エアコンの霜取り運転で電気代は上がる?公表値をメーカー原典で確認

冬に屋外に置かれたエアコンの室外機と薄い霜 掃除・お手入れ・メンテナンス

こんにちは、エアコンラボのアキです。

冬の暖房中に急に温風が止まり、室内機のランプが点滅しはじめる。数分から十数分で勝手に元へ戻る。あれが霜取り運転です。「故障ではありません」という説明はあちこちで見かけますが、気になるのはその先ですよね。止まっている間、電気はどれくらい使っているのか。ひと冬でいくら増えるのか。

先に結論をお伝えします。霜取り運転中の消費電力を数値で公表しているメーカーは、今回調べた範囲では見つかりませんでした。ですので「霜取りで電気代が◯%上がる」「1回あたり◯円」という数字を見かけたら、その根拠がどこにあるのかを一度確認してみてください。この記事では、代わりにメーカーと業界団体が実際に公表している数値だけを集めて、そこから何が言えて何が言えないのかを整理します。

  • 霜取り運転中にエアコンが何をしているのか(各社の記載)
  • 各社が公表している霜取り運転の所要時間と表示
  • カタログの期間消費電力量が、どんな条件で計算された数字か
  • 霜取りの回数と時間を減らすためにメーカーが案内している方法

冬の屋外に設置されたエアコンの室外機

霜取り運転はエアコンが何をしている時間なのか

電気代の話に入る前に、その時間にエアコンが何をしているかを押さえておきます。ここが分かると、後半で「なぜ数字が出ないのか」という話が腑に落ちるはずです。

室外機に付いた霜を、熱交換器を暖めて溶かしている

富士通ゼネラルは霜取り運転を「室外機に付いた霜を溶かす機能」と説明しています。同社によれば、エアコンは暖房時に室外機から冷たい空気を出しているため、外気温度が低く湿度が高い状態で暖房運転を続けていると室外機に霜が付き、霜が付くと暖房能力が低下するので、室外機の熱交換器を暖めることで霜を溶かすとしています。さらに「特に積雪時などは霜が付きやすくなるため、より頻繁に霜取り運転に入ることがあります」とも書かれています(富士通ゼネラル「霜取り運転とはどのような機能ですか?」)。

では熱交換器をどうやって暖めているのか。ダイキンは大雪・寒波時の症状をまとめたページで、霜取り運転中に「冷媒の流れが切り替わる『プシュー』や、冷媒が流れる『シャー』『ポコポコ』という音が聞こえる場合がありますが故障ではありません」と案内しています(ダイキン「大雪、積雪、寒波のときの症状(ルームエアコン)」)。つまり、暖房のために室内へ運んでいた熱の向きを切り替えて、室外機側の霜を溶かすことに使っている時間だということですね。冷媒を止めて休んでいるわけではありません。

霜取り中は暖房が止まる。所要時間は各社が公表している

「暖房が止まるのか」については、各社ともはっきり書いています。富士通ゼネラルは「霜取り運転時は、室内機、室外機のファンが停止し、暖房運転が一時停止します」「冷たい風が出たり、室温が下がる場合もあります」と明記しています。同社では霜取り中、運転ランプのみが7秒点灯・2秒消灯という遅い点滅をするとのことです。日立は上下風向板が開いて水平になるが風は出ないとしており、ダイキンは室内機から暖かい風が出なくなると書いています。

所要時間はメーカーによって幅の示し方が違います。原典に当たって確認できたものを並べます。

メーカー 公表されている所要時間 そのときの表示・動作
ダイキン 約3〜10分 室内機から暖かい風が出なくなる
日立 5〜22分間(霜の付き具合による) 運転ランプが点灯と減光を繰り返す。上下風向板は水平で風は出ない
富士通ゼネラル 通常1回につき4〜15分程度 運転ランプが7秒点灯・2秒消灯の遅い点滅。室内外のファンが停止

日立はあわせて25分以上経過しても運転ランプの点滅が止まらない場合は正常に動作していない可能性があるとして、販売店または修理相談窓口への点検相談を案内しています(日立「暖房運転時、運転ランプが点滅します。」)。なお日立の同じページでは、暖房を入れた直後にランプが点滅するのは霜取りではなく2〜3分間の予熱運転だとも説明されています。冷たい風を出さないよう室内機の熱交換器を先に暖めている時間ですね。ランプ表示から故障かどうかを切り分ける話はエアコンの電気代が急上昇は故障?メーカー公式の切り分け手順にまとめています。

「霜取り中の消費電力」の公表値は見つかりませんでした

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

メーカーがカタログに載せているのは別の数字

今回確認したのは、ダイキン・日立・富士通ゼネラル・三菱電機・パナソニックの5社の家庭用ルームエアコンについて、霜取り運転を扱ったFAQ、仕様表、暖房機能の特長ページ、それに日本冷凍空調工業会のカタログ表示の解説ページです。この範囲では、霜取り運転中に何W消費するのか、1回の霜取りで何kWh使うのかを示した数値は1つも見つかりませんでした。公表されているのは、あくまで次のような数字です。

  • 定格消費電力(定格の運転条件で測ったときの消費電力)
  • 最小・最大の消費電力(能力の可変幅を示す値)
  • 期間消費電力量(1年分の目安をまとめた1つの数値)
  • 通年エネルギー消費効率(APF)

霜取り運転は外気温と湿度、室外機の着霜量によって発生タイミングも継続時間も変わります。所要時間ですら日立が「5〜22分間」と4倍以上の幅を持たせているくらいですから、消費電力を1つの代表値として示すのが難しいのだろうと想像はできます。ただ、それはあくまで想像で、公表されていない以上「霜取り中は◯W」と書くことはできません

「1回◯円」を計算するには、足りない値が多すぎる

電気代は「消費電力(kW)×時間(h)×電力量単価(円/kWh)」で計算します。単価のほうは公表値がありますし、時間も上の表のとおり各社が示しています。つまり3つのうち2つは手に入るのに、真ん中の消費電力だけが分からない状態なんですね。

ここで消費電力を自分で決めてしまうと、掛け算の結果はもっともらしい数字に見えても、実質的には作り話になります。私はこの記事で「霜取り1回あたり◯円」を出すのをやめました。出せないものを出す代わりに、公表されている条件から確実に言えることを次の章で整理します。

もしご自宅の実際の増減を知りたい場合は、電力会社のスマートメーター経由の使用量表示や、エアコン本体の消費電力量モニター機能(搭載機種のみ)で、霜取りが多い日とそうでない日を比べるのがいちばん確実です。外気温と湿度も一緒に控えておくと、条件の違いが見えてきます。

カタログの期間消費電力量は霜取りをどう扱っているか

「カタログの期間消費電力量には霜取りの分も入っているの?」という疑問は当然出てきます。ここは日本冷凍空調工業会(日冷工)の説明を確認しました。

算出条件は東京モデル。暖房期間は11月8日〜4月16日

日冷工によれば、期間消費電力量はJIS C 9612:2013に基づくAPFから算出された試算値で、次の条件が前提になっています(日本冷凍空調工業会「期間消費電力量を省エネ性の目安にお選びください」)。

項目 算出基準
外気温度 東京をモデルとしている
設定温度 冷房時27℃/暖房時20℃
期間 冷房期間5月23日〜10月4日/暖房期間11月8日〜4月16日
時間 6:00〜24:00の18時間
住宅 JIS C 9612による平均的な木造住宅(南向)
部屋の広さ 冷房能力2.2kWで6畳、2.8kWで10畳、4.5kWで14畳など機種に見合った広さ

暖房期間の定義もかなり細かく書かれていて、「標準気象データの日平均気温が14℃以下となる3回目の日から、日平均気温が14℃以下である最終日より2日前の日まで」とされています。つまり期間消費電力量は、東京の気象データで暖房を使う約5か月半を通した消費電力量の目安だということです。

霜取り分を取り出した数字は公表されていない

重要なのはここからです。日冷工のこのページにも、JIS改正に伴うカタログ表示の解説ページにも、霜取り運転に関する記載はありませんでした。期間消費電力量は暖房期間全体をひとまとめにした1つの数値なので、そのうち霜取りに使われた分だけを取り出した値は、これらのページには見当たりませんでした。「霜取り分だけの数字」は、少なくとも読者が普通にたどり着けるカタログ表示の解説の側には用意されていない、ということです。

そして日冷工は同じページで「実際には地域、気象条件、ご使用条件などにより電力量が変わります」と明記しています。外気温度が東京モデルである以上、日本海側や寒冷地のように、低温かつ高湿度の日が東京より多い地域の霜取り頻度は、この数値の前提には入っていません。カタログ値より冬の電気代が高く感じる、という体感には、こうした前提の違いが関係している可能性があります。ただし「何%高くなる」という数字は公表されていないので、そこは断定できません。省エネ基準そのものの読み方はエアコンは古いと電気代が高い?省エネ基準の原典で検証で、外気温と暖房効率の関係はエアコンの電気代と灯油代はどっちが安い?で扱っています。

霜取り中も暖房を止めない機種は実在する

霜取り中に暖房が止まらない構造を採用した機種もあります。三菱電機は寒冷地向けの「ズバ暖 霧ヶ峰」で、室外機の熱交換器を上下に分け、半分は霜取りをしながら、残り半分で暖房運転を続けるため霜取り中でも暖房運転が止まらないと説明しています。同社の注記によると、この確認はMSZ-FD4026S・ZD4026Sについて自社の環境試験室(14畳)で外気温2℃・外気湿度84%・設定温度23℃・風速「自動」という条件で行われ、回路の作動中の平均室温が作動前5分間の平均から低下しないことを確認した、というものです。あわせて「環境条件により室温が低下する場合があります」とも書かれています(三菱電機「ズバ暖 霧ヶ峰」)。

ここで注意したいのは、これが特定条件下での試験室の結果であって、電気代が安くなることを示した数字ではないという点です。室温が下がりにくいことと、消費電力量が減ることは別の話ですし、消費電力の比較値は公表されていません。快適性の話として受け取るのが正確だと思います。

霜取りの回数と時間を減らすためにメーカーが案内していること

暖房を使う部屋の壁に取り付けられた壁掛けエアコンの室内機

数字は出せませんが、メーカーが公式に案内している対処はあります。ここは出典がはっきりしているので、そのままお伝えします。

ダイキンは「暖房の設定温度を1〜2℃下げる」を案内している

ダイキンは、霜取り運転の回数がいつもより多い場合や時間が長い場合の対処として、暖房の設定温度を1〜2℃下げた運転を試すよう案内しています。理由も書かれていて、「エアコンの能力を抑えることで霜の付く量を抑えて、霜取り運転の頻度や時間を軽減できる可能性があります」とのことです(ダイキン「暖まらない、暖かい風がでない(ルームエアコン)」)。同社は外気温度が低くなりエアコンの能力が大きくなると熱交換器に霜が付きやすくなる、とも説明しています。

設定温度を下げること自体の省エネ効果については、日冷工が暖房時は1℃低めで約10%の省エネという目安を示しています。霜取りの軽減とは別の効果ですが、方向は同じですね。

霜取り運転そのものは止められない

富士通ゼネラルは「霜取り運転をしないように設定することはできません」「霜取り運転を中止することはできません」と、2つのFAQで明確に否定しています(富士通ゼネラル「霜取り運転をしないように設定できますか?」)。リモコン操作で回避する方法を探すのは、残念ながら時間の無駄ということになります。

できるのは、暖房そのものの負荷を下げることです。日冷工が挙げている使い方の目安をまとめます。

  • フィルターは2週間に1回掃除する。シーズンを通じて掃除せずゴミやホコリが詰まると電気が約5〜10%のムダ使いになる
  • 室外機の吹出口に物を置いてふさぐと、暖冷房効果を弱め電気のムダになる
  • 冬の日中は日光を入れ、夜間はカーテン・ブラインドで熱の漏れを防ぐ
  • 風向板は暖房で下向きにする。風量は「微風」固定より「風量自動モード」がおすすめ
  • 就寝時に運転を停止し、起床の1時間前に運転すれば、一晩中運転する場合に比べ省エネ

出典は日本冷凍空調工業会「シーズン中は…使い方ひとつで電気のムダが省けます」です。同ページには「記載されている数値は使用環境や機種によって異なりますので、ひとつの目安とお考えください」という但し書きも付いています。

室外機の霜を自分で落とそうとしないこと

これは安全に関わるので、メーカーの表現のまま書きます。富士通ゼネラルは霜取り運転の解説ページで、「霜を溶かすために室外機にお湯や水をかけないでください」と注意書きを掲載しています。霜を早く落としたい気持ちは分かりますが、ここは自己判断で手を出さないでください。

一方、雪への対処はメーカーが具体的に案内しています。ダイキンは、積もった雪が室外機の吹き出し口や吸い込み口をふさいでいると室内機から暖かい風が出ないとして、「室外機周辺の雪を取り除いてください」と案内しています。また、雪や氷が室外機内部に入り込んでファンが回らなくなり「E7」エラーが出る場合については、運転を停止した状態で日中に気温が上がり自然解凍されるのを待ち、その後エアコン専用ブレーカーを切って約1分後に再度電源を入れるという手順を示しています。

整理すると、メーカーが案内しているのは「室外機の周辺の雪をどける」ことと「自然解凍を待つ」ことです。熱交換器に付いたそのものに、お湯や水をかけたり工具で叩いたりする方法は案内されていません。

霜取り運転と電気代のよくある質問

読者からよく届く疑問への回答

Q1. 霜取り運転中はエアコンを止めたほうが節約になりますか?

A. 霜取り中の消費電力が公表されていないため、止めた場合と続けた場合のどちらが安いかを数値で比較することはできません。ただし富士通ゼネラルは「運転を停止した際に室外機に霜が付いていると、自動的に霜取り運転を行います」と説明しており、停止しても霜取り自体は行われる場合があります。日立も、暖房運転を停止した後に霜取りが動作する場合は上下風向板を閉じたまま霜取り運転をすると案内しています。

Q2. 霜取りが何分続いたら異常ですか?

A. 公式に目安を示しているのは日立で、25分以上経過しても運転ランプの点滅が止まらない場合は正常に動作していない可能性があるとして点検相談を案内しています。ほかのメーカーは所要時間の目安(ダイキン約3〜10分、富士通ゼネラル4〜15分程度)を示していますが、点検の判断ラインまでは示していません。判断に迷ったら、お使いの機種の取扱説明書と修理相談窓口で確認するのが確実です。

Q3. 霜取り運転のときに室外機から出る湯気や水は大丈夫ですか?

A. 富士通ゼネラルは、暖房運転をすると室外機の熱交換器に霜が付くため定期的に霜取り運転をし、このとき溶けた水分が室外機底面から出てきたり、湯気となって背面や吹出口から出てくる場合があるとして、故障ではないと説明しています。

Q4. 寒冷地向けモデルに買い替えると霜取りの電気代は減りますか?

A. 減るかどうかを判断できる公表値は見つかりませんでした。三菱電機のズバ暖 霧ヶ峰のように霜取り中も暖房を止めない構造の機種はありますが、同社が公表しているのは自社試験室での室温の維持に関する内容で、消費電力量を比較した数値は同ページには載っていません。パナソニックのエネチャージシステム(蓄えた熱を霜取りに使い、霜取り中も暖房を止めない仕組み)の解説ページも確認しましたが、こちらも消費電力の記載はありませんでした。買い替えを検討する際は、カタログの期間消費電力量とAPFで比べるのが筋の通ったやり方です。

まとめ:数字がないことを、そのままお伝えしました

霜取り運転は、外気温度が低く湿度が高いときに室外機に付いた霜を溶かす運転で、その間は暖房が一時停止します。所要時間はダイキンが約3〜10分、日立が5〜22分間、富士通ゼネラルが4〜15分程度と公表しており、日立は25分以上続く場合の点検相談を案内しています。ここまではメーカーの原典で確認できました。

一方で、霜取り中の消費電力そのものは、今回確認した5社(ダイキン・日立・富士通ゼネラル・三菱電機・パナソニック)のどのページにもありませんでした。カタログの期間消費電力量は東京の気象データで暖房期間11月8日〜4月16日を通した目安であり、そこから霜取り分を切り出した数値も、日本冷凍空調工業会の解説ページには載っていません。ですから「霜取りでひと冬◯円増える」という数字は、この記事では出せませんでした。出せない数字を出さないことのほうが、あなたの判断の役に立つと考えています。

できることは、ダイキンが案内している設定温度を1〜2℃下げる運転を試すこと、フィルターと室外機まわりを整えて暖房そのものの負荷を下げること、そして室外機の霜に自分で手を出さないことです。寒い季節の暖房と、落ち着いて付き合っていただければ嬉しいです。

そもそもエアコンの電気代は何で決まり、カタログの金額がどんな条件で測られた値なのか。その土台は、エアコンの電気代がどの数字から出ているかでまとめています。あわせてどうぞ。

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