エアコン一晩の電気代はいくら?メーカー実験の実測値で検証

寝室の壁の高い位置に取り付けられた壁掛けエアコンの室内機とベッド 掃除・お手入れ・メンテナンス

こんにちは、エアコンラボのアキです。

「暑くて眠れないからエアコンをつけて寝たい。でも一晩つけっぱなしにしたら、電気代はいくらになるんだろう」。そんな不安から検索された方が多いのではないでしょうか。

この話題は、とにかく断定が多い領域です。「つけっぱなしの方が安い」という結論だけが独り歩きしていて、その根拠がどこにあるのかは書かれていない。私自身、調べ直すまではなんとなくそう思い込んでいました。

そこで今回は、エアコンメーカーと公的機関が実際に公表している検証結果だけを集めて、一晩(就寝中)の電気代がいくらだったのかを、実験の条件ごと確かめていきます。結論を先にお伝えすると、「つけっぱなしの方が安い」という一般化は、少なくとも夜間の実験データからは支持できませんでした。ただし、だからといって切って寝ることをおすすめする話にはなりません。順番に見ていきますね。

  • パナソニックが公表している「夜間8時間つけっぱなし」の実測値と、その測定条件
  • つけっぱなしと切タイマーで、電気代と室温がそれぞれどう変わったか
  • ダイキンの夏の検証で「夜の時間帯」だけ結果が逆転した理由
  • 起動時の消費電力について、メーカーが実際に書いていること・書いていないこと
  • 環境省・消防庁が公表している、夏の夜の室温と熱中症の注意事項

この記事で守っているルール
金額は、メーカー・公的機関が自ら測って公表した値だけを、測定条件とセットで載せています。私が消費電力を仮定して単価を掛けた「試算」は載せていません。

寝室の壁の高い位置に取り付けられた壁掛けエアコンの室内機とベッド

  1. エアコンを一晩つけっぱなしにした電気代は、実験でいくらだったか
    1. パナソニックの実験:夜間8時間つけっぱなしで26.7円
    2. 同じ機種・同じ設定でも、日中8時間なら52.7円。夜は約半分だった
    3. カタログの「期間消費電力量」から一晩の電気代を計算できない理由
    4. 「1kWh=◯円」の単価が、記事によって違う理由
  2. つけっぱなしと切タイマー、本当に安いのはどちらか
    1. パナソニックの実験:電気代は3時間切タイマーの方が15.2円安かった
    2. ダイキンは電気代ではなく「暑さ指数(WBGT)」で検証している
    3. ダイキンの夏の検証では、夜の時間帯だけ結果が逆転した
    4. この2つの実験を、就寝中の話にそのまま当てはめてはいけない
  3. 起動時の消費電力は本当に大きいのか、メーカーの記載を確かめる
    1. メーカーが書いているのは「圧縮機の負荷が高まる」という説明まで
    2. 「◯倍」という数字が公表されていないのは、条件で変わるから
    3. 就寝中は、そもそも入り切りの回数が少ない
  4. 金額より先に確認したい、夏の夜の室温と熱中症
    1. 環境省「タイマーは少なくとも3〜4時間は使用しましょう」
    2. 公的機関・メーカーが示している室温と湿度の目安
    3. 熱中症の救急搬送は「住居」が最も多い
  5. 一晩の電気代を無理なく下げる、出典のある方法
    1. 設定温度を1℃上げる(資源エネルギー庁の公表値)
    2. 風量は「自動」、風向は「水平」(ダイキンの検証値)
    3. 寝るときに風が体に当たらないようにする
    4. 寝室こそフィルター掃除が効く
    5. 就寝向けの自動運転を使う場合
    6. エアコン 電気代 一晩に関するよくある質問(FAQ)
    7. まとめ:一晩の電気代は「条件つきの数字」で考える

エアコンを一晩つけっぱなしにした電気代は、実験でいくらだったか

就寝中の8時間を実際に計測し、金額まで公表しているメーカーがあります。

パナソニックの実験:夜間8時間つけっぱなしで26.7円

パナソニックは、「夏の熱帯夜、寝る時のエアコンはつけっぱなしが正解?」(パナソニック エオリア)というページで、自社の環境試験室で行った8時間の計測結果を公表しています。結果は、夜間8時間つけっぱなしで862.5Wh、電気代にして26.7円でした。

ただ、この26.7円という数字だけを持ち出すのはフェアではありません。同じページに書かれている測定条件まで含めて見ていきましょう。

項目 公表されている内容
計測場所 パナソニックの環境試験室(6畳)
夜間の外気条件 気温30℃/湿度90%、日射なし
エアコン設定 冷房28℃/風量・風向とも自動
使用機種 エオリア インバーター冷暖房除湿タイプ CS-J226D
計測時間 8時間
計測方法 天井から140個のセンサーを吊るし、人ひとり分の熱源を配置。室温と消費電力量を10秒ごとに計測
電力量と電気代 862.5Wh / 26.7円
電力量料金の単価 1kWhあたり31円

ここまで条件が細かいのは、逆に言えば条件が変われば金額も変わるということです。パナソニック自身も、FAQで「実際の電気代は、機種や部屋の広さ、断熱性、外気温、設定温度などによって変わります」と明記しています。

それでも、この数字には大きな価値があります。「一晩=就寝中の8時間」という、私たちが知りたいのとまったく同じ単位で、実際に測られた値だからです。あとで触れますが、エアコンのカタログに載っている数字からは、この「一晩分」は計算できません。

同じ機種・同じ設定でも、日中8時間なら52.7円。夜は約半分だった

同じページには、日中を想定した条件での計測結果も載っています。こちらは8時間つけっぱなしで52.7円。夜間想定の26.7円より26円ほど高い結果です。

日中の条件は「気温35℃/湿度40%、日射あり」で、設定は夜間と同じ冷房28℃・風量風向自動。機種も設定も部屋も同じで外の暑さと日射だけが違うと、電気代がおよそ2倍になったということです。

パナソニックはこの理由を「エアコンの電気代は、部屋の温度と設定温度の差が大きいほど高くなります。夜間は昼間よりも外気温が5℃以上低くなり、日射の影響も受けないことから、夜間のエアコン運転は日中よりも冷房の負荷が小さく、少ない消費電力で室温を下げることができます」と説明しています。1時間あたりの電気代は、その1時間が昼か夜かで倍近く違うということですね。

カタログの「期間消費電力量」から一晩の電気代を計算できない理由

「じゃあカタログの数字を8時間分に割ればいいのでは」と考えたくなりますが、これができません。理由は測定条件にあります。

一般社団法人 日本冷凍空調工業会「期間消費電力量を省エネ性の目安にお選びください」によると、カタログに載っている期間消費電力量(JIS C 9612:2013)の算出基準は次のとおりです。

  • 外気温度:東京をモデルとする
  • 設定温度:冷房時27℃/暖房時20℃
  • 冷房期間:5月23日〜10月4日
  • 時間:6:00〜24:00の18時間
  • 住宅:JIS C 9612による平均的な木造住宅(南向)
  • 部屋の広さ:機種に見合った部屋の広さ

お気づきでしょうか。測定時間が6:00〜24:00の18時間、つまり深夜0時から朝6時までが入っていません。私たちが「一晩」と呼んでいる時間帯の大半が、そもそもカタログ値の対象外なのです。さらに同工業会は「運転時間が少なくなっても、その時間帯によっては消費電力は比例して少なくなりません」とも注記しています。時間で按分してはいけない、と業界団体自身が書いているわけですね。

「1kWh=◯円」の単価が、記事によって違う理由

電気代の記事を読み比べていると、単価が27円だったり31円だったりして混乱します。これには理由があります。

単価 使っている出典 根拠として書かれていること
31円/kWh 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト、パナソニックの上記実験 令和4年7月 公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会「新電力料金目安単価」(税込)
27円/kWh ダイキンの2016年の検証(後述) 「電力料金単価を27円/kWhとして計算」とのみ記載。出典の明示はなし

31円/kWhの出どころは、資源エネルギー庁「無理のない省エネ節約」の省エネ効果の算出根拠で確認できます。同ページの金額換算係数に「電気 31円/kWh[令和4年7月公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会 新電力料金目安単価(税込)]」と明記されています。

つまり、27円と31円は別の年の目安単価であり、どちらかが間違っているわけではありません。ただし、27円で計算された金額と31円で計算された金額を並べて比べるのは誤りです。単価の系統はエアコンとテレビの電気代を比べる記事で整理しています。

つけっぱなしと切タイマー、本当に安いのはどちらか

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。多くの記事が「つけっぱなしの方が安い」と書いていますが、夜間・就寝中に限れば、公表されている実験値は逆の結果でした。

パナソニックの実験:電気代は3時間切タイマーの方が15.2円安かった

先ほどのパナソニックの実験には、比較対象として3時間切タイマーの計測結果も載っています。

運転方法 8時間の消費電力量 8時間の電気代 室温の推移
朝までつけっぱなし 862.5Wh 26.7円 8時間後まで26〜27℃をキープ
3時間切タイマー 372.1Wh 11.5円 停止から30分後には28℃を超え、8時間後には31.2℃に到達
差 490.4Wh 15.2円 ―

電気代だけを見れば、切タイマーの方が15.2円安い。26.7円と11.5円ですから、金額はおよそ半分以下です。

ではパナソニックは「切タイマーがお得です」と書いているかというと、そうではありません。同ページの結論は「睡眠に適した環境を作りやすいのは『つけっぱなし』運転」です。安さではなく、室温を根拠に朝までの運転をすすめているわけですね。切タイマーの側は8時間後に31.2℃まで上がっていますから、当然といえば当然です。

ダイキンは電気代ではなく「暑さ指数(WBGT)」で検証している

ダイキンも就寝時の検証を公表していますが、こちらはさらにはっきりしています。ダイキン工業 2024年4月24日のニュースリリース「エアコンの効果的な節電術で削減できる電気代を4つのケースで調査」の検証5がそれにあたります。

検証の条件は次のとおりです。

  • 切タイマー運転:就寝1時間前の22:00にエアコンON → 23時就寝 → 3時間後の2:00に切タイマー(2023年7月28日、設定温度28℃)
  • つけっぱなし運転:22:00にON → 23時就寝 → 朝までつけっぱなし(2023年7月25日、設定温度28℃)
  • 調査場所:神奈川県横浜市、鉄筋コンクリート造6階建ての2階、築18年(2023年夏時点)
  • 測定エリア:寝室 約7畳、エアコン機種 AN22GNS-W(2006年製)

そして結果は、つけっぱなし運転では睡眠時の暑さ指数(WBGT)が約23℃に抑えられ、タイマー運転では明け方に25℃近くにまで達したというものでした。ダイキンは、室内では暑さ指数25℃以上で熱中症「警戒」とされる(日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.4」を参考に作成)と注記しています。

ここで大事なのは、ダイキンはこの検証5について、消費電力量や電気代を一切公表していないことです。結論も「朝まで『つけっぱなし』が快適」であって、「安い」とは書かれていません。「ダイキンの実験でつけっぱなしの方が安いと出た」と書いている記事を見かけたら、それはこの検証を読み違えているか、別の実験と混同しています。

ダイキンの夏の検証では、夜の時間帯だけ結果が逆転した

「つけっぱなしの方が安い」という説の元になっているのは、おそらくダイキン工業「空気のお悩み調査隊がゆく mission5-1 夏のエアコンつけっぱなし検証」の方です。こちらは消費電力量を測っています。

実験条件は、2016年8月5日(最高気温36.3℃、晴時々曇)、大阪市の鉄筋コンクリート造14階建てマンションの約14畳の部屋、機種はうるるとさらら Rシリーズ AN40TRP-W(4.0kW、主に14畳用)、冷房26℃・風量自動。同じ間取りの2部屋を使い、9:00〜23:00まで「つけっぱなし」と「30分ごとに入り切り」で比較しています。

ダイキンが公表している時間帯別の結果がこちらです。

時間帯 つけっぱなしの部屋
平均消費電力量/h
こまめに入り切りの部屋
平均消費電力量/h
つけっぱなしが得になる外出時間の目安
日中(9:00〜18:00) 0.37kWh 0.40kWh 35分
夜(18:00〜23:00) 0.34kWh 0.27kWh 18分

日中は、つけっぱなしの方が消費電力量が少なくなりました。ところが夜の時間帯は、つけっぱなしの方が消費電力量が大きくなっています。ダイキンはその理由を「外気温が低下して、『こまめに入り切り』したときの起動時の消費電力量が小さくなったためと推察されます」と説明しています。

つまり、よく引用される「30分程度の外出ならつけっぱなしの方がお得」という目安は、日中の話なのです。夜の目安はダイキン自身の計算で18分。この違いを落として「つけっぱなしが安い」とだけ書くと、元の実験とはかなり違うことを伝えてしまいます。

この2つの実験を、就寝中の話にそのまま当てはめてはいけない

ただし、ダイキンのmission5-1は在宅時と外出時の入り切りを比べた実験であって、就寝中の実験ではありません。ですからこの「夜0.34kWh」に8を掛けて一晩分を出すことは、私はしません。理由は3つあります。

  • 測定されたのは18:00〜23:00の5時間で、就寝時間帯(おおむね23:00〜7:00)は測られていない
  • 夜が更けるほど外気温は下がり続けるため、5時間の平均値を8時間に伸ばすと実態からずれる
  • 単価が27円/kWhで、31円/kWhで計算されたパナソニックの値と直接は比べられない

なお、ダイキンの実験2(2016年8月6日、最高気温36.9℃)では、1日の消費電力量がつけっぱなし5.7kWh(153.9円)、こまめに入り切り4.4kWh(118.8円)で、つけっぱなしの方が1日で35.1円高いという結果も出ています(27円/kWhでの計算)。ダイキン自身、「どんな場合でも『つけっぱなし』のほうがお得だと考えてしまうのは、間違い」と書いています。

◆アキの整理

「電気代だけ」で見るなら、公表されている夜間の実験値では、つけっぱなしが安いという結果は出ていません。それでも両社が朝までの運転をすすめているのは、金額ではなく室温と暑さ指数を理由にしているからです。「つけっぱなしは安い」ではなく「つけっぱなしは高くなるが、その差は一晩で十数円で、そのぶん室温が保てる」というのが、出典に忠実な言い方だと私は思います。

起動時の消費電力は本当に大きいのか、メーカーの記載を確かめる

ここまでの話の鍵は「起動時の消費電力」です。ネットでは「起動時は定常運転の3〜5倍」といった数字をよく見かけますが、私が調べた範囲では、この倍率をメーカーが公表している例は見つかりませんでした。

メーカーが書いているのは「圧縮機の負荷が高まる」という説明まで

ダイキン工業「エアコンのしくみと電気代の関係」には、「エアコンはスイッチを入れた直後、いきおいよく運転して部屋をすばやく冷やそうとします。このとき圧縮機は、より多くの熱を運ぶために運転の力を強めています。部屋が適温になると、その状態を維持できる程度に力を落として安定運転を続けます」「スイッチのオン・オフを繰り返すと、圧縮機への負荷が高まる頻度が増え、その分、多くの電気が必要になります」と書かれています。

同ページには、この圧縮機について「エアコンの消費電力の約80%は、この圧縮機を動かすために使われています」という記載もあります(2024年のニュースリリースでも「約8割は圧縮機で使われる」と注記)。またmission5-1でも「通常、エアコンが最も多く電力を消費するのは、外気温と設定温度の差が大きい運転開始直後です。自転車を運転する時にこぎ始めに体力を使うのと同じようなイメージです」と説明されています。

「◯倍」という数字が公表されていないのは、条件で変わるから

メーカーが倍率を書かないのは、その値が固定できないからだと考えるのが自然です。ダイキンは、つけっぱなしが得になる時間の目安について「目安の時間は、室内機、室外機の設置状況や天候、日照、最高気温、最低気温、部屋の気密性、断熱性などによって大きく変わってきます」という但し書きを付けています。

実際、同じ実験の中でさえ日中と夜で目安が35分と18分に分かれました。起動時にどれだけ余分に電力を使うかは、そのときの室温と設定温度の差で決まります。差が大きい昼のほうが立ち上がりの負荷は大きく、差が小さい夜は小さい。だから夜は「切って、また点ける」のペナルティが軽くなり、入り切りの方が有利になったわけです。

そもそもインバータ式のエアコンは「決まった出力でオン・オフする」機械ではなく、必要な能力に合わせて圧縮機の回転数を連続的に変える機械です。ですから「起動=常に何倍」という単純な関係にはなりません。立ち上がりの負荷は、室温と設定温度の差という条件によって決まるという理解の方が、実際の挙動に近いと思います。

就寝中は、そもそも入り切りの回数が少ない

もうひとつ見落とされがちなのが、就寝中は外出のような「途中で切る理由」がないという点です。日中のつけっぱなし論争は「買い物に出るとき切るべきか」という話ですが、寝ている間は部屋にいます。就寝中の選択肢は、実質的に「朝まで運転する」か「切タイマーで途中から止める」かの2つです。

そして後者の場合、止まった後に暑くて目が覚めて点け直すことになりがちです。パナソニックが取材した和洋女子大学の水野一枝教授も、「電気代を懸念して切タイマーにしても、暑さで目が覚めて再度エアコンをつける、つけたり消したりする行動が増え、結果としてよく眠れないという状態になりがちです」とコメントしています。

金額より先に確認したい、夏の夜の室温と熱中症

一晩の差は十数円から数十円の世界です。一方で、夏の夜の室温については公的機関がはっきりした注意喚起を出しています。順番としては、こちらが先だと私は思います。

環境省「タイマーは少なくとも3〜4時間は使用しましょう」

環境省「熱中症環境保健マニュアル 2022」III-1 日常生活での注意事項には、空調設備(エアコン)使用のポイントとして、次の記載があります。

「夜間はエアコンのタイマーが切れた後、室温が非常に高くなってしまうことがあります。タイマーは少なくとも3〜4時間は使用しましょう。」

同じ章には「厳しい暑さが続くときは、不要な外出や屋外での作業は控え、積極的に冷房(室温が28℃を超えないよう)を使いましょう」「夜間に気温があまり下がらない日には冷房をつけて寝ることも必要です」とも書かれています。

また、コラム「暑さと睡眠の関係」では「快適に眠れる室温の上限は28℃と言われ、寝具での調節は困難なため、冷房を使用する必要があります」「高温環境が睡眠に及ぼす影響は、成人よりも高齢者や幼児で大きくなるため、注意が必要です」「夏の睡眠不足は、熱中症のリスクを高くする可能性があります」と述べられています。

ここで思い出したいのが、パナソニックの実験で3時間切タイマーの部屋が8時間後に31.2℃まで上がっていたことです。環境省の「28℃を超えないよう」という目安と照らすと、金額の差だけで切タイマーを選ぶ判断にはならないと感じます。

公的機関・メーカーが示している室温と湿度の目安

数字が公表されているものだけを表にまとめました。ここに載っていない「◯℃が正解」という数字は、私が知る限り公的な出典がありません。

項目 示されている数値 出典
エアコン使用時の室温の目安 28℃ 環境省 熱中症環境保健マニュアル2022(温湿度計でこまめにチェックし、この目安で適切な温度を保つ)
下げすぎの目安 24℃を下回ると外気温との差が大きくなり、出入りの際に体の負担になる 同上
快適に眠れる室温の上限 28℃ 同上(コラム「暑さと睡眠の関係」)
心地よく眠れる室温 26〜28℃ パナソニック「夏の熱帯夜、寝る時のエアコンはつけっぱなしが正解?」
寝室の湿度 60%以下 同上
室内で熱中症「警戒」となる暑さ指数 WBGT 25℃以上 ダイキン2024年4月24日リリース(日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.4」を参考に作成と注記)

ひとつ大事な補足があります。環境省は同じマニュアルのコラムで「クールビズにおける『室温28℃』は、エアコンの設定温度ではありません」「冷房の設定温度を28℃にしても、室内が必ずしも28℃になるとは限りません。そのような場合は設定温度を下げることも考えられます」と説明しています。28℃は室温の目安であって、リモコンを28℃にしろという意味ではないということですね。

熱中症の救急搬送は「住居」が最も多い

夏の夜の話をする以上、家の中で起きていることの規模感も見ておきたいところです。総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」によると、次のような状況でした。

  • 5月〜9月の全国の熱中症による救急搬送人員の累計:100,510人(調査を開始した平成20年以降で最多)
  • 発生場所別:住居が最も多く38,292人(38.1%)。次いで道路19,773人(19.7%)、公衆(屋外)12,175人(12.1%)、仕事場10,559人(10.5%)
  • 年齢区分別:高齢者が最も多く全体の約57%
  • 初診時の傷病程度別:入院が必要(中等症・重症)な方が約36%

この統計に時間帯の内訳はありませんので、「夜間に何件」とは言えません。そこは正直にお伝えしておきます。消費者庁も「みんなの消費安全ナビ」Vol.687(2026年6月5日)でこの100,510人という数字を引きながら、熱中症予防のポイントとして「室内ではエアコンを適切に使用」することを挙げています。

この記事は、電気代を理由にエアコンを切ることをおすすめするものではありません。環境省・消費者庁・消防庁が公表しているのは、いずれも「暑いときは冷房を使う」方向の呼びかけです。電気代を抑えたい場合は、電源を切るのではなく、次の章で紹介する設定の工夫から試してみてください。
なお、体調に不安がある方、高齢の方、小さなお子さんがいるご家庭では、ここに書かれた一般的な目安ではなく、かかりつけの医療機関の助言を優先してください。

一晩の電気代を無理なく下げる、出典のある方法

部屋の窓とカーテン

最後に、切らずに電気代を下げる方法です。ここも、実際に効果の数字が公表されているものだけを挙げます。

設定温度を1℃上げる(資源エネルギー庁の公表値)

資源エネルギー庁 省エネポータルサイト「空調」は、省エネ行動ごとの効果を条件付きで公表しています。エアコンに関するものを抜き出しました。

省エネ行動 前提条件 年間の省エネ量 年間の節約額
冷房設定温度を27℃から1℃上げる 外気温度31℃、エアコン(2.2kW)、使用時間9時間/日 電気30.24kWh 約940円
冷房を1日1時間短縮する 設定温度28℃ 電気18.78kWh 約580円
フィルターを月に1回か2回清掃する 目詰まりしたエアコン(2.2kW)と清掃後の比較 電気31.95kWh 約990円

金額はすべて31円/kWhでの換算です。注意していただきたいのは、いずれも「年間」の数字だということ。同サイトは冷房期間を3.6か月(6月2日〜9月21日)の112日と定義しています。これらの値は昼夜を含む使用を前提にしているので、私は一晩に割り戻す計算はしていません。

実務的には、28℃設定でも室温が下がりすぎて肌寒いなら、そこが下げしろです。逆に28℃設定なのに室温が28℃を超えているなら、環境省の言うとおり設定温度を下げる場面になります。

風量は「自動」、風向は「水平」(ダイキンの検証値)

ダイキンの2024年4月24日のリリースには、日中11時間(8:00〜19:00)つけっぱなしにして測った検証結果が載っています。就寝中そのものの検証ではありませんが、設定の方向性の参考になります。

検証 比較した設定 消費電力量 結果
検証1 風量 風量「弱」/風量「自動」 3.85kWh / 2.79kWh 自動の方が約3割少ない
検証2 風向 「ななめ下」/「水平」 3.76kWh / 2.77kWh 水平の方が約3割少ない
検証3 暑いと感じたとき 設定温度−1℃/風量「強」(13:00〜15:00) 1.13kWh / 0.52kWh 風量「強」は約半分

ダイキンはこの理由を、風量を弱めると熱交換器を通る空気の量が減って圧縮機の負荷が増えること、風向をななめ下にすると天井付近に暖気がたまり、室内機のセンサーが「まだ暑い」と判断して余計に運転してしまうことだと説明しています(風量自動の仕組みは別記事で詳しく触れています)。

なお、検証1・2は比較した2日間で設定温度が26℃と27℃に分かれています。金額そのものより、「弱くする方が省エネとは限らない」という向きを読み取るのが正しい使い方だと思います。

寝るときに風が体に当たらないようにする

就寝中は、涼しさよりも「風が当たり続けること」の方が気になる方も多いはずです。環境省のマニュアルにも「エアコンの冷気流に直接、当たり続けると体が過度に冷えてしまいます。直接、エアコンの冷気流が体に当たらないように風向きを調整し、暑く感じるときにはエアコンの風量を強くしたり、扇風機を一緒に使ったりすることで、同じ温度でもより涼しく感じます」とあります。

メーカー側にも専用の機能があります。ダイキンのよくあるご質問「体に風を当てない運転はありますか?(ルームエアコン)」では、風量と上下風向を自動で調節する「風ないス運転」や、人感センサーで人を避けて風を送る「エリア運転」が案内されています(機種により機能がないものもあります)。

寝室こそフィルター掃除が効く

ダイキンは、フィルターを1年間掃除しない場合の消費電力について「約25%もムダになるといわれています」とし、その根拠として「JRA4046-2004に準拠した運転条件で、フィルター掃除した場合(1,145kWh)と、しない場合(1,432kWh)で算出した年間電気代比率。1年後のホコリ量は2gで試算(当社調べ)」と注記しています。

パナソニックも、寝室は寝具や衣類から出る繊維が舞いやすくホコリが溜まりやすい場所だとして掃除をすすめています。推奨頻度はダイキン・パナソニック・環境省のマニュアルとも2週間に1度で一致しています。

就寝向けの自動運転を使う場合

各社には「おやすみ運転」「みはっておやすみ」など、就寝中向けの自動運転を搭載した機種があります。何を自動で調節するのかはメーカーごとに違いますので、詳しくはみはっておやすみ運転の電気代を扱った記事やしずかモードと電気代の記事を、契約中の電力プランを見直したい方はエアコンの電気代と電力会社の記事をご覧ください。

エアコン 電気代 一晩に関するよくある質問(FAQ)

Q1. エアコンを一晩つけっぱなしにすると電気代はいくらですか?

A. パナソニックが公表している実験値では、夜間8時間つけっぱなしで862.5Wh、電気代26.7円でした。ただしこれは、同社の環境試験室(6畳)で外気30℃・湿度90%・日射なし、冷房28℃・風量風向自動、機種CS-J226D、1kWh=31円という条件での値です。条件から外れたご家庭にそのまま当てはまる数字ではありません。

Q2. つけっぱなしと切タイマー、電気代が安いのはどちらですか?

A. 公表されている実験値では、就寝中は切タイマーの方が安い結果でした。パナソニックの実験では8時間で、つけっぱなし26.7円に対し3時間切タイマーが11.5円、差は15.2円です。ただし切タイマーの部屋は停止から30分後に28℃を超え、8時間後には31.2℃に達しています。両社とも金額ではなく室温や暑さ指数を理由に、朝までの運転をすすめています。

Q3. 「つけっぱなしの方が安い」と聞いたのですが、間違いですか?

A. 条件が抜けています。元になっているダイキンの2016年の検証では、日中(9:00〜18:00)は35分までの外出ならつけっぱなしが有利、夜(18:00〜23:00)は18分までという結果でした。夜の時間帯の平均消費電力量は、つけっぱなし0.34kWh/hに対しこまめに入り切り0.27kWh/hで、入り切りの方が小さくなっています。ダイキン自身も「どんな場合でも『つけっぱなし』のほうがお得だと考えてしまうのは、間違い」と書いています。

Q4. エアコンの起動時は定常運転の何倍の電力を使いますか?

A. 私が調べた範囲では、この倍率を公表しているメーカーはありませんでした。ダイキンが説明しているのは「スイッチを入れた直後、圧縮機は運転の力を強めている」「消費電力の約80%は圧縮機で使われる」という仕組みまでです。立ち上がりの負荷は室温と設定温度の差で変わるため、固定の倍率にはなりません。

Q5. 節電のために夜はエアコンを切った方がいいですか?

A. 公的機関は逆の呼びかけをしています。環境省の熱中症環境保健マニュアル2022には「夜間はエアコンのタイマーが切れた後、室温が非常に高くなってしまうことがあります。タイマーは少なくとも3〜4時間は使用しましょう」「夜間に気温があまり下がらない日には冷房をつけて寝ることも必要です」と記載されています。電気代を下げたい場合は、電源を切るのではなく設定温度・風量・風向・フィルターの手入れで調整するのが、出典のある方法です。

まとめ:一晩の電気代は「条件つきの数字」で考える

最後に、この記事で確認できたことを整理します。

  • 就寝中8時間の電気代として実測値を公表しているのはパナソニックで、夜間想定の条件下でつけっぱなし26.7円(862.5Wh)、3時間切タイマー11.5円(372.1Wh)だった
  • 同じ機種・同じ設定でも日中想定なら52.7円で、夜間はおよそ半分になった
  • 電気代だけで見ると就寝中は切タイマーの方が15.2円安い。だが室温は8時間後に31.2℃まで上がった
  • ダイキンの就寝時の検証は暑さ指数(WBGT)での比較で、消費電力量は公表されていない。結論も「快適」であって「安い」ではない
  • ダイキンの2016年の検証では、夜(18:00〜23:00)はこまめに入り切りの方が消費電力量が小さかった
  • 起動時の消費電力について、「◯倍」という数値を公表しているメーカーは見つからなかった

つまり「つけっぱなしの方が安い」という言い切りは、少なくとも夜間・就寝中については出典で裏づけられません。正しくは、つけっぱなしは切タイマーより一晩で十数円ほど高くなるが、そのぶん室温と暑さ指数が保たれるということです。そして両メーカーとも、その十数円を払う価値がある、という立場を取っています。

1か月続けても数百円に収まる金額を惜しんで、室温が31℃を超える部屋で眠るかどうか。そう並べてみると、判断はしやすくなるのではないでしょうか。今夜はまず、リモコンの設定温度と風向を確かめてみてください。

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