エアコンの運転音は比較できる?カタログのdB値が何を測った値かを確認

エアコンのスペック表で運転音を比較しているイメージ 購入・選び方

こんにちは、エアコンラボのアキです。

買い替え候補のエアコンを何台か並べて、カタログの「運転音」の欄を見比べたことはありませんか。dB(デシベル)の数字が並んでいるので、いちばん小さい機種を選べばいちばん静かなはず、と考えたくなりますよね。

ところが各社の仕様表と取扱説明書を実際に読み比べてみると、カタログのdB値は、そのまま横に並べて比べられるとは限らないことが分かります。運転音そのものを載せていない仕様ページもありますし、載っている場合でも「どんな運転状態で測った値なのか」の書き方が各社で違うためです。

この記事では、日本冷凍空調工業会(日冷工)の解説と、各メーカーが公開している仕様表・取扱説明書の原文だけを根拠に、運転音のdB値が何を測った値なのか、どこまで比較できてどこから比較できないのかを整理します。

  • カタログのdB値が「音圧レベル」ではなく「音響パワーレベル」であることの意味が分かる
  • 各社の仕様表に書かれている測定条件の注記の違いが分かる
  • 運転音がそもそも公表されていない場合、どこを見れば載っているかが分かる
  • メーカーをまたいでdB値を比較するとき、何が言えて何が言えないかが分かる

エアコンのスペック表で運転音を比較しているイメージ

エアコンのカタログの「運転音」は何を測った値なのか

比較の話に入る前に、そもそもあのdB値が何を表しているのかを押さえておきます。ここが分かると、後の話がすべてつながります。

運転音の表示には「音圧レベル」と「音響パワーレベル」の2種類がある

日冷工の運転音の測定に関する技術的解説によると、運転音の表示には「任意の位置における音圧を基にした音圧レベル(騒音レベル)」と、「音源の音響エネルギーを基にした音響パワーレベル」の2つが用いられます。

同解説では、音圧レベル(騒音レベル)は「音源から発生した音のある1点における音の大きさ(音圧)を基にした量」で、音源から出る音が同じでも距離や方向などの位置関係によって変化すると説明されています。一方の音響パワーレベルは「音源が発する音響エネルギーの大きさを基にした量」で、距離や方向によらず一義的に決まるとされています。

2013年4月のJIS改正で、表示は音響パワーレベルに変わった

同じ日冷工の解説には、日本のルームエアコンの運転音表示はJIS C 9612:2005に基づく音圧レベル(騒音レベル)だったが、JIS C 9612が改正(2013.4.22)され、音響パワーレベルでの表示に変更されたと明記されています。

日冷工のJIS C 9612の改正に伴うカタログ表示の変更についてのページでは、運転音は2013年4月に改正されたJIS(測定方法の変更;音圧レベル→音響パワーレベル)に基づいて表示するとしたうえで、JIS C 9612:2013の表示以前から掲載されている機種については、従来どおりJIS C 9612:2005に基づく音圧レベルの運転音を表示していると注意書きが添えられています。つまり同じカタログの中に、種類の違う2つのdB値が並んでいる可能性があるということです。

音響パワーレベルは、部屋で聞こえる音量そのものではない

ここが誤解しやすいところです。音響パワーレベルは音源が出すエネルギーの量なので、あなたが部屋の中の「その位置」で耳に感じる音の大きさとは別物です。

富士通ゼネラルの仕様一覧には、運転音について「実際に据え付けした状態で測定すると、周囲の騒音や反響等の影響をうけ、表示数値より大きくなるのが普通です」と書かれています。シャープの取扱説明書にも「運転音の表示は、試験室での測定値です。実際に据え付けた状態での運転音は周囲環境により異なります」とあります。カタログの数字は、あくまで規格で決めた条件で測った基準値だと考えてください。

「JIS C 9612に基づく」でも、書かれている測定条件は各社で違う

ここからが本題です。どのメーカーも「JIS C 9612に基づく」と書いていますが、仕様表に添えられた注記の中身をよく読むと、想定している運転状態の説明が同じではありません。

複数メーカーのエアコンのカタログ仕様表を読み比べているイメージ

富士通ゼネラルは「無響室で室内機を強風運転」と明記

富士通ゼネラルの2026年モデル「ノクリア」Xシリーズ 仕様一覧では、運転音の欄が「運転音(音響パワーレベル)」と表記され、注記に「上記仕様表の数値は、JIS C 9612に基づき測定しています」「運転音はJIS測定条件に基づき、無響室で室内機を強風運転した場合と室外機を定格能力で運転した場合の数値です」とあります。室内機は強風、室外機は定格能力という条件がはっきり書かれています。

日立は「急速パワフル」での値と明記

日立のルームエアコン Xシリーズの仕様は「冷・暖・除湿タイプ仕様一覧表(JIS C 9612:2013)」という見出しで、運転音の欄は「運転音(dB) 音響パワーレベル 内/外」です。注記には「運転音はJIS C 9612により測定。リモコンの設定温度を冷房時で最低設定温度、暖房時で最高設定温度になるように設定し、設定風速を『急速パワフル』で運転した時の値です」と書かれています。

同じ「最大に近い運転」でも、説明の粒度がそろっていない

2社とも音響パワーレベルで、どちらも最大に近い風量での値だという点は共通しています。ただ、片方は「無響室・強風・室外機は定格能力」、もう片方は「設定温度は上限下限まで振って風速は急速パワフル」と、書かれている条件の粒度が違います。読者が確認できるのは各社が書いた注記までなので、両者がまったく同じ状態で測られたと言い切ることはできません

ダイキンの壁掛形RXシリーズの仕様ページには「パワフル設定時はカタログ記載の運転音よりも大きくなります」という注記があり、カタログ値がパワフル設定時の値ではないことが分かります。ここでも各社の前提が同じとは限らないことが見て取れます。

そもそも運転音が載っていない仕様ページ・ラベルもある

比べる以前の話として、運転音がどこにも書かれていないケースがあります。これは実際に各社のページを開いてみて分かったことです。

製品ページの仕様欄に運転音がない例

シャープのVシリーズ 仕様/寸法ページは、期間消費電力量・省エネ基準達成率・APF・能力・消費電力・寸法が並びますが、運転音の項目もdBの数値も掲載されていません。三菱電機の霧ヶ峰 Xシリーズの製品仕様も同様で、寸法・施工情報・省エネ情報・能力・消費電力は載っていますが、運転音の記載はありません。

取扱説明書の仕様欄には載っていることが多い

では公表されていないのかというと、そうではありません。取扱説明書の巻末の仕様欄に載っています。

  • シャープのAY-J22S形などの取扱説明書は、仕様欄に「運転音(dB) 音響パワーレベル」の行があり、室内・室外を冷房と暖房に分けて記載しています。注記は「運転特性はJIS C 9612:2013(日本工業規格)に基づいた数値です」
  • パナソニックのCS-281CX形などの取扱説明書は、仕様欄の表記が「運転音(dB)」のみで、注記は「この仕様値は、JIS C 9612(日本工業規格)に基づいた数値です」。音響パワーレベルか音圧レベルかは仕様欄には書かれていません

候補を絞ったら、製品ページだけでなく取扱説明書のPDFまで開いてみる。これが確実な確認方法です。

統一省エネラベルと省エネ性能カタログに運転音はない

店頭の統一省エネラベルで確認できないかとも思いましたが、こちらにも載っていません。資源エネルギー庁の省エネ性能カタログ2025年版によると、エアコンの統一省エネラベルに表示されるのは次の項目です。

  • 省エネ性能(多段階評価点。5.0〜1.0を0.1きざみで表示し、★の数で表す)
  • 目標年度(2027年度)と省エネ基準達成率
  • APF(通年エネルギー消費効率)
  • 1年間使用した場合の目安電気料金

同カタログのエアコンのページを通して読んでも、運転音のdB値は掲載されていません。運転音への言及は「買い替えのタイミング」の項目に「運転音が高くて、テレビの音量を上げたことがある」と例示されている程度です。省エネラベルは省エネ性能を示すもので、静かさを示すものではないと割り切ってください。

同じシリーズでも、能力が上がると運転音は大きくなる

住宅街に設置された複数のエアコン室外機のイメージ

比較の前提としてもう一つ大事なのが、同じシリーズの中でも冷房能力によって運転音が違うという点です。ここは1つの仕様表の中で条件がそろっているので、安心して読み取れます。

富士通ゼネラル ノクリアXシリーズの冷房時運転音

形名 冷房能力 室内機 室外機
AS-X406T2W 4.0kW 63dB 59dB
AS-X566T2W 5.6kW 65dB 62dB
AS-X636T2W 6.3kW 66dB 62dB
AS-X716T2W 7.1kW 67dB 63dB
AS-X806T2W 8.0kW 68dB 68dB
AS-X906T2W 9.0kW 69dB 71dB

出典は前掲の2026年モデル「ノクリア」Xシリーズ 仕様一覧(冷房時・音響パワーレベル)です。同じシリーズ・同じ測定条件でも、冷房能力4.0kWと9.0kWでは室内機で6dB、室外機で12dBの差があります。

日立のXシリーズでも同じ傾向

日立のXシリーズの仕様でも、冷房時の運転音(音響パワーレベル)は冷房能力2.2kWのRAS-XR2226Sが内59dB/外57dB、9.0kWのRAS-XR9026Dが内73dB/外72dBです。能力が上がるほど数値が大きくなるという傾向は共通しています。

比較するなら畳数クラスをそろえてから

ということは、冷房能力2.2kW(6畳向け)の機種と9.0kW(29畳向け)の機種を並べて「こちらのほうが静か」と言っても意味がありません。省エネ性能カタログ2025年版でも、冷房能力2.2kWは6畳、4.0kWは14畳、9.0kWは29畳と、能力ごとの畳数の目安が示されています。まず設置する部屋に合う能力クラスを決め、そのうえで数値を見るのが順序です。

結局、メーカーをまたいでdB値を比較できるのか

ここまで確認できた事実から、言えることと言えないことを整理します。

原典から言えること・言えないこと

  • 言える:2013年4月以降のカタログの運転音は音響パワーレベルで、音源が出すエネルギーを表した量である(日冷工)
  • 言える:同じ仕様表の中であれば、能力クラスによる運転音の違いは同じ条件で比べられる
  • 言える:表示値は試験室・無響室での測定値で、据え付けた状態では表示より大きくなるのが普通(富士通ゼネラル・シャープ)
  • 言えない:各社の注記は運転状態の説明の粒度が異なり、まったく同じ条件で測られたとまでは確認できない
  • 言えない:運転音を仕様ページに載せていないメーカーがある以上、全社を同じ土俵に並べること自体ができない
  • 言えない:公開された比較試験の結果がないため、「どのメーカーがいちばん静か」という順位づけはできない

私がこの記事で順位表を作らなかったのは、単に遠慮しているからではなく、順位を作れるだけの同条件のデータが公開されていないからです。

音の分類の考え方も各社で違う

ついでに気づいたことがあります。運転中の音をどう分類して説明するかも、各社でかなり違います。

数値の測り方も、音の説明の仕方も各社ばらばらだということです。エアコンの音を扱うときは、比較よりも先に「そのメーカーが何をどう説明しているか」を確認するほうが早道だと感じました。運転音を小さくするために自分でできることは、ベランダのエアコン室外機がうるさい原因と対策エアコンのモーター音がうるさい原因でメーカー公式の案内をまとめています。

エアコンの運転音の比較に関するよくある質問(FAQ)

Q1. カタログのdB値が小さい機種を選べば、部屋の中も静かになりますか?

A. 必ずそうなるとは言えません。2013年4月のJIS改正以降のカタログ値は音響パワーレベルで、音源が出すエネルギーを表した量です。富士通ゼネラルの仕様一覧には、据え付けた状態では周囲の騒音や反響の影響で表示数値より大きくなるのが普通だと書かれています。

Q2. メーカーAとメーカーBのdB値を並べて比べてもいいですか?

A. 参考程度にとどめてください。各社ともJIS C 9612に基づくと書いていますが、仕様表の注記に書かれた運転状態の説明は同じではありません。富士通ゼネラルは無響室での室内機の強風運転と室外機の定格能力運転、日立は設定風速「急速パワフル」での値と説明しており、条件がそろっていると確認できるところまでは書かれていません。

Q3. メーカーの公式サイトに運転音が載っていません。どこを見ればいいですか?

A. 取扱説明書の巻末にある仕様欄を確認してください。シャープのVシリーズや三菱電機の霧ヶ峰Xシリーズは製品ページの仕様に運転音の記載がありませんが、シャープの取扱説明書には「運転音(dB) 音響パワーレベル」の欄があります。各社とも公式サイトから取扱説明書のPDFをダウンロードできます。

Q4. 統一省エネラベルを見れば静かな機種が分かりますか?

A. 分かりません。省エネ性能カタログ2025年版によると、エアコンの統一省エネラベルに表示されるのは省エネ性能の多段階評価点(5.0〜1.0)、目標年度2027年度の省エネ基準達成率、APF、1年間の目安電気料金で、運転音は表示項目に含まれていません。

Q5. 古いエアコンのカタログ値と今のカタログ値を比べてもいいですか?

A. 種類が違う可能性があります。日冷工の説明では、JIS C 9612:2013の表示以前から掲載されている機種は、JIS C 9612:2005に基づく音圧レベルの運転音を表示しているとされています。数値の隣にどちらの規格年が書かれているかを確認してください。

エアコンの運転音は、数字を比べる前に「何を測った値か」を確かめる

エアコンの運転音のdB値は、2013年4月のJIS C 9612改正以降は音響パワーレベルで表示されています。音源が出すエネルギーを表した量なので、部屋の中で耳が感じる音量とは別物です。

そして各社の仕様表を読み比べると、測定条件の注記の書き方は同じではなく、そもそも運転音を仕様ページに載せていないメーカーもあります。だからこそ、メーカーをまたいだ順位づけはできません。できるのは、同じシリーズの中で能力クラスによる違いを読むことと、候補機種の取扱説明書まで開いて、その数値がどんな条件で測られたのかを自分で確かめることです。数字を比べる前に、その数字が何を測った値なのかを確認する。遠回りに見えて、これがいちばん確実だと思います。

メーカーによって音の分類がどう違うのかは、メーカー5社の音の一覧を並べて正常か確認した記事にまとめています。あわせてどうぞ。

タイトルとURLをコピーしました