こんにちは、エアコンラボのアキです。
「実家のエアコンが汚れているけれど、訪問介護のヘルパーさんにお願いできるのだろうか」。そう考えて検索すると、「エアコンの分解清掃はできないこと」と書いた一覧がたくさん出てきます。ただ、そこに出典が添えられていることは、ほとんどありません。
そこで今回は、介護保険の訪問介護について国が出している通知そのものを取り寄せて、「エアコンの掃除」がどう書かれているのかを1件ずつ確かめました。結論から言うと、国の通知にも、確認した自治体の資料にも、「エアコン」という言葉は一度も出てきませんでした。それでも読者の方が知りたい線引きは、別の形できちんと引けます。その手順をそのままお見せします。
- 訪問介護で頼める家事の範囲を、法令と通知の原文で確認する
- 「頼めない家事」の例示一覧に、エアコンが入っているかを確かめる
- メーカーが利用者側に認めているお手入れの範囲と突き合わせる
- 誰に頼めるのか、誰が決めるのかを整理する

訪問介護で頼める家事の範囲は、法令と通知に書かれています
まず、ヘルパーさんが何をする人なのかを、根っこの条文から順にたどります。ここを飛ばすと、ネット上の「できること・できないこと一覧」がどこから来ているのかが分からないままになってしまうためです。
法律と省令が挙げているのは「掃除等の家事」まで
訪問介護は、介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第2項で定義されています。条文は「入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって、厚生労働省令で定めるもの」と書いているだけで、中身は省令に投げています(e-Gov法令検索・介護保険法)。
その省令が介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第5条です。ここで初めて「掃除」という言葉が出てきます。
入浴、排せつ、食事等の介護、調理、洗濯、掃除等の家事(…これらの者が自ら行うことが困難な家事であって、居宅要介護者の日常生活上必要なものとする。…)、生活等に関する相談及び助言その他の居宅要介護者に必要な日常生活上の世話とする
— 介護保険法施行規則 第5条
ポイントは、「掃除等の家事」のうしろに「日常生活上必要なもの」という条件が付いていることです。掃除ならなんでもよいのではなく、その人が毎日を送るために要る掃除かどうかで絞られます。この一文が、あとに出てくる線引きの土台になります。
掃除の中身を例示しているのが「老計第10号」です
では日常生活上必要な掃除とは具体的に何か。それを行為ごとに並べたのが、平成12年3月17日付の「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(老計第10号)という厚生省の課長通知です。存在するのか確かめたところ、実在しました。平成30年3月30日の老振発0330第2号で一部改正され、平成30年4月1日から適用されており、厚生労働省が改正後の全文を新旧対照表の形で公開しています。
この通知の「2 生活援助」の中で、掃除として挙げられているのは次の3つだけです。
- 居室内やトイレ、卓上等の清掃
- ゴミ出し
- 準備・後片づけ
あわせて生活援助そのものの定義も、「身体介護以外の訪問介護であって、掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助」「本人の代行的なサービスとして位置づけることができ、仮に、介護等を要する状態が解消されたとしたならば、本人が自身で行うことが基本となる行為」と書かれています(厚生労働省・老振発0330第2号(老計第10号 新旧対照表))。
老計第10号に「エアコン」は一度も出てきません
全文を通して検索しましたが、「エアコン」「冷房」「空調」という語は1か所もありませんでした。掃除の3項目にも、その前後にもありません。
唯一それらしいのは、身体介護のサービス準備として挙げられている「1-0-2 環境整備 換気、室温・日あたりの調整、ベッドまわりの簡単な整頓等」という一文です。つまりこの通知がエアコンについて触れていると読めるのは、「室温を整えること」までであって、本体を掃除する話は出てきません。「載っていない」という事実は、このあとの判断にそのまま効いてきます。
「頼めない家事」の例示一覧にも、エアコンはありませんでした
次は逆側です。介護保険で対応できない家事の例は、別の通知にまとまっています。上位の解説記事が「エアコンの分解清掃はできないこと」と書くとき、暗に参照しているのがこの一覧です。
老企第36号が示しているのは、3つの区分だけです
介護報酬の取扱いを示した平成12年3月1日付の老企第36号には、生活援助に含まれない行為として次の3区分が挙げられています。厚生労働省が公開している原文の該当箇所を引用します。
① 商品の販売や農作業等生業の援助的な行為
② 直接本人の援助に該当しない行為 ・主として家族の利便に供する行為又は家族が行うことが適当であると判断される行為
③ 日常生活の援助に該当しない行為 ・訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為 ・日常的に行われる家事の範囲を超える行為
— 厚生労働省・老企第36号(実施上の留意事項について)
ここには具体的な作業名がありません。老企第36号は続けて、具体的な取扱いは平成12年11月16日の老振第76号を参照するように、と書いています。
具体例は老振第76号の別紙。全項目を並べます
その老振第76号「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」の別紙が、ネット上の一覧の原型です。項目は全部で12個あります。
| 区分 | 別紙に挙げられている行為 |
|---|---|
| 1.「直接本人の援助」に該当しない行為 | 利用者以外のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し/主として利用者が使用する居室等以外の掃除/来客の応接(お茶、食事の手配等)/自家用車の洗車・清掃等 |
| 2-(1) 訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為 | 草むしり/花木の水やり/犬の散歩等ペットの世話等 |
| 2-(2) 日常的に行われる家事の範囲を超える行為 | 家具・電気器具等の移動、修繕、模様替え/大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ/室内外家屋の修理、ペンキ塗り/植木の剪定等の園芸/正月、節句等のために特別な手間をかけて行う調理等 |
出典は国立社会保障・人口問題研究所が収録している老振第76号の全文です。同じ別紙は、益城町が公開している訪問介護の判断資料にも「生活援助」表記で掲載されており、内容が一致することを確認しました。
ご覧のとおり、この12項目にエアコンの掃除はありません。いちばん近いのは「家具・電気器具等の移動、修繕、模様替え」ですが、これは動かす・直す・配置を変える行為であって、掃除ではありません。「大掃除」も、対象が家全体の年中行事であってエアコンを名指ししたものではありません。
この一覧は限定列挙ではない、と自治体が明記しています
ではエアコンは載っていないから頼めるのか、というとそうはなりません。いわき市が公開している生活援助サービスの質問集は、同じ一覧を掲げたうえで「ここで示しているのは例示であって、これ以外でも日常的な家事の範囲を超えるものは算定対象外です」と注記しています。
同じ資料には、判断の物差しが読み取れる回答もありました。雪かきを生活援助で頼めるかという問いに対して、「年に1回あるかどうか分からないサービスを生活援助サービスに位置付けて介護報酬で請求することはできません。年1回の大掃除や、庭の草むしりと同様の扱いです」と答えています。名前が載っているかどうかではなく、その作業が日常的に繰り返される家事かどうかで見る、という考え方です。
メーカー側の線は、制度の線よりもっと手前にあります
ここまでは制度の話でした。ところがエアコンの場合、制度を検討する前にもう一本、別の線が引かれています。メーカーが「利用者側がやってよい範囲」を決めているからです。
ダイキンは範囲を1行で書いています
自分でできるのは、フィルター類と外から見える前面パネルやフラップのみ。
— ダイキン「自分でできるエアコンクリーニングの範囲は?」
同じページには、お手入れに「次のものは使用しない」として6種類が名指しで挙がっています。40℃以上のお湯、ベンジン・ガソリン・シンナーなどの揮発性のもの、みがき粉、綿棒、タワシなどの硬いもの、消臭剤などのスプレーです。ヘルパーさんに頼むかどうかに関係なく、この6種類は使えません。
ダイキンのよくあるご質問のほうは、さらに範囲の外側を明記しています。「エアフィルターをはずした本体内部(アルミフィン部分など)は、お客様でお手入れすることができません」「室内機の吹き出し口などエアコン内部は、お客様でお手入れすることができません」。フィルターの手入れは「約2週間に1度」、ダストボックスは「お使いの機種により異なり3年〜10年」と頻度も示されています。
フィルターは「日常的に繰り返す家事」の側にあります
この「約2週間に1度」という数字は、当ブログでメーカー6社の公式回答を並べて確かめた記事でも、自動お掃除機能のない機種について5社が一致していました。年1回の大掃除とは頻度の桁が違います。
つまりフィルターや前面パネルの手入れは、先ほどのいわき市の物差しに当てはめれば、日常的に繰り返される家事の側に入る作業だということになります。効果の面でも数字が公表されていて、こちらはフィルター掃除の効果を公表値で比べた記事にまとめています。
内部の洗浄は、ヘルパーでも家族でも範囲外です
反対に、熱交換器や送風ファンを洗う作業は、介護保険の話をする前に決着がついています。製品評価技術基盤機構(NITE)は、注意喚起資料の注記で内部洗浄を次のように定義しています。
本資料における内部洗浄とは、液状の洗浄剤などを噴霧し機器内部の汚れなどを洗い流すことを指します。各機器の取扱説明書に記載されているフィルターなどの手入れは該当しません。
— NITE「『無謀なDIY』が招く危険 〜エアコンと除湿機の事故〜」
そして日立は、内部洗浄を依頼する場合の作業側の条件を4つ公表しています。電気部品・貫流ファン・ファンモータに洗浄剤を付けないこと、樹脂材をおかさない洗浄剤を使うこと、高温高圧スチームでの洗浄を行わないこと、十分にすすぐこと。条件が事業者向けに別立てで書かれていること自体が、この作業が利用者側の手入れの外にあることを示しています。この境界そのものについてはエアコン掃除のDIYの線引きを扱った記事で詳しく整理しています。
結局、誰に頼めて、誰が決めるのか
2本の線を重ねると、作業ごとの担当が見えてきます。ここまでに確認した原典だけで表にしました。
| 作業 | メーカーが利用者側に認めているか | 介護保険の生活援助での扱い |
|---|---|---|
| 居室・トイレ・卓上の清掃 | — | 老計第10号に例示あり |
| エアフィルターの掃除 | 認めている(約2週間に1度) | 通知に記載なし。個別の判断 |
| 前面パネル・フラップの拭き取り | 認めている | 通知に記載なし。個別の判断 |
| ダストボックスの手入れ | 認めている(3年〜10年) | 通知に記載なし。個別の判断 |
| 熱交換器・送風ファンなど内部の洗浄 | 「お手入れすることができません」 | そもそも利用者側の手入れの外 |
| 室外機の分解を伴う手入れ | 認めていない | 同上 |
迷ったら市町村に確認する、と通知が定めています
表の真ん中の列が「個別の判断」になっているのは、ごまかしではありません。老振第76号は、事業者側の手順としてこう書いています。求められた内容が給付対象として適当かどうか「判断がつかない場合には、保険者(市町村)に確認を求めること」。
つまり、national な一覧で白黒がつかないケースは制度としてあらかじめ想定されていて、そのときの決め手は住んでいる市区町村です。ケアマネジャーに相談してから保険者に確認が上がる、という順序になります。ネット上の一覧を見て「頼めるはず」「断られたのはおかしい」と考えるより、担当のケアマネジャーに、どの部品をどのくらいの頻度で、という具体の形で伝えるほうが早いと思います。
保険の外で頼む道も、通知に書かれています
介護保険の対象外だった場合の受け皿についても、同じ老振第76号が触れています。保険給付の範囲外のサービスを「保険給付対象サービスと明確に区分し、利用者の自己負担によってサービスを提供することは、当然、可能である」。相談先の例としては、市町村が実施する軽度生活援助事業、配食サービス等の生活支援サービス、NPO法人などの住民参加型福祉サービス、ボランティアの活用を挙げています。
さらに平成30年9月28日の通知が、訪問介護と保険外サービスを組み合わせる手順を具体化しました。訪問介護の前後や合間であれば保険外サービスを提供でき、そのかわり「保険外サービスの提供時間は、訪問介護の提供時間には含めないこと」、そして「訪問介護と保険外サービスを同時一体的に提供することは認めない」と定めています(厚生労働省・介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて)。
ただし注意したいのは、自費に切り替えてもメーカーの線は動かないということです。内部の洗浄はお金の出どころの問題ではなく、作業そのものが利用者側の手入れの外にあるという話でした。フィルターより奥をどうするかは、この記事の範囲を越えます。手が届かない部分の考え方はエアコン掃除で手が届かないときの記事、送風ファンについてはエアコンのローラー(送風ファン)掃除の記事にまとめました。
確認できなかったこと、よくある質問、まとめ
今回、原典で確認できなかったこと
調べて見つからなかったことも、そのまま書いておきます。
- 「エアコン」という語は、老計第10号・老企第36号・老振第76号の別紙のいずれにもありませんでした。「冷房」「空調」も同様です
- 今回確認した自治体資料(いわき市・益城町)にも、エアコンの記載はありませんでした
- フィルター掃除を生活援助として認める、あるいは認めないと明示した国の通知は見つかりませんでした
- 「健康被害のおそれがあれば特例として対応できる」という趣旨の記述は、確認した6つの資料のどれにもありませんでした。「特例」「健康被害」という語自体が1か所もありません
- エアコンクリーニングの費用相場、家事代行の料金の公的な公表値は見つかりませんでした。当ブログの掃除まわりの記事でも同じ結論です
- 業者による内部クリーニングの推奨頻度も、メーカー・公的機関のいずれにも見当たりませんでした
よくある質問
Q1. ヘルパーさんに断られました。制度で禁止されているのですか?
A. エアコンの掃除を名指しで禁止した通知は見つかりませんでした。ただし生活援助はケアプランに位置付けられた内容を提供するもので、その場で作業を追加する仕組みにはなっていません。また老振第76号は、判断がつかない場合は事業者が保険者(市町村)に確認するよう定めています。断られたこと自体は、ルールに沿った対応である可能性が高いです。
Q2. フィルターの掃除だけならお願いできますか?
A. 可否をこの記事で断定することはできません。通知に記載がなく、最終的にはケアマネジャーと保険者の判断になるためです。材料としては、メーカーが利用者側の作業として認めていること、頻度が約2週間に1度で日常的な家事に近いことの2点を、具体的に伝えるとよいと思います。
Q3. 自費なら内部まで掃除してもらえますか?
A. 保険外サービスとして家事を頼む枠組みは通知に定められています。ただし、熱交換器や送風ファンの洗浄はメーカーが利用者側の手入れの外に置いている作業で、費用の負担者が変わっても位置づけは変わりません。日立が内部洗浄の作業条件を4つ公表しているように、この領域には別の前提が必要です。
Q4. 同居している家族の部屋のエアコンはどうなりますか?
A. 老振第76号の別紙が「主として利用者が使用する居室等以外の掃除」を、直接本人の援助に該当しない行為として挙げています。これは部屋そのものの話ですが、考え方は同じです。なお平成30年9月28日の通知は、同居家族の部屋の掃除を保険外サービスとして訪問介護の前後に行うことは可能としています。
Q5. 家族が帰省したときに自分でやるなら、どこまでできますか?
A. 範囲は制度ではなくメーカーの案内で決まります。ダイキンは「フィルター類と外から見える前面パネルやフラップのみ」とし、40℃以上のお湯や綿棒など使わないものを6種類挙げています。お手入れの前に運転を停止して電源プラグを抜くかブレーカーを切る、という手順も共通です。
まとめ
エアコン掃除をヘルパーさんに頼めるかどうかは、通知を読めば一発で分かる、という性質の問いではありませんでした。老計第10号にも老振第76号の別紙にも、エアコンという言葉は出てこないからです。世の中の一覧に「エアコンの分解清掃はできない」と書かれているのは、原典にそう書いてあるからではなく、「日常的に行われる家事の範囲を超える行為」という区分から各社が読み取った結果だと考えられます。
そのうえで、判断の材料ははっきりしています。フィルターと前面パネルは、メーカーが利用者側に認めていて、頻度も約2週間に1度と日常的な家事に近い。内部の洗浄は、メーカーが利用者側の手入れの外に置いている。そして介護保険で頼めるかどうかの最終判断は、ケアマネジャーと市区町村にあります。「エアコンを掃除してほしい」ではなく「フィルターを2週間に1度、掃除機でホコリを取ってもらえないか」と部品と頻度で伝えると、相談が具体的になるはずです。

