こんにちは、エアコンラボのアキです。
「子供部屋にもう1台つけたら電気代はどうなるのか」「大きいのを1台にしたほうが得なのか」。エアコンの台数の相談は、この2つがほとんどです。
ネット上には「小型2台のほうが安い」「いや大型1台のほうが安い」という記事が両方あります。調べていくと、どちらも間違いというより、前提となる畳数や機種を変えれば結論がひっくり返る、という話でした。実際、私がメーカーの公表値だけを使って突き合わせたところ、14畳ぶんの組み合わせでは1台が有利になり、20畳ぶんでは2台が有利になりました。
この記事では、私の体験談ではなく、業界団体・メーカー・官公庁が公表している数値だけを使って、何が電気代を決めているのかを組み立て直します。読み終わるころには、自分の家の条件を当てはめて判断できるようになるはずです。
- カタログの「畳数のめやす」が、どういう住宅を前提にした数字なのか
- 台数を比べられる唯一の公表値「期間消費電力量」の測定条件
- 同一シリーズの公表値で2台と1台を突き合わせた結果(逆転する条件つき)
- 「畳数別・台数別の電気代早見表」を、この記事であえて作らない理由
- 「200Vのほうが電気代が安い」という通説が、公表値でどこまで言えるか

台数を比べる前に「畳数のめやす」を正しく読む
2台か1台かを考えるとき、多くの方は「6畳用」「20畳用」という表示を出発点にします。ところがこの表示、多くの方が思っているのとは違う読み方をします。ここを外すと、その後の比較がまるごとずれてしまいます。
「6〜9畳」は幅ではなく、木造6畳・鉄筋9畳という意味
カタログの畳数のめやすは、たいてい「11〜17畳」のように2つの数字で書かれています。この読み方について、ゼネラルの「エアコンの上手な選び方」は「『畳数の目安』に『11〜17畳』と記載があった場合、『木造なら11畳・鉄筋なら17畳』という意味になります。11〜17畳の部屋に適しているという意味ではありませんので、ご注意ください」と明記しています。
もう少し細かい前提は三菱電機の「失敗しない!エアコン選びと設置のポイント」に書かれていて、小さい数字が「戸建木造平屋の南向き(和室)」、大きい数字が「鉄筋集合住宅中間層の南向き(洋室)」の想定だとされています。ダイキンのRXシリーズ仕様ページにも「お部屋の畳数は、木造南向き(洋室・和室)の場合です」という注記があります。
つまり「6〜9畳」と書かれた機種は、6畳から9畳までどこでも使えるという意味ではありません。木造の戸建てなら6畳が限度、鉄筋の集合住宅なら9畳まで、という2条件の併記です。木造の10畳間に「6〜9畳」の機種を入れると、めやすの範囲外になります。
畳数のめやすは冷房能力(kW)のランクで決まっている
畳数は機種ごとに自由に決められているわけではなく、冷房能力のランクに対応しています。日本冷凍空調工業会が公表している対応表は次のとおりです。この表は、あとで出てくる期間消費電力量の測定条件そのものでもあります。
| 冷房能力ランク(kW) | 畳数(畳) | 冷房能力ランク(kW) | 畳数(畳) |
|---|---|---|---|
| 〜2.2 | 6 | 5.6 | 18 |
| 2.5 | 8 | 6.3 | 20 |
| 2.8 | 10 | 7.1 | 23 |
| 〜3.6 | 12 | 8.0 | 26 |
| 〜4.5 | 14 | 9.0 | 29 |
| 5.0 | 16 | 10.0 | 32 |
2.2kWが6畳、6.3kWが20畳。ここが押さえられていれば、「6畳用2台と20畳用1台では、そもそも受け持つ広さが違う」といった、比較の土俵のズレに気づけます。10畳用(2.8kW)を2台なら合計20畳ぶんで、20畳用(6.3kW)1台と同じ土俵に乗る、という具合です。
めやすの前提と、いまの住宅のズレ
ここで正直に書いておきたいのは、この畳数のめやすが「木造平屋の南向き和室」という、かなり限定された住宅像を基準にしている点です。日本冷凍空調工業会はお部屋に見合った能力のエアコンを選ぶのページで、「家の構造や間取りなど、お部屋の条件を考慮して選ぶことが大切なので、販売店によく相談しましょう」「断熱の良い家屋は最大の省エネ効果があります」と書いています。
三菱電機のページも、正確に選ぶには「冷暖房負荷計算書」が必要で、販売店に相談してほしいという立場です。さらに、次のような部屋は熱負荷が大きくなるため、めやすより大きいクラスを選んだほうがよい場合があるとしています。
- 西向き窓のお部屋
- ハイサッシのお部屋
- 高天井・吹抜けのお部屋
- LDKのお部屋
畳数のめやすが古い住宅像を前提にしているという指摘は、住宅系の記事でよく見かけます。ただ、私が今回たどれた一次情報の範囲では、メーカーや工業会が「めやすは何年の基準に基づく」と算出根拠の年次まで明記した資料は見つけられませんでした。確実に言えるのは「木造平屋南向き和室/鉄筋集合住宅中間層南向き洋室という前提が公表されている」ことと、「実際の部屋に合わせるには負荷計算が必要だとメーカー自身が言っている」ことの2点です。ここから先を断定するのはやめておきます。
台数を比べる物差しは「期間消費電力量」しかない
「2台だと1時間何円?」という質問をよくいただきますが、この形では答えが作れません。エアコンの消費電力は運転中ずっと一定ではなく、公表されているのは幅(たとえば160〜1730W)だからです。台数の比較に使える公表値は、実質的に期間消費電力量ひとつだけです。
期間消費電力量とAPFの測定条件(JIS C 9612:2013)
期間消費電力量は、日本冷凍空調工業会によれば「JIS C 9612:2013に基づくAPFから算出された」試算値で、算出基準は次のように公表されています。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 外気温度 | 東京をモデル |
| 設定温度 | 冷房時27℃/暖房時20℃ |
| 冷房期間 | 5月23日〜10月4日 |
| 暖房期間 | 11月8日〜4月16日 |
| 時間 | 6:00〜24:00の18時間 |
| 住宅 | JIS C 9612による平均的な木造住宅(南向) |
| 部屋の広さ | 機種に見合った部屋の広さ |
この最後の1行が、台数の話ではとても重要です。期間消費電力量は「その機種にちょうど合った広さの部屋を、1台で冷暖房したとき」の値なのです。2台ぶんを足し算するときは、この前提を引きずっていることを忘れてはいけません。
APFのほうは「年間を通じてエアコンを使用したとき、1年間に必要な冷暖房能力を、1年間でエアコンが消費する電力量(期間消費電力量)で除した、性能評価指標」と定義されています。値が大きいほど省エネ性が高い、という向きです。なお、この算出方法は2013年4月のJIS改正で変わっており、工業会のカタログ表示変更の解説によれば、仕様表にはJIS規格番号と制定年度が併記されるようになっています。古いカタログの数値と新しいカタログの数値を混ぜて比べないよう注意してください。
電気代に直すときの単価の扱い
期間消費電力量(kWh)に単価をかければ年間の電気代のめやすが出ます。この掛け算はメーカー自身もやっていて、三菱電機のページでは「電気代単価 1kWhあたり31円(税込)で計算します」として、公益財団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会が定めた電気料金めやす単価であると注記しています。
同じ31円/kWhは、資源エネルギー庁の省エネポータルサイトでも省エネ効果の算出根拠として使われており、出典は「令和4年7月 公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会 新電力料金目安単価(税込)」と明記されています。この記事で円に換算するときは、すべてこの31円/kWhを使い、条件を毎回書き添えます。
なお、家電どうしの比較や、27円/kWhと31円/kWhという2系統のめやす単価の使い分けについてはエアコンとテレビの電気代を比べる記事で詳しく整理しています。契約プランそのものの選び方は電力会社とエアコンの電気代の記事のほうが本題です。
「畳数別・台数別の電気代早見表」を作らない理由
この手のテーマでいちばん求められるのは、「6畳×2台なら月◯円、20畳×1台なら月◯円」という早見表だと思います。ただ、私はこれを作りません。作れないからです。
期間消費電力量は機種ごとに公表される値であって、畳数ごとに決まった値ではありません。あとで見るように、同じ「主に14畳用」でも機種によって1,022kWhと1,544kWhという開きがあります。畳数だけを軸にした早見表は、この差を平均や仮定でならすことでしか作れません。「1台あたり◯Wと仮定して」から始まる表は、その瞬間に出典のない数字になります。
そのかわりに、次の章では機種名・型番・条件をすべて出したうえで、実際に公表されている値だけを足し引きします。範囲は狭くなりますが、そのぶん出どころがはっきりします。
同一シリーズの公表値で、2台と1台を突き合わせる
比較の条件を揃えるため、同じメーカーの同じシリーズで、能力クラスだけが違う機種を並べます。ここではシャープのVシリーズを使いました。シリーズをまたぐと省エネ性能の水準そのものが変わってしまい、台数の話ではなくグレードの話になってしまうためです。
比較に使った機種の公表値
数値はすべてシャープ Vシリーズの仕様ページの公表値です。カッコ内は能力・消費電力の可変範囲を表します。
| 型番 | 表示畳数 | 電源 | 冷房能力 kW(範囲) | 冷房消費電力 W(範囲) | 期間消費電力量 | APF | 省エネ基準達成率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| AY-U22V | 6畳 | 単相100V-15A | 2.2(0.5〜2.8) | 570(110〜870) | 717kWh | 5.8 | 87% |
| AY-U25V | 8畳 | 単相100V-15A | 2.5(0.5〜3.2) | 675(110〜1100) | 815kWh | 5.8 | 87% |
| AY-U28V | 10畳 | 単相100V-15A | 2.8(0.8〜3.3) | 720(180〜950) | 913kWh | 5.8 | 87% |
| AY-U40V | 14畳 | 単相100V-20A | 4.0(0.9〜4.4) | 1280(160〜1730) | 1,544kWh | 4.9 | 74% |
| AY-U40V2 | 14畳 | 単相200V-15A | 4.0(0.9〜4.4) | 1280(160〜1730) | 1,455kWh | 5.2 | 78% |
| AY-U56V2 | 18畳 | 単相200V-15A | 5.6(0.8〜5.7) | 2250(140〜2280) | 2,118kWh | 5.0 | 79% |
| AY-U63V2 | 20畳 | 単相200V-20A | 6.3(0.8〜6.6) | 2240(170〜2300) | 2,383kWh | 5.0 | 81% |
暖房側の低温暖房能力(外気温2℃時)も公表されていて、6畳用の3.0kWから20畳用の7.6kWまで並びます。寒い地域でお使いなら、この数値も台数の判断材料になります。
畳数を揃えて足すとどうなるか
先ほどの工業会の対応表に沿って、2台の合計畳数と1台の畳数を揃えて突き合わせます。円換算はすべて「期間消費電力量×31円/kWh(税込)」、条件は東京・平均的な木造住宅(南向)・冷房27℃/暖房20℃・6:00〜24:00の18時間です。
| 組み合わせ | 2台の合計 | 同じ広さを1台で | 差 |
|---|---|---|---|
| 6畳+8畳=14畳ぶん | 717+815=1,532kWh(47,492円) | AY-U40V(100V) 1,544kWh(47,864円) | 2台が12kWh少ない(372円) |
| 6畳+8畳=14畳ぶん | 1,532kWh(47,492円) | AY-U40V2(200V) 1,455kWh(45,105円) | 1台が77kWh少ない(2,387円) |
| 8畳+10畳=18畳ぶん | 815+913=1,728kWh(53,568円) | AY-U56V2 2,118kWh(65,658円) | 2台が390kWh少ない(12,090円) |
| 10畳+10畳=20畳ぶん | 913×2=1,826kWh(56,606円) | AY-U63V2 2,383kWh(73,873円) | 2台が557kWh少ない(17,267円) |
結論は「どちらとも言えない」ではなく、規模が小さいうちは互角か1台有利、大きくなるほど2台有利に振れるです。14畳ぶんでは差が数百円〜2千円台なのに、20畳ぶんでは1万7千円台まで開きました。同じシリーズ、同じ測定基準での比較なので、この傾向自体はかなり素直に読めます。
この表から言えること・言えないこと
とはいえ、この表は万能ではありません。私が引き受けられる範囲をはっきりさせておきます。
- 言えること:同一シリーズ・同一測定条件で並べたとき、合計畳数が大きくなるほど「小さいのを2台」の合計値が有利になっていく
- 言えること:その差は年間1万円を超えることがあり、無視できる大きさではない
- 言えないこと:実際の2部屋(壁で仕切られ、外に面する壁の面積も窓の数も違う)での消費電力量。期間消費電力量はあくまで「機種に見合った1部屋を1台で」の値です
- 言えないこと:片方の部屋しか使わない日がある場合。足し算は「両方を冷房期間・暖房期間の全期間、1日18時間動かす」前提です
- 言えないこと:他メーカー・他シリーズでも同じ傾向になるか。ここで示したのは1シリーズ内の関係です
特に4つめは効き方が大きいところです。子供部屋を夜だけ、寝室を就寝中だけ、という使い方なら、2台側の実際の消費電力量は表の合計値よりかなり下がります。逆に、続き間を開け放って実質1部屋として使っているなら、2台目はそもそも動かす必要がありません。就寝中の連続運転をどう考えるかはエアコンの電気代を一晩単位で見る記事で扱っています。
差はどこから来るのか — 能力クラスと省エネ基準の構造
なぜ大きい1台のほうが不利に出やすいのか。「大型機はパワーがありすぎて無駄」といった説明をよく見かけますが、公表値を見ていくと、もう少し制度的な事情が見えてきます。
省エネ基準の目標APFは、能力が大きいほど低い
省エネ法の目標基準値は、定格冷房能力ごとに違う値が定められています。ゼネラルの選び方ページに掲載されている、壁掛形・2027年度目標の目標APF値は次のとおりです。
| 定格冷房能力 | 目標APF | 定格冷房能力 | 目標APF |
|---|---|---|---|
| 2.2kW以下〜4.0kW | 6.6 | 6.3kW | 6.1 |
| 4.5kW | 6.5 | 7.1kW | 5.9 |
| 5.0kW | 6.4 | 8.0kW | 5.7 |
| 5.6kW | 6.3 | 9.0kW | 5.5 |
| 寒冷地仕様(暖房強化型)は2.2〜4.0kWで6.2、10.0kW以上で4.9 | 10.0kW以上 | 5.3 | |
2.2〜4.0kWでは6.6が目標なのに、6.3kWでは6.1、10.0kW以上では5.3。制度としても、大能力機には低い効率しか求めていないのです。実際、先ほどのシャープVシリーズでも2.2〜2.8kWのAPFが5.8なのに対し、6.3kWは5.0でした。2台のほうが有利に出やすい背景には、この構造があります。なお、複数の室内機を1台の室外機につなぐマルチタイプは壁掛形とは別区分(区分Ⅷ〜Ⅹ)で、目標APFは5.5〜5.6と定められています。
同じ畳数クラスでも、機種で522kWh違う
ここで台数の話に冷や水をかけておきます。三菱電機のページには、どちらも主に14畳用の2機種の期間消費電力量が並べて示されています。
- FZシリーズ(MSZ-FZ4025S):1,022kWh×31円/kWh(税込)=31,682円
- GEシリーズ(MSZ-GE4025S):1,544kWh×31円/kWh(税込)=47,864円
差は522kWh、金額にして16,182円です。これは、さきほど「10畳×2台と20畳×1台」で出た17,267円とほぼ同じオーダーです。台数をどうするかで動く金額と、同じ畳数クラスの中でどのグレードを選ぶかで動く金額は、同じくらい大きいということになります。台数だけに気を取られると、もっと効く選択を見落とします。買い替えを含めた省エネ性能の考え方は古いエアコンの買い替え判断の記事にまとめています。
「大型1台は能力を絞れないから非効率」は公表値では支持できない
台数の議論でよく出るのが「大きいエアコンは最小能力が大きく、小さい負荷まで絞れないから無駄が出る」という説明です。インバータ機が設定温度に近づくと能力と消費電力をセーブした運転に切り替わるのは工業会も説明しているとおりで、そこまでは合っています。
ただ、シャープVシリーズの冷房側の公表値で定格を最小能力で割ってみると、次のようになります。
- 2.2kW機:0.5〜2.8kW → 定格は最小の約4.4倍
- 2.8kW機:0.8〜3.3kW → 約3.5倍
- 4.0kW機:0.9〜4.4kW → 約4.4倍
- 5.6kW機:0.8〜5.7kW → 約7.0倍
- 6.3kW機:0.8〜6.6kW → 約7.9倍
最小能力そのものは、6.3kW機でも0.8kWまで下がっていて、2.8kW機と同じです。最小消費電力も170Wと180Wでほぼ変わりません。この機種例に関するかぎり、「大型機は絞りきれない」という説明は公表値からは支持できません。むしろ可変幅は大型機のほうが広いくらいです。差が出ているのは、絞れる下限ではなくAPFと期間消費電力量のほうでした。
ゼネラルの選び方ページも「4.0kW(0.7〜5.4)」のような表記について、カッコ内は変更できる能力の幅で、最小数値が小さいほどきめ細かな運転ができると説明しています。三菱電機も「能力の幅が大きい機種ほど、お部屋の状況にあわせた効率的な運転ができます」としています。カタログを見るときは、定格値だけでなくカッコの中を見比べてください。運転モードごとの消費電力の動き方はしずかモードと電気代の記事でも掘り下げています。
2台運用でこそ効く、電気代の変わり方

ここまでは機器の公表値の話でした。実際に2台を使い始めると、機器選び以外の要因が効いてきます。とくに2台だからこそ影響が倍になるポイントを整理します。
使う時間と部屋数は、機種差より効くことがある
資源エネルギー庁の省エネポータルサイト(空調)は、省エネ行動ごとの効果を条件つきで公表しています。以下はすべて2.2kW(6畳用)のエアコン1台あたりの年間値で、金額は31円/kWhでの換算です。
| 省エネ行動 | 条件 | 年間の省エネ量 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 冷房設定を1℃上げる | 外気温31℃、27℃→28℃、9時間/日 | 30.24kWh | 約940円 |
| 暖房設定を1℃下げる | 外気温6℃、21℃→20℃、9時間/日 | 53.08kWh | 約1,650円 |
| 冷房を1日1時間短縮 | 設定温度28℃ | 18.78kWh | 約580円 |
| 暖房を1日1時間短縮 | 設定温度20℃ | 40.73kWh | 約1,260円 |
| フィルターを月1〜2回清掃 | 目詰まりした状態との比較 | 31.95kWh | 約990円 |
注目したいのは、これが1台あたりの値だという点です。2台とも同じ運用をすれば、効果もおおよそ2倍の規模で効いてきます。逆に言えば、2台目を「使っていない部屋でもとりあえずつけっぱなし」にすると、無駄も2倍になります。台数を増やす判断と、運転時間を管理する仕組み(タイマーや人感センサーなど)はセットで考えたほうがよいと思います。
室外機の置き方で、能力と消費電力が10%程度悪化することがある
2台にすると室外機も2台になります。ベランダや家の側面に2台を並べる場合、置き方が効率に影響します。三菱電機のページには、室外機の周りに十分なスペースがないとショートサイクル(室外機から出た風が再び室外機に戻ってしまうこと)が起こり、「風通しが悪くショートサイクルが起きやすい場合は、冷暖房能力および消費電力が10%程度悪化する場合があります」と明記されています。別売の吹出ガイドで改善が図れるとも書かれています。
資源エネルギー庁も「室外機の吹出口にものを置くと、冷暖房の効果が下がります」としています。せっかく2台にして年間1万円台の差を取りにいっても、置き方で10%持っていかれては元も子もありません。2台目の設置場所は、空きスペースがあるかだけでなく、2台の吹き出しがぶつからないかまで見て決めてください。
室内機の前にも必要なスペースがある
意外と見落とされるのが室内機側です。三菱電機は、前面パネル取り外しのために正面に空けるべき寸法をシリーズごとに公表しています。FZ・FDシリーズは700mm以上、Z・X・ZDシリーズは650mm以上、FLシリーズは600mm以上、R・XDシリーズは560mm以上、Sシリーズは450mm以上、GEシリーズは445mm以上です。上下左右のスペースが足りないと空気の流れが悪くなり、効率的な運転を妨げるとされています。
狭い部屋に2台目を追加するときは、家具の配置を含めてここを確認しておくと、あとで「思ったより効かない」となりにくいはずです。
2台にするときの電源まわりと、200Vの通説
最後に電源の話です。ここは私の実務範囲ではないので、メーカーと官公庁が公表している内容の範囲にとどめます。実際の工事や回路の判断は、必ず販売店や電気工事店に相談してください。
「200Vのほうが電気代が安い」は公表値でどこまで言えるか
これはよく聞く話なので、原典で確かめました。シャープVシリーズには、同じ14畳クラス・同じ冷房定格4.0kWで、電源だけが違う2機種があります。
| 項目 | AY-U40V(100V) | AY-U40V2(200V) |
|---|---|---|
| 電源 | 単相100V-20A | 単相200V-15A |
| 冷房能力(範囲) | 4.0kW(0.9〜4.4) | 4.0kW(0.9〜4.4) |
| 冷房消費電力(範囲) | 1280W(160〜1730) | 1280W(160〜1730) |
| 暖房能力(範囲) | 5.0kW(0.9〜6.3) | 5.0kW(0.9〜7.0) |
| 暖房消費電力(範囲) | 1450W(160〜2000) | 1450W(160〜2330) |
| 低温暖房能力(外気温2℃) | 4.7kW | 5.1kW |
| 期間消費電力量 | 1,544kWh | 1,455kWh |
| APF | 4.9 | 5.2 |
| 省エネ基準達成率 | 74% | 78% |
読み取れることを順に書きます。まず冷房は能力も消費電力も、定格値・可変範囲まで完全に同じです。定格の暖房能力5.0kWと暖房消費電力1450Wも同じ。違うのは暖房の最大能力(6.3kW→7.0kW)、暖房の最大消費電力(2000W→2330W)、そして低温暖房能力(4.7kW→5.1kW)です。
つまり、200V機で期間消費電力量が89kWh少ない(31円/kWhで2,759円ぶん)のは、電圧そのものが効率を上げたからではなく、暖房側でより大きな能力まで出せる仕様になっているからと読むのが素直です。「電圧を上げれば同じ運転が安くなる」と書いた一次情報は、今回の調査では見つけられませんでした。
むしろメーカーが200Vについて注意喚起しているのは、電気代ではなく契約容量のほうです。ゼネラルの選び方ページは「単相200V機種の運転電流は、単相3線式の家屋では、配線方式(回路)の特性上、実際の電流値の2倍の値で検出されます」として、ブレーカーで検出される値が実運転電流の2倍になることと契約電気容量の確認を求めています。100Vと200Vの誤接続を防ぐため、電源プラグの形状が規格化されているという説明もあります。
コンセント形状と専用回路
2台目を増やすときは、そもそも差せるコンセントがあるかという話になります。三菱電機のページには、単相100V 15A、単相100V 20A、単相200V 15A、単相200V 20Aの4種類のコンセント形状とプラグ形状、表示マークが並べて示されています。エアコン用のコンセントがない場合や形状が異なる場合は工事が必要になるとされています。
電気の基本的な考え方はパナソニックの「知っておきたい電気の基礎知識」が整理していて、電流(A)×電圧(V)=電力(W)、一般的なコンセントは15Aまでで一般家庭用の電圧は100Vだから1つのコンセントで合計1500Wまで、一般的なブレーカーは20Aなので1回路で合計2000Wまで、と説明されています。契約電流の決め方についても、同時に使う機器の合計ワット数を電圧で割る例(4400W÷100V=44A)が示されています。
ゼネラルの選び方ページは、エアコンの取付工事の際に発生しうる電気工事として、エアコン専用の電気回路、電源プラグの形状、アース工事、漏えい遮断機の4つを挙げ、詳しくは販売店に相談するよう案内しています。配線や分電盤に手を入れる作業は、私の専門ではありませんので、この記事では「何を確認事項として挙げているか」を紹介するにとどめます。コンセントまわりで気をつけることはエアコンと延長コードの記事とエアコンの漏電の記事で詳しく扱っています。
エアコン 二台 電気代に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 結局、小型2台と大型1台はどちらが電気代が安いのですか?
A. 合計畳数によって逆転します。シャープVシリーズの公表値で畳数を揃えて比べると、14畳ぶん(6畳+8畳)では2台と1台の差が期間消費電力量で12〜77kWh(372〜2,387円)しかなく、200V機を選べば1台のほうが少なくなりました。一方、20畳ぶん(10畳+10畳)では2台のほうが557kWh(17,267円)少ないという結果でした。規模が大きくなるほど2台側が有利に振れる、という読み方になります。いずれも東京・木造南向き・冷房27℃/暖房20℃・1日18時間という測定条件での値です。
Q2. 2台同時に使ったときの「1時間あたり◯円」を知りたいのですが。
A. その形の数値は公表されていません。エアコンの消費電力は幅で公表されていて、たとえばシャープAY-U22Vの冷房は570W(110〜870W)です。定格の570Wで固定して掛け算すれば数字は出せますが、実際には設定温度に近づくと能力と消費電力をセーブした運転に切り替わるため、その値は実態と一致しません。年単位の目安が知りたい場合は、期間消費電力量に31円/kWhをかけるのが、メーカー自身も使っている方法です。
Q3. 続き間なので、1台で2部屋をまかなえないでしょうか。
A. 間取りとして開け放して使っているなら、実質的に広い1部屋として能力を選ぶ、という考え方になります。三菱電機も、LDKのような部屋は熱負荷が大きくなるため畳数のめやすより大きいクラスを選んだほうがよい場合があるとしています。ただし、2部屋を1台でまかなったときの消費電力量を示した公表値はありません。期間消費電力量は「機種に見合った1部屋を1台で」という条件で測られているためです。なお資源エネルギー庁は、冷房時・暖房時ともに扇風機の併用を省エネの工夫として挙げていますが、これは同じ部屋の中の話で、隣室へ冷気を送る効果を示したものではありません。
Q4. カタログの畳数どおりに選べば失敗しませんか?
A. 出発点にはなりますが、それだけでは足りません。畳数のめやすは木造平屋南向き和室と鉄筋集合住宅中間層南向き洋室という2つの前提での値で、実際の部屋に合わせるには冷暖房負荷計算が必要だとメーカー自身が案内しています。西向き窓、ハイサッシ、高天井や吹抜け、LDKといった条件では、めやすより大きいクラスが必要になる場合があるとされています。2台に分けるか1台にするかを決める前に、まず各部屋の条件を販売店に伝えて相談してみてください。
Q5. 2台目を選ぶとき、どの数値を見比べればいいですか?
A. 期間消費電力量(kWh)、APF、省エネ基準達成率、そして能力のカッコ内の可変範囲の4つです。期間消費電力量は小さいほど、APFと達成率は大きいほど省エネ性が高いことを表します。ただし、JIS C 9612は2013年4月に改正され期間消費電力量の算出方法が変わっているため、仕様表に併記された規格の制定年度をそろえて比べてください。同じ14畳クラスでも1,022kWhと1,544kWhのように機種で大きく違うので、台数だけでなくグレードも一緒に見比べる価値があります。
まとめ:「2台のほうが安い」は条件つきでしか成立しない
今回、公表値だけで組み立て直して見えてきたのは、次のような姿でした。台数の問題は、単独の答えがある問題ではなく、合計畳数・機種のグレード・使う時間の3つで決まる問題です。
- 畳数のめやすは「木造なら小さい数字、鉄筋なら大きい数字」。範囲ではない
- 台数を比べられる公表値は期間消費電力量だけ。しかも「機種に見合った1部屋を1台で」が前提
- 同一シリーズで畳数を揃えると、14畳ぶんでは互角〜1台有利、20畳ぶんでは2台が年間557kWh(17,267円)有利
- 省エネ基準の目標APFは能力が大きいほど低く(2.2〜4.0kWで6.6、10.0kW以上で5.3)、大型機が不利に出やすい構造がある
- 同じ14畳クラスの中でも機種差は522kWh(16,182円)。台数と同じくらい効く
- 「200Vだから安い」ではない。同一機種シリーズで比べると冷房側の消費電力は完全に同一だった
私が今回作らなかったのは、畳数別・台数別の電気代早見表です。畳数だけを軸にした表は、公表されていない値を仮定で埋めないと作れません。そのかわり、型番と測定条件を明示した比較を置きました。ご自身の候補機種のカタログを開いて、期間消費電力量の欄を同じやり方で足し引きしてみてください。それがいちばん確かな判断材料になります。

