こんにちは、エアコンラボのアキです。
エアコンの効きが落ちてきて、ネットで見かけた「ガス漏れ止め剤」を試そうか迷っていませんか。数千円で直るなら試したい、でもデメリットが気になる。その迷いはもっともだと思います。
先に結論を言うと、確認できたデメリットは大きく3つです。1つ目は、業界団体の日本冷凍空調工業会が、漏れ止め剤(冷媒漏洩封止剤)の注入を「改造」の例として挙げていること。改造された製品について、メーカーは保証も部品供給も復旧対応もしないとしています。2つ目は、手放すことになる保証が、本体より長い5年保証の付いた冷媒系統だという点。3つ目は、漏れの原因として報告されている配管の腐食や疲労そのものは残る点です。
一方で「効果」のほうは、今回調べた範囲では効果や持続期間を検証した一次情報が見つかりませんでした。この記事では、確認できた文書の中身と、確認できなかった範囲を分けてお伝えします。
- ガス漏れ止め剤の注入が「改造」とされる根拠と、保証・復旧対応への影響
- 漏れ止め剤の効果について、確認できたことと確認できなかったこと
- 冷媒ガスが漏れる原因として報告されている腐食と疲労
- 使うかどうかを決める前に、確認しておきたいこと

エアコンの漏れ止め剤の主なデメリット
まずはいちばん検索されている「デメリット」から。推測ではなく、公開されている文書にそのまま書かれている内容です。
業界団体は注入を改造の例に挙げている
日本冷凍空調工業会は、2023年12月に「改造はダメ!!」という警告文を公開しています。そこに添えられたQ&Aで、何が「改造」に当たるかが列挙されていて、その4番目が次の記述です。
メーカーが指定していない冷媒や冷凍機油への変更、添加剤や蛍光式冷媒漏洩検知剤や冷媒漏洩封止剤等を注入すること。
漏れ止め剤にあたる「冷媒漏洩封止剤」が、名指しで改造の例として挙げられています。同じQ&Aでは、改造が行われた製品についてメーカーは保証できず、メンテナンス部品の供給や、不具合が起きたときの復旧対応も行わないとしています。
さらに、故障や事故が起きたときの責任は、製品の保有者であるユーザー側が負うことになる、とも書かれています。つまり一番のデメリットは、薬剤が効くかどうか以前に、メーカーのサポートの外に出てしまうことなんですね。
出典: 一般社団法人 日本冷凍空調工業会「改造はダメ!!」(2023年12月公開の警告文と改造禁止に関するQ&A)
手放すのは5年の冷媒系統の保証
では、その保証はもともとどこまでカバーしていたのでしょうか。ダイキンのルームエアコンを例に見てみます。
| 対象 | 期間 |
|---|---|
| 本体 | お買い上げ日から1年 |
| 冷媒系統部分(現地配管を除く圧縮機、熱交換器、室内外ユニットの内配管) | 5年 |
| 補修用部品の保有期間 | 製造打切り後10年 |
本体1年に対して、冷媒系統だけは5年と長めに設定されています。日立のルームエアコンも、本体1年・冷媒回路5年で、冷媒回路には圧縮機・冷却器・凝縮器・本体配管などが含まれると説明しています。漏れ止め剤を入れる先は、まさにこの5年保証の対象部分です。
また日立は、保証期間中でも無料修理の対象外になる例として「使用上の誤り、または改造や不当な修理による故障および損傷」を挙げています。このページ自体は漏れ止め剤に触れていませんが、先ほどの工業会の定義と並べると、注入後の故障を無料で直してもらえる見込みは低いと考えておくのが無難です。条件はメーカーごとに違うので、手元の保証書も一度読んでおいてください。
出典: ダイキン工業「保証について(ルームエアコン)」 / 日立「ルームエアコンの保証期間を知りたいです。」
修理や回収の現場への影響は確認できず
「漏れ止め剤を入れた機械は、修理や冷媒の回収のときに困る」という話も見かけます。ただ、回収機器や修理作業への具体的な影響を示したメーカー・公的機関の資料は、今回の検索では見つけられませんでした。
そのため、この記事では回収への影響を理由には挙げません。確実に言えるのは、工業会の文書にあるとおり、改造された製品にはメーカーの復旧対応が受けられないという点までです。
◆アキのワンポイントアドバイス
私の本業は組込みソフトウェアの開発で、冷媒回路の設計や施工は担当の外です。だからこそ、自分の感覚ではなく公開された文書に当たるようにしています。
今回いちばん意外だったのは、「冷媒漏洩封止剤」という言葉が警告文にそのまま載っていたことでした。ここまで具体的に書かれている以上、知らなかったでは済ませにくい話だと感じています。
ガス漏れ止め剤の効果は確かめられるか
次に気になるのが「効果はあるのか」ですよね。ここは、確認できたことと確認できなかったことを分けて書きます。
効果を検証した一次情報は見つからなかった
今回調べたのは、日本冷凍空調工業会の文書と、ダイキン・日立・パナソニックの公開ページ、三菱電機の取扱説明書1冊です。この範囲では、家庭用ルームエアコンで漏れ止め剤の効果や持続期間を検証した資料は見つかりませんでした。メーカー公式サイトで漏れ止め剤そのものに触れた記述も、見当たりませんでした。
検索で出てくる製品の多くは車のエアコン向けで、家庭用とは冷媒の種類も回路の設計も違います。個人の体験談も、機種や漏れ方の条件が分からないため判断の根拠にはしにくいところです。ここでは効果があるともないとも断定しません。
漏れの原因は配管の腐食と疲労が大半
効果を考えるうえで参考になるのが、そもそもなぜ漏れるのかという点です。日本冷凍空調工業会が2013年11月に経済産業省の審議会へ提出した資料に、2008年から2011年の冷凍空調設備の事故情報200件の分析があります。
| 原因 | 件数(割合) | 報告されている内容 |
|---|---|---|
| 腐食 | 92件(46%) | 保冷材などの施工不良や劣化で水が入り、配管やろう付け部が腐食してピンホールになる |
| 疲労 | 67件(34%) | 圧縮機の振動や冷媒の流れによる力で、溶接部やフレア部などが疲れて割れる |
| その他 | 41件(約2割) | 上記以外の要因 |
疲労と腐食で、合わせて約8割。さらに疲労や腐食による漏れは、10年以上動いている設備での発生が65%以上とされています。この資料は業務用の設備が対象で、家庭用エアコンの統計ではありません。それでも、漏れが配管や接合部そのものの劣化から起きているという構図は参考になります。
仮に薬剤で穴がふさがったとしても、劣化した配管が元に戻るわけではありません。ガス漏れのサインや症状の見分け方は、エアコンのガス漏れのサインを解説した記事にまとめています。
出典: 日本冷凍空調工業会「冷媒漏えい事故への対応について」(経済産業省の産業構造審議会に提出された資料4-2)

冷媒回路とはどんな場所なのか
漏れ止め剤が入っていく先の冷媒回路が、どういうものかも押さえておきましょう。
室内機と室外機をつなぐ閉じた輪
パナソニックの解説によると、室内機と室外機は2本の配管でつながっていて、その中を冷媒が循環しています。冷媒を圧縮する圧縮機、熱をやりとりする熱交換器、冷媒を減圧する膨張弁が、この輪の中に組み込まれています。冷媒は常温では気体ですが、圧力をかけると液体になる性質を使って熱を運んでいるわけです。
これは設計どおりの冷媒と冷凍機油だけが回るように作られた、閉じた輪です。何かを足せば、その何かも同じ輪をぐるぐる回り続けます。
異物の混入に神経を使う場所
日本冷凍空調工業会は家庭用エアコンの施工上のポイントとして、いまの主流のR410AやR32の機種では、旧世代のR22機種以上に配管内への油分や水分などの異物混入に注意するよう求めています。作動圧力がR22機種の約1.6倍と高く、冷媒を充てんする向きまで指定されています。
日立も、配管を再利用する条件として配管厚0.8mmのJIS規格品であることなどを挙げ、配管内が極端に汚れている場合は洗浄か交換を求めています。いずれも施工時の注意で、漏れ止め剤を名指ししたものではありません。それでも、冷媒回路が何に神経を使って作られているかは伝わってきます。
出典: 日本冷凍空調工業会「冷媒HFC(R410AおよびR32)採用機種の施工上のポイント」 / 日立「エアコンの配管は再利用できますか?」

エアコンの漏れ止め剤を検討する前に確認すること
ここまでを踏まえて、判断の順番をまとめておきます。
順番に確認したい3つのこと
- 本当に冷媒が減っているのか。ガス漏れのサインに当てはまるか、まず切り分ける
- 保証はまだ生きているか。冷媒系統が5年保証なら、その期間内かどうかを保証書で確かめる
- 漏れている場所は特定できているか。場所が分からないまま薬剤を入れても、原因は残ったままになる
三菱電機の家庭用ルームエアコンの取扱説明書には、「エアコンが冷えない・暖まらない場合は冷媒の漏れが原因のひとつとして考えられるので、お買上げの販売店に相談する」「冷媒の追加を伴う修理の場合は、修理内容をサービスマンに確認する」と書かれています。メーカーが示している手順は、まず販売店への相談です。
そのうえで、漏れ箇所の修理とガス補充という正規の手順と見比べてみてください。買い替えが決まっている古い機種を数か月だけ延命したい、といった事情もあると思います。その場合でも、漏れ止め剤を選ぶならメーカーの保証と復旧対応を手放す判断になる点は押さえておきたいところです。
出典: 三菱電機 ルームエアコン MSZ-GVシリーズ 取扱説明書(PDF)
エアコンの漏れ止め剤に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 漏れ止め剤を入れると保証はどうなりますか?
A. 日本冷凍空調工業会は、冷媒漏洩封止剤の注入を「改造」に当たる行為として挙げています。改造が行われた製品について、メーカーは保証できず、メンテナンス部品の供給や復旧対応も行わないとしています。ご自身の保証書の記載も併せて確認してください。
Q2. 車用の製品を家庭用エアコンに使ってもいいですか?
A. 冷媒の種類も回路の設計も異なります。家庭用の冷媒回路に入れる時点で、メーカーが指定していない添加剤の注入に当たります。当ブログは家庭用ルームエアコンのみを扱っているため、車のエアコンについては専門の情報をご確認ください。
Q3. 効果があったという話も見かけますが、実際どうなのですか?
A. 家庭用ルームエアコンで効果の有無や持続期間を検証した資料は、今回調べた範囲(業界団体の文書と、メーカー4社の公開ページ・取扱説明書)では見つけられませんでした。個人の体験談は条件が分からないため、ここでは効果があるともないとも断定しません。
Q4. 「フロンの入れ替えが必要」と勧誘されました。応じるべきですか?
A. 環境省は、省庁の指示だと騙ってフロン類の入れ替えを勧誘する事例に注意を呼びかけています。省庁がそのような指示を出している事実はないと明記されています。同じ説明を持ちかけられたら、いったん立ち止まってください。
出典: 環境省「環境省・経済産業省の指示と騙る勧誘に御注意」
まとめ・エアコンの漏れ止め剤
エアコンのガス漏れ止め剤の主なデメリットは、日本冷凍空調工業会が冷媒漏洩封止剤の注入を「改造」に当たる行為として挙げ、その場合はメーカーの保証も部品供給も復旧対応も受けられないとしている点です。手放すのは、本体より長い5年保証の付く冷媒系統の保証です。
効果については、今回調べた範囲で検証した一次情報は見つかりませんでした。そして事故情報の分析では、漏れの約8割が腐食と疲労という配管側の劣化でした。
効きが落ちたと感じたら、まずは販売店への相談と、漏れているかどうかの切り分けから始めてみてください。遠回りに見えて、それがいちばん短い道になることが多いはずです。

