こんにちは、エアコンラボのアキです。
エアコンの効きが落ちてきて、ネットで見かけた「漏れ止め剤」を試そうか迷っていませんか。数千円で直るなら試したい、でも悪化させたらこわい。その迷いはもっともだと思います。
調べていくと、効果を検証した公的な資料は見つかりませんでした。一方で、エアコンの漏れ止め剤のような添加剤を冷媒回路に注入する行為については、業界団体がはっきりと立場を示しています。この記事では、確認できた一次情報だけを並べます。
- 漏れ止め剤が働きかける冷媒回路は、どういう仕組みなのか
- 添加剤の注入が「改造」とされる根拠と、そのときのメーカーの対応
- そもそも冷媒が漏れる原因として、何が報告されているのか
- 使うかどうかを決める前に、確認しておきたいこと

エアコンの漏れ止め剤とは何かを整理します
まず、漏れ止め剤が入っていく先である冷媒回路が、どういうものかを押さえておきましょう。
冷媒回路は室内機と室外機をつなぐ閉じた輪
パナソニックの解説によると、エアコンの室内機と室外機は2本の配管でつながっていて、その中を冷媒が循環しています。冷媒を圧縮する圧縮機、熱をやりとりする熱交換器、冷媒を減圧する膨張弁という3つの要素が、この輪の中に組み込まれています。
冷媒は常温では気体ですが、圧力をかけると液体になります。この性質を使い、圧縮と膨張を繰り返しながら熱を運んでいるわけです。
ポイントは、これが設計されたとおりの冷媒と冷凍機油だけが回るように作られた、閉じた輪だということです。何かを足せば、その何かも同じ輪をぐるぐる回り続けます。
漏れ止め剤が想定している役割
漏れ止め剤は、この冷媒回路の中に薬剤を送り込み、漏れている箇所をふさぐことを狙った製品です。業界の文書では「冷媒漏洩封止剤」という呼び方をされています。
検索して出てくる製品の多くは車のエアコン向けです。当ブログが扱う家庭用のルームエアコンとは、冷媒の種類も回路の設計も違います。
そのうえで気になるのは、この薬剤を入れたあとに何が起きるのかです。ここからが本題になります。
添加剤の注入は業界団体が「改造」と定めています
ここが、今回調べていていちばんはっきりした部分です。推測ではなく、公開されている文書にそのまま書かれていました。
日本冷凍空調工業会の警告文にある記述
日本冷凍空調工業会は、2023年12月に「改造はダメ!!」という警告文を公開しています。そこに添えられたQ&Aで、何が「改造」に当たるかが列挙されています。
その4番目が、次の記述です。
メーカーが指定していない冷媒や冷凍機油への変更、添加剤や蛍光式冷媒漏洩検知剤や冷媒漏洩封止剤等を注入すること。
漏れ止め剤にあたる「冷媒漏洩封止剤」が、名指しで改造の例として挙げられています。同じQ&Aでは、改造が行われた製品についてメーカーは保証できず、メンテナンス部品の供給や復旧対応も行わないとしています。
そして、故障や事故が起きたときの責任は、製品の保有者であるユーザー側が負うことになる、とも書かれています。
保証が及ばなくなる範囲は冷媒系統にも重なる
では、その保証はもともとどこまでカバーしていたのでしょうか。ダイキンのルームエアコンを例に見てみます。
| 対象 | 期間 |
|---|---|
| 本体 | お買い上げ日から1年 |
| 冷媒系統部分(現地配管を除く圧縮機、熱交換器、室内外ユニットの内配管) | 5年 |
| 補修用部品の保有期間 | 製造打切り後10年 |
本体1年に対して、冷媒系統だけは5年と長めに設定されています。漏れ止め剤を入れる先は、まさにこの5年保証の対象部分です。
保証の条件はメーカーごとに違います。手元の保証書の記載を一度読んでおくと、判断材料が増えます。
◆アキのワンポイントアドバイス
私の本業は組込みソフトウェアの開発で、冷媒回路の設計や施工は担当の外です。だからこそ、自分の感覚ではなく公開された文書に当たるようにしています。
今回いちばん意外だったのは、「冷媒漏洩封止剤」という言葉が警告文にそのまま載っていたことでした。ここまで具体的に書かれている以上、知らなかったでは済ませにくい話だと感じています。

冷媒が漏れる原因と冷媒回路の弱いところ
もうひとつ考えたいのが、そもそもなぜ漏れているのか、という点です。
事故情報の分析では疲労と腐食が大半
日本冷凍空調工業会が2013年11月に経済産業省の審議会へ提出した資料に、冷媒漏れの原因分析があります。2008年から2011年の冷凍空調設備の事故情報200件についての分析です。
| 原因 | 件数(割合) | 報告されている内容 |
|---|---|---|
| 腐食 | 92件(46%) | 保冷材などの施工不良や劣化で水が入り、配管やろう付け部が腐食してピンホールになる |
| 疲労 | 67件(34%) | 圧縮機の振動や冷媒の流れによる力で、溶接部やフレア部などが疲れて割れる |
| その他 | 41件(約2割) | 上記以外の要因 |
疲労と腐食で、合わせて約8割を占めています。さらに、疲労や腐食による漏れは、10年以上動いている設備での発生が65%以上とされています。
この資料は業務用の設備を対象としたもので、家庭用エアコンの統計ではありません。それでも、漏れが配管や接合部そのものの劣化から起きているという構図は参考になります。
薬剤でふさぐという発想は、この劣化そのものを元に戻すものではない、ということになります。
出典: 日本冷凍空調工業会「冷媒漏えい事故への対応について」(経済産業省の産業構造審議会に提出された資料4-2)
冷媒回路は異物の混入に神経を使う場所
日本冷凍空調工業会は、家庭用エアコンの施工上のポイントを公開しています。そこでは、いまの主流であるR410AやR32の機種について、旧世代のR22機種以上に配管内への異物の混入に注意するよう求めています。異物として挙げられているのは油分や水分です。
これらの機種は作動圧力がR22機種の約1.6倍と高く、一部の配管部材や工具も専用のものになります。冷媒を充てんする向きまで指定されている世界です。
日立も、引っ越しなどで配管を再利用する条件として、配管厚0.8mmのJIS規格品であることと、径が新しい機種と合っていることを挙げています。配管内が極端に汚れている場合は、洗浄するか新しい配管へ交換するよう求めています。
ここで挙げた注意はいずれも施工時の異物混入についてのもので、漏れ止め剤を名指ししたものではありません。家庭用エアコンのメーカー公式サイトで漏れ止め剤そのものに触れた記述は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。
それでも、冷媒回路が何に神経を使って作られているかは伝わってきます。
出典: 日本冷凍空調工業会「冷媒HFC(R410AおよびR32)採用機種の施工上のポイント」 / 日立「エアコンの配管は再利用できますか?」

エアコンの漏れ止め剤を検討する前に確認すること
ここまでを踏まえて、判断の順番を整理しておきます。
順番に確認したい3つのこと
- 本当に冷媒が減っているのか。ガス漏れのサインに当てはまるか、まず切り分ける
- 保証はまだ生きているか。冷媒系統が5年保証なら、その期間内かどうかを保証書で確かめる
- 漏れている場所は特定できているか。場所が分からないまま薬剤を入れても、原因は残ったままになる
3つとも確認したうえで、漏れ箇所の修理とガス補充という正規の手順と見比べてみてください。
買い替えが決まっている古い機種を数か月だけ延命したい、といった事情もあると思います。その場合にエアコンの漏れ止め剤を選ぶなら、メーカーの保証と復旧対応を手放す判断になる点は押さえておきたいところです。
エアコンの漏れ止め剤に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 漏れ止め剤を入れると保証はどうなりますか?
A. 日本冷凍空調工業会は、冷媒漏洩封止剤の注入を「改造」に当たる行為として挙げています。改造が行われた製品について、メーカーは保証できず、メンテナンス部品の供給や復旧対応も行わないとしています。ご自身の保証書の記載も併せて確認してください。
Q2. 車用の製品を家庭用エアコンに使ってもいいですか?
A. 冷媒の種類も回路の設計も異なります。家庭用の冷媒回路に入れる時点で、メーカーが指定していない添加剤の注入に当たります。当ブログは家庭用ルームエアコンのみを扱っているため、車のエアコンについては専門の情報をご確認ください。
Q3. 効果があったという話も見かけますが、実際どうなのですか?
A. 効果の有無や持続期間を検証した公的な資料は、今回調べた範囲では見つけられませんでした。個人の体験談は機種も漏れ方も条件が分からないため、判断の根拠にはしにくいところです。ここでは効果があるともないとも断定しません。
Q4. メーカーは漏れ止め剤について何と言っていますか?
A. 家庭用エアコンのメーカー公式サイトで、漏れ止め剤そのものに触れた記述は今回調べた範囲では見当たりませんでした。確認できたのは、業界団体である日本冷凍空調工業会が、冷媒漏洩封止剤の注入を「改造」の例として挙げている点です。
Q5. 「フロンの入れ替えが必要」と勧誘されました。応じるべきですか?
A. 環境省は、省庁の指示だと騙ってフロン類の入れ替えを勧誘する事例に注意を呼びかけています。省庁がそのような指示を出している事実はないと明記されています。同じ説明を持ちかけられたら、いったん立ち止まってください。
出典: 環境省「環境省・経済産業省の指示と騙る勧誘に御注意」
まとめ・エアコンの漏れ止め剤
効果を検証した公的な資料は見つかりませんでした。一方で、日本冷凍空調工業会は冷媒漏洩封止剤の注入を「改造」に当たる行為として挙げ、その場合はメーカーの保証も部品供給も復旧対応も受けられないとしています。
冷媒系統は5年保証が付く部分です。そして事故情報の分析では、漏れの約8割が腐食と疲労という配管側の劣化でした。薬剤はその劣化を元に戻すものではありません。
効きが落ちたと感じたら、まずは漏れているかどうかの切り分けと、漏れ箇所の特定から始めてみてください。遠回りに見えて、それがいちばん短い道になることが多いはずです。

