる正しい優先順位です。パテそのものの扱いはエアコンのパテ隠しはどうする?エアコンの粘土補修は大丈夫?で詳しく扱っています。

注意
据付説明書は工事をする人に向けた文書です。壁の穴には冷媒配管・ドレンホース・電線が通っていて、日立の説明書には保護パイプについて「必ず使用する」「接続ケーブルが壁の中のメタルラスに接触したり…感電や火災の原因となります」という警告があります。すき間が気になるときは自分で詰め直さず、据え付けた業者や購入店に見てもらってください。

ちなみに、その穴の大きさは説明書に数値で書かれています。日立は「φ65mmの穴を外側に下がり気味に」あけ、室外側が2〜5mm下がるようにと図示しています。富士通ゼネラルは直径65mmの穴に外径60mmの壁穴用パイプを使い、ウォールキャップのフランジ径が72mm以上なら下側のフランジをカットするよう指示しています。シャープの図にはφ70・φ65・φ60の表記があり、日立の必要工具にはホールコアドリル(φ65〜80mm)が挙げられています。

音の通りやすさを決めているのは、建物側の性能です

外の音が入ってくる、隣に聞こえてしまう。どちらの向きでも、実際に音をどれだけ止めているかは建物の壁と窓の性能で決まります。ここには公的な数値があります。

集合住宅の界壁には、法令の数値がある

長屋や共同住宅で各戸の境になる壁(界壁)については、建築基準法施行令第22条の3が、透過損失の技術的基準を表で定めています。

振動数(単位 ヘルツ) 透過損失(単位 デシベル)
125Hz 25dB以上
500Hz 40dB以上
2,000Hz 50dB以上

注目したいのは、低い音ほど求められる数値が小さいことです。125Hzでは25dB、2,000Hzでは50dBと、倍の開きがあります。低い音を止めるのは高い音を止めるより難しい、という前提が制度の側にあるわけです。エアコンで「低いブーン」が気になりやすいと言われるのも、この向きとは矛盾しません。なお、この基準は隣戸との境の壁の話で、同じ住戸の中の部屋どうしの間仕切り壁が対象ではない点は押さえておいてください。

窓・サッシは「T等級」で表される

カーテンを閉めた寝室の窓まわりのイメージ写真

日本サッシ協会の窓の性能とJIS基準についてによると、サッシの遮音性はJIS A 4706-2000でT-1からT-4までの4段階が定められ、JIS A 1416-2000(実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法)で測定します。等級は125Hzから4,000Hzまでの帯域の測定値を遮音等級線と比べて決め、等級線を下回る測定値の合計が3dB以下であればその等級とされます。

さらに同協会の住宅性能表示制度についてでは、住宅性能表示制度の「音環境に関すること」が選択項目、つまり希望する人だけが評価を受ける項目だと説明されています。外壁開口部の透過損失等級は、等級3が「T-2等級相当以上またはRm(1/3)-25dB相当以上」、等級2が「T-1等級相当以上またはRm(1/3)-20dB相当以上」とされています。選択項目なので、評価そのものを受けていない住宅も多いという点は知っておくと良いと思います。

窓まわりに機器を取り付ける話はエアコンの窓パネル完全ガイドで扱っていますので、あわせてどうぞ。

メーカーが据付場所に求めている条件

ここで(1)の「自分の音が漏れていないか」に戻ります。据付説明書を読むと、音は機械の性能だけの話ではなく、取り付ける場所の話でもあると、はっきり書かれていました。

室外機を据え付けた足元まわりのイメージ写真

室内機側に書かれていること

  • 富士通ゼネラル:「室内ユニットの重さに耐え、共振音の出ない丈夫な壁面。」
  • 日立:「本体を十分ささえられ、振動が出ない、強度のあるところに据え付ける」(警告として記載)
  • シャープ:「運転音や振動が増大しないようなところをお選びください。」

3社とも表現は違いますが、言っていることは同じです。壁が弱いと本体の振動が壁に伝わって音になる、という前提が共有されています。「同じ機種なのに前の家より音が気になる」という感覚は、この点から説明がつく可能性があります。

室外機側に書かれていること

  • 日立:「室外機の重量に十分耐える場所で、騒音や振動が増大しないところに据え付ける」(警告)、「吹き出した風や騒音がご近所のめいわくにならないところ」
  • シャープ:「吹出口からの熱風や運転音が、隣家の迷惑にならないような場所をお選びください。」「騒音が増大しないように、しっかりした台の上に据え付けてください。」
  • 富士通ゼネラル:「室外ユニット吹出口からの風や騒音が隣家の迷惑にならない所。」さらに隣家との境界線では騒音に係る環境基準や都道府県の条例などを満足するように据え付けるよう書かれています。

近隣への配慮は、読者側のマナーの話である前に、メーカーが工事側に指示している据付条件だということです。据え付けの寸法についても、説明書には次のような数値があります。

項目 説明書の記載
室内機(吹出口)と火災報知器 1.5m以上離す(日立)
室内機下面と床 1.8m以上離す(日立)
室内機・リモコンとテレビ、ラジオ 1m以上離す(日立)
室外ユニットとアンテナ 3m以上離す(富士通ゼネラル)
室外機まわりの開放 2.2kW〜4.0kWは2方向以上、5.6kWは3方向以上開放できるところ(日立)

これらは音のために決められた寸法ではありませんが、据付が説明書どおりかどうかを業者に確認するときの手がかりにはなります。

音が気になるときの進め方と、やらないほうがいいこと

先に整理しておきたいこと

  • いつから気になり始めたか(引っ越し直後か、途中からか)
  • エアコンを止めると消えるか。消えないなら音源はエアコンではない可能性があります
  • 音がしているのは室内機側か、室外機側か
  • これまでになかった異音(打撃音・きしみ音など)が新たに出ていないか

最後の項目に当てはまる場合は、遮音の話ではなく点検の話になります。エアコンのモーター音がうるさい原因と解決策を先に確認してください。

やらないほうがいいこと

注意
配管穴のシールを自分でやり直す、室外機の周囲を板や囲いでふさぐ、説明書にない部材を本体に取り付ける。この3つは避けてください。とくに室外機の囲いは、日立の説明書が開放する方向の数を条件として挙げているとおり、風の通り道をふさぐ行為にあたります。

相談先

  • 賃貸:まず管理会社・貸主へ。外壁の穴や室外機の置き場は共用部分にあたることが多く、勝手に手を加えられません
  • 分譲マンション:界壁や外壁に関わる話は管理組合の管轄になります
  • 持ち家:据え付けた業者、購入店、メーカーの相談窓口へ。据付説明書は工事をした側が保管しているのが原則です

エアコンの音漏れに関するよくある質問(FAQ)

Q1. 配管穴のパテを詰め直せば、音は静かになりますか?

A. 日立・シャープ・富士通ゼネラルの据付説明書を確認しましたが、シールを求める理由として挙げられているのは雨水・高湿空気・におい・ホコリで、音や遮音には触れられていませんでした。静かになるとは言えません。ただし、すき間が空いていること自体は説明書が明確に避けるよう求めている状態なので、その点では直す意味があります。

Q2. マンションの壁は、どのくらい音を止める決まりになっていますか?

A. 建築基準法施行令第22条の3が、長屋・共同住宅の界壁について透過損失の基準を定めています。125Hzで25dB、500Hzで40dB、2,000Hzで50dBが、それぞれ以上必要とされています。あくまで各戸の境の壁についての基準で、同じ住戸内の間仕切り壁は対象ではありません。

Q3. 窓の遮音性能は自分で調べられますか?

A. サッシの遮音性はJIS A 4706でT-1からT-4の4段階が定められています。住宅性能表示制度の音環境の項目は選択項目のため評価を受けていない住宅もありますが、評価書がある場合は透過損失等級の記載を確認できます。分譲・賃貸ともに、書類の有無は管理会社や販売元に問い合わせるのが確実です。

Q4. 室外機の音が近所迷惑になっていないか心配です。

A. 据付説明書では3社とも、吹出口からの風や騒音が隣家の迷惑にならない場所を選ぶよう工事側に指示しています。まずは据付そのものが説明書の条件を満たしているかを業者に確認するのが筋道です。音の大きさや近隣との関係についてはベランダのエアコン室外機がうるさい原因と対策で扱っています。

Q5. 「シュー」という音がします。ガスが漏れているのでは?

A. この記事の範囲外です。運転の切り替わりに伴う冷媒の音についてはエアコンのプシュー音は故障?を、ガス漏れが疑われる場合の見分け方はエアコンのガス漏れのサインとは?をご覧ください。

まとめ:音漏れは「据付」と「建物」の話に分かれる

「エアコンの音漏れ」は、自分の音が漏れる話、外の音が入る話、冷媒の音の話の3つに分かれます。3つ目は別記事の担当です。

そして今回いちばんお伝えしたかったのは、配管穴のシールを遮音の対策として説明している一次資料は見つからなかったということです。3社の据付説明書が挙げていた理由は、雨水・高湿空気・におい・ホコリでした。一方で、音そのものについては別のところに記載があります。室内機は「共振音の出ない丈夫な壁面」に、室外機は「隣家の迷惑にならない所」に据え付けるという据付条件です。

建物側には、界壁の透過損失が125Hzで25dB・500Hzで40dB・2,000Hzで50dB以上という法令の基準があり、サッシにはJIS A 4706のT-1からT-4という等級があります。自分でできることは限られていますが、どこに数値があり、誰に相談すべきかが分かれば、そのぶん迷わずに済みます。まずは据付が説明書どおりかどうかを、工事をした側に確認するところから始めてみてください。

音の種類ごとの扱いを社をまたいで見比べたいときは、メーカー5社の音の一覧を並べて正常か確認した記事にまとめています。あわせてどうぞ。

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