エアコンは古いと電気代が高い?省エネ基準の原典で検証

やや古い形の壁掛けエアコンの室内機 掃除・お手入れ・メンテナンス

こんにちは、エアコンラボのアキです。

「古いエアコンは電気代が高い」。よく見かける話ですが、いざ自分の家の話にすると、とたんに手が止まりませんか。何年式から差が出るのか。その差はどれくらいなのか。そもそも、なぜ古いと不利なのか。ここがはっきりしないまま、なんとなく「たぶん高いんだろうな」と思っている方は多いと思います。

この記事は、その「なぜ」と「本当に?」を、経済産業省・資源エネルギー庁・日本冷凍空調工業会・メーカーが公表している資料だけで確かめていきます。結論を先に言うと、古い機種が不利になる理由は、機械が古びるからではなく、設計時に守るべき省エネ基準そのものが年代ごとに違うからです。そして、その基準は途中で3回も設定し直され、しかも測り方(ものさし)まで一度作り替えられています。

そのため、この記事では年式別・畳数別の電気代早見表は作りません。作れない理由も、後半できちんと説明します。

  • トップランナー制度の目標年度が、エアコンで何度・いつ設定し直されたか
  • APFとは何か、COPとどう違うのか、2013年のJIS改正で何が変わったのか
  • 省エネ基準達成率は何に対する達成率で、年式をまたいで比べられるのか
  • 「古くなると効率が落ちる」について、メーカーと公的機関が実際に書いていること
  • 冷媒(R22・R410A・R32)と年式の関係、そして冷媒は効率の指標になるのか

なお、「では買い替えたほうが得なのか」という判断そのものは、この記事では扱いません。設計上の標準使用期間や補修用性能部品の保有期間、経年劣化による事故の公表件数を並べて判断を組み立てる話は、古いエアコンが臭うときに掃除か買い替えかを決める記事にまとめてあります。この記事は、その判断の材料になる「効率そのもの」を掘る役割です。

やや古い形の壁掛けエアコンの室内機

  1. 「古いと電気代が高い」は、どこまで公表値で確かめられるのか
    1. 制度が見込んだ「効率改善」は、数字で公表されている
    2. 比べる前に確認したい、3つの前提
  2. トップランナー制度の目標年度は、エアコンで3回設定し直されている
    1. 1999年度・2006年度(2009年度)・2022年度の3回
    2. 目標年度が変われば、基準値も区分も変わる
    3. 2027年度基準では、寒冷地仕様という区分が新設された
  3. APFとCOP、そして2013年のJIS改正——ものさしが作り替えられた
    1. APFは「1年分の冷暖房能力 ÷ 1年分の消費電力量」
    2. COPは、APFの計算過程に出てくる指標
    3. JIS C 9612:2013で変わった3点
    4. カタログには一時期、2つのAPFが併記されていた
  4. 省エネ基準達成率は、年式をまたいで比較できない
    1. 達成率は「その時点のトップランナー基準に対する割合」
    2. 2016年度の実績では、13区分すべてが100%を超えていた
    3. 古いカタログの達成率と新しいカタログの達成率は、そのまま比べられない
  5. 「古いと効率が落ちる」と冷媒の話を、公表資料で確かめる
    1. 「経年で効率が落ちる」を数値で示した公的資料は、見つけられませんでした
    2. 公表値があるのは、経年ではなく「汚れ」のほう
    3. 冷媒(R22・R410A・R32)は年式の目印にはなるが、効率の指標ではない
    4. 年式別・畳数別の電気代早見表を、この記事で作らない理由
    5. では、自分の家のエアコンをどう調べればいいのか
  6. 古いエアコンの電気代についてよくある質問
    1. まとめ:年式の話は「基準の世代」の話として読む

「古いと電気代が高い」は、どこまで公表値で確かめられるのか

まず、いちばん大事な前提を押さえます。エアコンの省エネ性能は、メーカーが自由に決めているわけではありません。省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)にもとづくトップランナー制度で、国が区分ごとに目標基準値を告示し、メーカーはそこへ向けて製品を設計しています。

制度が見込んだ「効率改善」は、数字で公表されている

資源エネルギー庁のエアコンディショナーのトップランナー基準のページには、それぞれの基準が「どれだけの効率改善を見込んだものか」まで書かれています。原文の表現をそのまま引くと、次のとおりです。

  • 家庭用(目標基準値①のもの)は、目標年度である2010年度において2005年度比 約16.3%の効率改善
  • 家庭用(目標基準値②のうち区分E〜G)は、目標年度2010年度において2006年度比 約15.6%の効率改善
  • 家庭用(目標基準値②のうち区分H〜M)は、目標年度2012年度において2006年度比 約15.9%の効率改善
  • 家庭用(目標基準値③のうち区分Ⅰ〜Ⅳ、壁掛形)は、目標年度2027年度において2016年度比 約13.7%の効率改善見込み
  • 家庭用(目標基準値③のうち区分Ⅴ〜Ⅹ、壁掛形以外)は、目標年度2029年度において2016年度比 約0.4%の効率改善見込み

ここで注目してほしいのは、いちばん下の約0.4%です。同じ「新しい基準」でも、壁掛形は13.7%の上積みを見込んでいるのに対し、床置形や天井埋込形などの壁掛形以外はほぼ横ばいの見込みなのです。「新しいほど省エネ」は、形やタイプによって効き方がまったく違うということが、制度の側から読み取れます。

比べる前に確認したい、3つの前提

年式を比べるときに落とし穴になるのが、次の3点です。この記事の後半は、実質的にこの3つの解説です。

  1. 目標年度が複数ある。「省エネ基準」は1本の線ではなく、年代ごとに別々の基準値が存在します
  2. 測り方が途中で変わった。APFの算出方法を定めたJIS C 9612は2013年4月に改正され、条件が見直されています
  3. 達成率は相対値。「達成率100%」は、そのカタログが基準にしている目標年度に対しての100%です

トップランナー制度の目標年度は、エアコンで3回設定し直されている

では、目標年度はいつ、何回変わったのか。ここは推測せず、原典に当たります。

1999年度・2006年度(2009年度)・2022年度の3回

資源エネルギー庁が2022年9月に出した資料「省エネ法に基づくエアコン告示の改正概要について」(PDF)に、経緯がそのまま書かれています。

  • 1999年度に、家庭用エアコン(壁掛形)をトップランナー基準の対象に規定。2004年度を省エネ基準の目標年度に規定
  • 2006年度に、2010年度(壁掛形)を新たな省エネ基準の目標年度に規定。2009年度に家庭用エアコンの対象を拡大し、2012年度(壁掛形以外)を新たな目標年度に規定
  • 2022年度に、2027年度(壁掛形)又は2029年度(壁掛形以外)を新たな省エネ基準の目標年度に規定

整理すると、家庭用エアコンの目標年度は2004年度 → 2010年度・2012年度 → 2027年度・2029年度と設定し直されてきました。直近の改正は2022年5月の告示改正で、この改正では13区分から10区分へ区分の切り方も変わっています。

つまり、たとえば2008年に売られていた機種は「2004年度基準を満たした世代」、2018年の機種は「2010年度基準を満たした世代」、2028年以降の壁掛形は「2027年度基準を満たした世代」です。年式の差は、機械が古びた差である前に、守るべき基準が違う世代の差だと考えたほうが実態に近いと思います。

目標年度が変われば、基準値も区分も変わる

基準値の中身も見ておきましょう。現行(2010年度・2012年度)の目標基準値は、資源エネルギー庁の前掲ページに区分A〜Mとして掲載されています。そこに、経済産業省の判断基準ワーキンググループ資料「エアコンディショナー及び電気温水機器 判断基準ワーキンググループ」配布資料(PDF)が示す2016年度の実績値を並べると、こうなります(壁掛形のみ抜粋)。

区分 冷房能力/室内機の寸法タイプ 目標基準値(APF) 2016年度の実績値(加重調和平均) 基準達成率
A 3.2kW以下/寸法規定 5.8 5.89 102%
B 3.2kW以下/寸法フリー 6.6 6.89 104%
C 3.2kW超4.0kW以下/寸法規定 4.9 5.40 110%
D 3.2kW超4.0kW以下/寸法フリー 6.0 7.28 121%
E 4.0kW超5.0kW以下 5.5 5.96 108%
F 5.0kW超6.3kW以下 5.0 5.56 111%
G 6.3kW超28.0kW以下 4.5 5.34 119%

実績値は「特定エネルギー消費機器の省エネ技術導入状況等に関する調査」の2016年度実績データにもとづくもので、APFはJIS C 9612:2005による値です。同じ2016年度の機種でも、区分Dの7.28と区分Gの5.34では、APFに2近い開きがあることがわかります。「新しいか古いか」より「どの区分の機種か」のほうが効いている場面がある、ということです。

ちなみに「寸法規定」とは、室内機の横幅寸法800ミリメートル以下かつ高さ295ミリメートル以下の機種を指します。前掲の資源エネルギー庁資料によれば、横幅の800ミリメートルは、旧尺貫法による柱間のモジュール寸法910ミリメートルから、3.5寸の柱の寸法106.75ミリメートルとエアコンと柱の最小間隔5ミリメートルを引いた値です。日本の住宅の寸法が、そのまま省エネ基準の区分になっていたわけです。

2027年度基準では、寒冷地仕様という区分が新設された

2027年度以降の基準(区分Ⅰ〜Ⅳ、壁掛形)は、寸法ではなく「一般地仕様か寒冷地仕様か」で分かれます。

区分 冷房能力 仕様 基準エネルギー消費効率(目標基準値)
Ⅰ 2.8kW以下 寒冷地仕様以外 6.6
Ⅱ 2.8kW以下 寒冷地仕様 6.2
Ⅲ 2.8kW超28.0kW以下 寒冷地仕様以外 E = 6.84-0.210×(A-2.8)(上限6.6・下限5.3)
Ⅳ 2.8kW超28.0kW以下 寒冷地仕様 E = 6.44-0.210×(A-2.8)(上限6.2・下限4.9)

Eは基準エネルギー消費効率、Aは冷房能力(キロワット)です。能力が大きくなるほど求められるAPFが下がっていくという、算定式そのものが公表されています。寒冷地仕様とは、積雪・低温に起因する故障を防止するよう設計・製造され、外気温-7℃で定格暖房標準能力以上を発揮し、-15℃以下でも運転性能要求事項を満たすもの、と定義されています。

能力の選び方や畳数の目安そのものはエアコンを2台使うときの電気代の記事で詳しく扱っていますので、そちらもあわせてご覧ください。

APFとCOP、そして2013年のJIS改正——ものさしが作り替えられた

ここが、この記事のいちばんの山場です。年式をまたいで数字を比べようとすると、必ずここで足をすくわれます。

APFは「1年分の冷暖房能力 ÷ 1年分の消費電力量」

APF(通年エネルギー消費効率、Annual Performance Factor)の定義は、前掲の資源エネルギー庁資料に式で書かれています。

APF = 1年間の冷房及び暖房運転における総合負荷(kWh) ÷ 1年間に必要な消費電力量(kWh)
=(冷房期間総合空調負荷+暖房期間総合空調負荷)÷(冷房期間消費電力量+暖房期間消費電力量)

日本冷凍空調工業会の「期間消費電力量を省エネ性の目安にお選びください」には、その分母にあたる期間消費電力量の算出条件が明記されています。外気温度は東京がモデル、設定温度は冷房時27℃/暖房時20℃、冷房期間は5月23日〜10月4日、暖房期間は11月8日〜4月16日、時間は6:00〜24:00の18時間、住宅はJIS C 9612による平均的な木造住宅(南向き)です。かなり使うほうの前提だという点は、頭に入れておいてください。

COPは、APFの計算過程に出てくる指標

「昔はCOPと書いてあったのに、今はAPFになっている」と感じたことがある方もいると思います。この2つは別物というより、包含関係にあります。

前掲の経済産業省のワーキンググループ資料には、APFの算出手順が書かれています。それによると、5つの必須試験で測定した消費電力と空調負荷をもとにCOP(空調負荷÷消費電力)を算出し、その5点のCOP測定値をもとに外気温に応じたCOPを求めます。冷房なら外気温度23℃〜35℃の1℃ごと、暖房なら0℃〜17℃の1℃ごとにCOPを算出し、東京を想定した外気温の発生頻度と掛け合わせて期間の総合負荷と消費電力量を出す、という流れです。

つまりCOPは「ある1点の運転条件での効率」、APFは「1年分の運転を積み上げた効率」です。エアコンは1年中フルパワーで動くわけではないので、定格1点のCOPだけでは実際の電気代を反映しません。だからこそ、省エネ法の評価指標は通年をならしたAPFになっているわけです。

仕組みとして補足すると、インバータでコンプレッサーの回転数を変えられる機械は、部屋が設定温度に近づくと運転を絞ったり止めたりする時間が増えます。この「軽い負荷の扱い方」が、次に説明するJIS改正の焦点でした。

JIS C 9612:2013で変わった3点

家庭用エアコンのJIS C 9612(ルームエアコンディショナ)は2013年4月に改正されました。前掲の資源エネルギー庁資料には、改定内容が3点にまとめられています。

変更点 旧JIS(2005) 新JIS(2013)
中間能力以下の運転 連続運転として計算 過大評価とならないよう断続運転として計算
空調負荷100%に対応した温度条件 33℃ ISO規格に合わせ35℃
空調負荷の発生時間 従来の気象データ 拡張アメダス気象データ2000年版(日本建築学会、1991年〜2000年から選択された標準気象データ)に変更

1点目が特に効きます。軽い負荷のときの運転を「ずっと回り続ける」前提で計算していたのを、「ついたり消えたりする」前提に改めたわけです。機械が同じでも、計算の前提が変われば出てくるAPFの数値は変わります。

カタログには一時期、2つのAPFが併記されていた

ここが実務的にいちばんややこしいところです。日本冷凍空調工業会の「JIS C 9612(ルームエアコンディショナ)の改正に伴うカタログ表示の変更について」によると、2013年の改正後しばらくの間、カタログの中で使われるJISの発行年度が項目ごとに違っていました。

  • 期間消費電力量…2013年のJISに基づいて表示
  • 運転音…2013年のJISに基づいて表示(測定方法が音圧レベルから音響パワーレベルへ変更)
  • 省エネルギーラベル…省エネ法の評価基準が2005年のJISだったため、2005年のAPFに基づいて表示

同会はこの状態について、「期間消費電力量と省エネルギーラベルの表示は、適用される通年エネルギー消費効率(APF)が異なるため、商品欄の省エネルギーラベルの表示に記載のAPF数値と仕様表に記載のAPFは、数値が異なる場合があります」と明記しています。1冊のカタログの中に、同じ機種の違うAPFが2つ載っていたということです。

だから、手元に古いカタログや取扱説明書があってAPFの数字を見つけても、その数字がJIS C 9612の2005年版のものか2013年版のものかを確かめないと、比較の意味がありません。前掲の同会ページによれば、製品仕様表や別表にはタイトル近傍にJIS規格番号と発行年度が記載されています。まずそこを見てください。

省エネ基準達成率は、年式をまたいで比較できない

店頭やカタログで目立つのが「省エネ基準達成率○○%」の表示です。ここも、意味を正確に押さえておく必要があります。

達成率は「その時点のトップランナー基準に対する割合」

資源エネルギー庁の省エネ型製品情報サイトが公開している省エネ性能カタログ2025年版(PDF)では、省エネルギーラベルの4つの表示項目が次のように説明されています。

  • 省エネ性マーク…トップランナー基準を達成した(省エネ基準達成率100%以上)製品にはグリーン、未達成(100%未満)にはオレンジ色のマークを表示
  • 省エネ基準達成率…その製品がトップランナー基準値を、どの程度達成しているかを%で示す
  • エネルギー消費効率…製品ごとに定められた測定方法で得られた数値(エアコンはAPF)
  • 目標年度…トップランナー基準を達成すべき年度で、製品ごとに設定されている

ラベルに目標年度が併記されているのがポイントです。三菱電機のFAQ「カタログなどに記載されている値の見かたを知りたい」も、「省エネ基準達成率」は省エネ法に定められた2027年度基準、または2029年度基準に対する達成率を表している、と明記しています。達成率は絶対的な性能値ではなく、そのカタログが基準にしている目標年度に対しての相対値だということです。

2016年度の実績では、13区分すべてが100%を超えていた

先ほどの表をもう一度見てください。2016年度の実績値では、壁掛形の区分A〜Gがいずれも102%〜121%、壁掛形以外とマルチタイプの区分H〜Mも101%〜104%で、13区分すべてが100%を超えていました。前掲のワーキンググループ資料の数値です。

これは制度が機能していることの表れですが、消費者から見ると別の意味を持ちます。「達成率100%以上」はその年代のほぼ全機種が満たしている状態なので、100%を少し超えているかどうかは、機種選びの決め手にはなりにくいということです。

古いカタログの達成率と新しいカタログの達成率は、そのまま比べられない

ここまでを重ねると、答えは自然に出ます。年式の違うカタログの達成率を並べて比べようとすると、次の2つが同時に動いてしまいます。

  1. 分母の目標基準値が違う。2004年度基準・2010年度基準・2027年度基準では、そもそも求められている水準が別物です
  2. 分子のAPFの測り方が違う。JIS C 9612の2005年版と2013年版では、算出条件が変わっています

メーカー側もここは慎重で、ダイキンがエアコンの省エネ性能を解説したページで10年前との比較を示す際にも、「期間消費電力量:2013年はJIS C 9612:2005、2023年はJIS C 9612:2013に基づいて測定された試算値です」という注記を付けています。比較図を出す側自身が、ものさしが違うことを注記しているわけです。

ですので、この記事としての答えははっきりしています。古いカタログの達成率と新しいカタログの達成率を、単純に引き算・割り算してはいけません。年式をまたいで比較したいなら、達成率ではなく、同じJIS版数で測られた期間消費電力量(kWh)どうしを見るのが唯一まともな方法です。

「古いと効率が落ちる」と冷媒の話を、公表資料で確かめる

住宅の外に設置された年季の入ったエアコンの室外機

ここまでは「設計世代の差」の話でした。では、使っているうちに効率そのものが落ちるという通説は、どうでしょうか。

「経年で効率が落ちる」を数値で示した公的資料は、見つけられませんでした

正直にご報告します。「エアコンは使用年数◯年で効率が◯%低下する」といった数値を、メーカー公式サイトや官公庁の資料の中に見つけることはできませんでした。あるのは、定量的でない症状の記述です。

日本冷凍空調工業会の「そろそろ買い換えかな、と思ったら…」は、「エアコンが少々疲れ気味」のサインとして次の3つを挙げています。

  • 最近冷えが悪くなってきた、寒い朝は暖房が弱い
  • 以前より電気代が増えたように感じる
  • 運転音が高くて、テレビの音量を上げたことがある

注目してほしいのは「感じる」という書き方です。業界団体でさえ、経年による電気代の増加を実測値ではなく体感として書いています。同じページには、家庭で電気を多く使うのはエアコンであり、夏場の昼間の使用量はエアコンが58%を占める、という数字も示されています。

もちろん、故障として効率が落ちることはあります。ただしそれは「経年で少しずつ効率が落ちる」ではなく「不具合が起きている」状態です。異音や異臭など、使用を中止して相談すべき症状については古いエアコンの記事で公的機関の記載をまとめていますので、そちらを確認してください。

公表値があるのは、経年ではなく「汚れ」のほう

一方、汚れによる損失には、条件つきの公表値があります。前掲の省エネ性能カタログ2025年版には、一般財団法人省エネルギーセンターの実測値に基づく試算として、次の数字が載っています。

取り組み 条件 年間の省エネ量 年間の節約額
フィルターを月に1回か2回清掃 フィルターが目詰まりしているエアコン(2.2kW)と清掃した場合の比較 電気31.95kWh 約860円
冷房の設定温度を27℃から28℃に 外気温度31℃、使用時間9時間/日 電気30.24kWh 約820円
暖房の設定温度を21℃から20℃に 外気温度6℃、使用時間9時間/日 電気53.08kWh 約1,430円
冷房を1日1時間短縮 設定温度28℃ 電気18.78kWh 約510円

金額は、同カタログが目安電気料金の算出に使っている1kWhあたり27円(税込)で換算された値です。この27円は、電力・ガス取引監視等委員会「電力取引報」を活用し、直近3年分の平均値(小数点第1位を四捨五入)として設定されたものだと明記されています。単価の考え方についてはエアコンとテレビの電気代を比べた記事でも扱っています。

同カタログは2週間に1度のフィルター掃除を勧めています。年式にかかわらず今日から効く対策は、こちらの側にあるということです。

冷媒(R22・R410A・R32)は年式の目印にはなるが、効率の指標ではない

冷媒の変遷は、年式を推定する手がかりになります。日本冷凍空調工業会の「HCFC(R22冷媒など)の国内生産削減・全廃のお知らせ」によると、オゾン層破壊物質であるHCFC類の国内生産は2020年1月1日から全廃され、それ以前にCFC(R12、R502など)の生産は1996年に全廃されています。根拠はモントリオール議定書(1987年)とオゾン層保護法(1988年制定)です。同会は、国内の冷凍空調機器メーカーはすでにR22対応製品から代替冷媒製品の生産・販売へ移行済みだ、とも書いています。

メーカー側の年次も公表されています。ダイキンのFAQ「フロンについて(ルームエアコン)」には、2015年以降のダイキン製の家庭用エアコンでは、冷媒としてR32を使用していると書かれています(機種により異なることがある、との注意書き付き)。同社の新冷媒R32のページでは、地球温暖化係数(GWP)100年値としてR410Aの2,090に対しR32は675という比較が、IPCC第4次評価報告書を出典として示されています。世界初のR32ルームエアコンの発売日は2012年11月1日(当社調べ)とされています。

ここで慎重になりたいのは、これらの数字はいずれも「地球温暖化への影響」の話であって、電気代の話ではないという点です。同ページには「R32を採用したルームエアコンにおいて、ダイキンはエアコンの『構造』から作り直し、これまでにない省エネ性能と環境対応力を目指します」という記述もありますが、これは目標を述べた文であって、効率が何%上がったという検証済みの数値ではありません。

冷媒の種類は年式を推定する手がかりとしては有効です(室外ユニットの機械銘板に冷媒の種類と質量が記載されています)。ただし、「R32だから電気代が安い」と言い切れる公表値は見つかりませんでした。効率を比べたいなら、冷媒名ではなく期間消費電力量とAPFを見てください。

年式別・畳数別の電気代早見表を、この記事で作らない理由

ここまで読んでいただければ、理由はもう明らかだと思います。「1996年式の6畳用は年間◯◯円、2006年式は◯◯円」という表を作るには、同じ条件で測られた公表値が、年式ごとに揃っている必要があります。ところが実際は、こうです。

  1. 2013年3月以前の機種のAPF・期間消費電力量はJIS C 9612:2005、以降はJIS C 9612:2013で測られており、そのまま並べられない
  2. 目標基準値が2004年度・2010年度・2012年度・2027年度・2029年度と分かれており、達成率も横に並べられない
  3. 畳数(冷房能力)ごとの公表値はその能力クラスの実機の値であって、6畳用の数字に係数を掛けて14畳用を求めることはできない

それでも表を作ろうとすると、どこかで「たぶんこれくらい」という数字を自分で置くことになります。その瞬間に、それは調べた結果ではなく創作になります。ですので、この記事では作りません。作れないという事実自体が、読者にとっては役に立つ情報だと思っています。

同じ理由で、この記事には「古いエアコンは1時間◯円」という数字も出しません。消費電力は機種と運転状況で決まるもので、それを自分で仮定して単価と掛けた瞬間、根拠のない数字ができあがってしまうからです。

では、自分の家のエアコンをどう調べればいいのか

年式ではなく、実物の数値を当たるのが確実です。手順はシンプルです。

  1. 室内機の側面や前面パネル内側で製造年を確認する。製造年の表示位置はメーカーによって案内されています
  2. 型番(総称名)を控えて、メーカーの仕様検索から期間消費電力量とAPFを調べる。ダイキンの場合は情報検索サイトから仕様書を閲覧できると案内されています
  3. その数値がどのJIS版数のものかを確認する。仕様表や別表のタイトル近傍にJIS規格番号と発行年度が記載されています
  4. 買い替え候補の期間消費電力量と、同じJIS版数どうしで比べる。単位はkWhなので、そのまま差が電力量の差になります

4番まで進めば、あとは差のkWhにご自宅の電力単価を掛けるだけです。単価の調べ方は電力会社と電気代の記事にまとめています。

古いエアコンの電気代についてよくある質問

Q1. 何年式から電気代の差が出ますか?

A. 「◯年式から」と線を引ける公表値は見つかりませんでした。制度の側から言えるのは、目標年度が2004年度・2010年度(壁掛形以外は2012年度)・2027年度(同2029年度)と切り替わっているので、その前後で設計の前提が変わっているということだけです。実際の差は、お使いの機種の期間消費電力量(kWh)を仕様書で確認して、買い替え候補の値と比べるのがいちばん確実です。ただし比べる2つが同じJIS版数の値かどうかは必ず確認してください。

Q2. 古いカタログに「省エネ基準達成率120%」と書いてありました。今の機種より優秀ですか?

A. その比較はできません。達成率は、そのカタログが基準にしている目標年度の基準値に対する割合です。三菱電機のFAQも、達成率は2027年度基準または2029年度基準に対する達成率だと明記しています。実際、2016年度の実績では区分Dの達成率が121%に達していましたが、これは当時の目標基準値6.0に対する数字です。比べるなら達成率ではなく、同じJIS版数で測られたAPFか期間消費電力量を見てください。

Q3. APFが同じなら、電気代も同じですか?

A. いいえ。APFは「1年間の冷暖房能力の総和 ÷ 期間消費電力量」なので、能力が大きい機種はAPFが同じでも期間消費電力量が大きくなります。省エネ性能カタログ2025年版も、省エネ基準達成率やAPFが同じでも冷房能力が違うと期間消費電力量が異なり電気代にも差が出る、として部屋の広さに合った冷房能力を選ぶよう促しています。電気代そのものを比べたいときは、APFではなく期間消費電力量(kWh)を見るのが正解です。

Q4. カタログの期間消費電力量どおりの電気代になりますか?

A. なりません。日本冷凍空調工業会が示す算出条件は、東京をモデルとした外気温度、冷房27℃/暖房20℃、冷房期間5月23日〜10月4日、暖房期間11月8日〜4月16日、1日18時間(6:00〜24:00)、平均的な木造住宅(南向き)という前提です。ご自宅の地域・断熱・使用時間がこれと違えば、当然ずれます。比較のための共通のものさしとして使うのが正しい使い方です。

Q5. R22の冷媒を使っている古いエアコンは、すぐ買い替えるべきですか?

A. この記事では買い替えを勧めることはしません。事実として確認できるのは、HCFC(R22など)の国内生産が2020年1月1日から全廃されていること、CFCは1996年に全廃されていること、そして国内メーカーはすでに代替冷媒製品へ移行済みだと日本冷凍空調工業会が説明していることです。冷媒の入手性は修理の可否に関わる話なので、判断材料としては補修用性能部品の保有期間をまとめた記事とあわせて考えてみてください。

Q6. 窓用エアコンや小型のポータブルタイプも、同じ基準で比べられますか?

A. 比べられません。資源エネルギー庁のトップランナー対象範囲では、窓に設置される構造のもの、壁を貫通して設置される構造のもの、冷房の用のみに供するものなどが対象から除かれています。つまりAPFや省エネ基準達成率の土俵に乗っていない製品があるということです。詳しくはポータブルエアコンの電気代の記事で扱っています。

まとめ:年式の話は「基準の世代」の話として読む

最後に、この記事で原典から確認できたことを整理します。

  • 家庭用エアコンのトップランナー基準の目標年度は、2004年度 → 2010年度・2012年度 → 2027年度・2029年度と設定し直されてきた(1999年度・2006年度/2009年度・2022年度の3回)
  • 制度が見込んだ効率改善は、2010年度目標で2005年度比 約16.3%、2027年度目標(壁掛形)で2016年度比 約13.7%、2029年度目標(壁掛形以外)は2016年度比 約0.4%
  • APFの算出方法を定めるJIS C 9612は2013年4月に改正され、中間能力以下を断続運転として計算する、温度条件を33℃から35℃にする、気象データを差し替える、という3点が変わった
  • 改正直後のカタログでは、期間消費電力量は2013年版、省エネルギーラベルは2005年版という併記状態があり、同じ機種で数値が異なる場合があると日本冷凍空調工業会が明記している
  • 省エネ基準達成率は、そのカタログの目標年度の基準値に対する相対値。2016年度の実績では13区分すべてが100%超だった
  • 「経年で効率が◯%落ちる」という数値は、メーカー・公的機関の資料から見つけられなかった。公表値があるのはフィルターの汚れなど手入れの側(2.2kW機で年間31.95kWh・約860円)
  • 冷媒(R22・R410A・R32)は年式の手がかりにはなるが、効率の指標ではない

「古いから高い」ではなく、「その年に守るべきだった基準が、今より緩かった」。これが、公表資料から読み取れるいちばん正確な言い方だと思います。そして、その差が自分の家でいくらになるかは、型番から期間消費電力量を引き出して、同じものさしどうしで引き算するしかありません。少し手間ですが、そこまでやれば、もう誰かの早見表を探さなくて済みます。

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