こんにちは、エアコンラボのアキです。「エアコンの取り付けを自分でやれば工事費が浮くのでは」と検索してこのページにたどり着いた方が多いと思います。
先にお伝えします。この記事は取り付けの手順書ではありません。冷媒配管のつなぎ方も、真空引きのやり方も、電線の結び方も書きません。書かない理由は「危ないから」という気分の話ではなく、国の機関が事故の統計つきで名指しで止めているからです。製品評価技術基盤機構(NITE)は2022年に「無謀なDIY」という言葉を使って、エアコンの設置・撤去工事を専門業者に依頼するよう注意喚起しています。
この記事では、どこまでが法令の線で、どこからが法令の外にある危険なのかを原典だけで整理し、そのうえで自分の手で合法かつ安全にできることも具体的に示します。「あとは自己責任で」という締め方はしません。
- NITEが「無謀なDIY」をどう定義し、どんな事故が起きているか
- 電気工事士法が止めている範囲と、政令が「軽微な工事」として外している範囲
- 冷媒にかかる法律が、家庭用と業務用で別ルートになっていること
- メーカーの据付説明書が読者本人に向けて書いていること
- 触らずにできる下見・採寸・情報整理という、自分の担当範囲

「無謀なDIY」は、国の機関が使っている言葉です
NITEは「無謀なDIY」をこう定義しています
製品評価技術基盤機構(NITE)は令和4年6月30日、「無謀なDIY」が招く危険 〜エアコンと除湿機の事故〜という注意喚起を出しています。エアコンのDIYを扱った公的資料としては、これが正面からの一次情報です。
同資料の注釈で、「無謀なDIY」はこう定義されています。「消費者自らが、取扱説明書や施工説明書で禁止している又は専門の資格を持たないとできない製品の整備や修理、加工などを行うこと」。ポイントは「資格」だけでなく「説明書で禁止していること」も同列に置かれていることです。資格の有無だけで線を引いていない、という点を先に押さえてください。
そして本文の「エアコンの気を付けるポイント」は、こうです。「エアコンの設置、整備、移設、撤去の工事は、専門の知識や資格を持った業者に依頼する」。設置だけでなく撤去も含めて、まとめて業者に依頼せよという書き方になっています。
5年間の事故のうち、4分の1は製品のせいではありません
発表資料の本文(PDF)には、2017年度から2021年度に発生したエアコンの事故263件の内訳が載っています。年度別では46件・49件・51件・55件・62件と増加傾向。月別では7月が57件で最も多く、次いで8月が33件です。エアコンを動かし始める時期と、工事が集中する時期が重なります。
調査が完了している202件の原因別の内訳が、この記事にとって重要です。
| 事故の原因 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 製品の不具合による事故 | 58 | 29% |
| 「無謀なDIY」など、製品の不具合以外による事故 | 53 | 26% |
| 経年劣化による事故 | 9 | 4% |
| 原因不明 | 82 | 41% |
原因が特定できたもののうち、製品の不具合(58)と、製品の不具合以外(53)がほぼ並んでいます。エアコンの事故は「製品が壊れて起きるもの」と同じくらい、「人の手が入って起きるもの」だということです。
実際に何が起きたのか
その53件を事象別に分解した表も公表されています。
| 事故事象 | 件数 |
|---|---|
| 洗浄剤の付着などによる内部配線の発火 | 16 |
| 室内機と室外機をつなぐ連絡線の途中接続部から発火 | 13 |
| ねじり接続など、電源コードの発火 | 9 |
| 空気の混入による室外機コンプレッサーの破裂 | 6 |
| 小動物の侵入などによる基板の発火 | 2 |
| その他 | 7 |
個別の事故事例も、日付・地域つきで載っています。2019年10月に愛知県で、エアコンを取り外していた70歳代の男性が室外機の破裂で重傷を負った事例。原因は「配管等に残った冷媒を集める作業を誤った手順により実施したため、コンプレッサー内部に空気が混入して、コンプレッサー内部が異常高温・高圧状態となり、破裂した」と説明されています。2018年2月には埼玉県で連絡線の途中接続による出火で壁の一部が焼損し、2020年12月には静岡県で電源コードのねじり接続部から火災が起きています。
NITEはこの破裂のしくみを「トラックなどに搭載されているディーゼルエンジンで起きている爆発と同じ原理です」と説明しています。やり直しがきくレベルの失敗ではありません。冷媒を室外機に集める作業そのものについては、エアコンのポンプダウンとは何かで業界団体の公表資料をもとに解説していますが、そちらも自分で行うことを勧める記事ではありません。
法令が止めているのは、工事のうちの一部だけです
電気工事士法第3条第2項——資格がなければ従事してはならない
電気工事士法(昭和35年法律第139号)第3条第2項は、こう定めています。「第一種電気工事士又は……第二種電気工事士免状の交付を受けている者……でなければ、一般用電気工作物等に係る電気工事の作業……に従事してはならない」。住宅の屋内配線は一般用電気工作物にあたるので、コンセントの新設・移設や電線どうしの接続はここに入ります。
ここで注意したいのは、この法律の条文にも施行令にも「エアコン」という語は一度も出てこないことです(全文を検索して0件でした)。法律はエアコン専用の線を引いているのではなく、「電気工事」という行為の側に線を引いています。だから「エアコン工事は資格が要る/要らない」という言い方自体が、そもそも粗いのです。
政令が「軽微な工事」として外している6種類
同法第2条第3項のただし書は「政令で定める軽微な工事を除く」としており、電気工事士法施行令第1条がその中身を6号に分けて列挙しています。
- 電圧600ボルト以下で使用する差込み接続器・開閉器などに、コード又はキャブタイヤケーブルを接続する工事
- 電圧600ボルト以下で使用する電気機器(配線器具を除く)又は蓄電池の端子に、電線をねじ止めする工事
- 電圧600ボルト以下で使用する電力量計・電流制限器・ヒューズを取り付け、又は取り外す工事
- 電鈴、インターホーン、火災感知器などに使用する小型変圧器(二次電圧が36ボルト以下のもの)の二次側の配線工事
- 電線を支持する柱・腕木などの工作物を設置し、又は変更する工事
- 地中電線用の暗渠又は管を設置し、又は変更する工事
この6種類に、電線どうしをつなぐ工事も、コンセントを新しく作る工事も入っていません。NITEの事故表で13件を占めた「連絡線の途中接続」は、まさに電線どうしをつなぐ行為です。
罰則は第14条。ただし「罰がない=安全」ではありません
第3条に違反した場合の罰則は第14条にあり、「三月以下の拘禁刑又は三万円以下の罰金に処する」と書かれています。罰金の上限は3万円です。なお2025年6月1日施行の刑法等改正で「懲役」は「拘禁刑」に改められているので、「3か月以下の懲役」と書いてある解説は条文の現行の文言と一致していません。
そして、ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。罰金の上限が3万円だということは、法律がこの行為を「軽い」と見ている証拠にはなりません。電気工事士法第1条は目的を「電気工事の欠陥による災害の発生の防止に寄与すること」と定めています。罰則は災害を防ぐための入口であって、危険の総量を測る物差しではありません。実際、上の表で最も多かった「洗浄剤の付着による発火」16件も、「冷媒を集める作業の誤り」6件も、電気工事士法の資格の線とは別のところで起きています。資格が要らない作業=安全な作業、ではないのです。
冷媒にかかる法律は、家庭用と業務用で別ルートです
「エアコンの冷媒を大気に出すとフロン排出抑制法違反になる」という説明をよく見かけますが、同法の条文はそう読めません。第86条の放出禁止の対象は「特定製品」で、その定義である第2条第3項は第一種特定製品を「業務用の機器(一般消費者が通常生活の用に供する機器以外の機器)」と限定し、第4項の第二種特定製品はカーエアコンです。条文には「家庭用」という語自体が出てきません。環境省のフロン排出抑制法FAQも「家庭用のエアコン、冷蔵庫及び衣類乾燥機……は本法に基づく回収その他の義務はありません」と明記しています。
では家庭用は野放しかというと違い、家電リサイクル法の側で回収が義務づけられています。NITE自身も同じ資料で「家庭用エアコンの冷媒ガスに使用されているフロン類は……家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)において、回収が義務づけられています」と書いています。処分・取り外しの手続きはエアコンの外し方は誰に頼むのかにまとめました。
高圧ガス保安法については、確認できたことだけ書きます。同法施行令第2条第5項は、冷凍能力が3トン未満の冷凍設備内における高圧ガス、および不活性のフルオロカーボンを冷媒とする3トン以上5トン未満の設備内の高圧ガスを、法の適用除外としています(許可が必要になるのは1日の冷凍能力20トン以上)。ただし家庭用ルームエアコンがこの区分に入ることを明示した公的資料は、今回見つけられませんでした。そのため「家庭用は高圧ガス保安法の対象外です」とは書きません。
メーカーは「販売店または専門業者に依頼」と書いています
据付説明書の1ページ目にある警告
据付説明書は施工者向けの文書ですが、多くはメーカーのサイトで誰でもダウンロードできます。実際に開いて確認したところ、いずれも冒頭の「警告」欄の一番上に、依頼せよという趣旨の一文が置かれていました。
| メーカー・資料 | 確認できた記載 |
|---|---|
| 富士通ゼネラル ルームエアコン据付説明書 | 「据付工事は、お買い上げの販売店または専門業者に依頼する(ご自分で据付工事をされ不備があると、水漏れやけが、感電、火災などの原因)」 |
| アイリスオーヤマ ルームエアコン据付工事説明書 | 「据付工事は、お買い上げの販売店または据付専門業者に依頼する 自分で据付すると、火災・破裂・感電・けが・水漏れの原因になります。」 |
| 三菱電機 三菱ルームエアコン据付工事説明書 | 「据付けは、お買上げの販売店または専門業者に依頼する。据付けには専門の知識と技術が必要です。お客さま自身で据付工事をされ不備があると、水漏れや感電・火災・ユニットの落下によるケガの原因になります。」 |
| 日立 サポートFAQ | 「お客様ご自身によるエアコンの据え付けや移設、取り外し、分解は行わないでください。水漏れや感電、火災の原因になる恐れがあります」 |
| ダイキン お役立ち情報 | 「費用削減のために『エアコンを自分で取り付けたい』という方もおられるかもしれませんが、配線工事などは電気工事士の資格が必要です」 |
3社の説明書とも、電気工事は「電気工事士の資格を持っている人が」施工し「必ず専用回路を使用する」と別立てで書いています。日本冷凍空調工業会の工事の際の安全上の注意も「エアコンの据付工事等は電気工事業法に則り行ってください」としており、そもそも登録を受けた事業者の仕事として設計されています。業者側の義務はエアコン工事のVVFケーブルで条文を整理しました。
説明書どおりでない施工は、保証の外に出ます
アイリスオーヤマの据付工事説明書は、安全上の注意の直前にこう書いています。「据付工事説明書の記載内容を守らないことにより生じた損害に関して、当社は一切責任を負いません。」
パナソニックのエアコンサポートページも、「据付工事説明書に従わない施工工事……については、保証の対象外であると同時に、製品の品質を維持できないことから修理をお断りする場合があります」としています。同ページの保証期間は冷媒回路が5年、その他が1年です。対象外になるだけでなく、有料でも直してもらえない可能性があるという書き方である点に注意してください。工事の不備をあとから是正する手段はエアコン工事のクレームにまとめましたが、それは施工した事業者がいる場合の話です。自分で付けたエアコンには、請求できる相手がいません。
メーカー自身は工事を受けていません
日立は同じFAQで「当社では、エアコンの設置(据付け)・移設・取り外し工事や、これらに関するお問い合わせは承っておりません。お買い上げの販売店や、設置業者へご相談ください」と明記しています。つまり「自分で付けてみて、困ったらメーカーに聞く」という退路は、最初から用意されていません。どこに頼むかの選択肢そのものはエアコン工事のワンストップで整理しています。
それでも、自分でやってよいことははっきりあります
触らずに確認できること
ここからが本題です。工事そのものは手放しても、見る・測る・撮る・書き出すは全部あなたの担当です。しかも、ここが雑だと当日に追加工事が発生します。
- 室内機を付けたい壁の幅・高さと、天井やカーテンレールまでの距離を測っておく
- 配管を通す穴(スリーブ)がすでに開いているか、開いているなら室内側のどのあたりかを見る
- コンセントの位置と、100Vか200Vかの表示、差込口の形を写真に撮る(カバーは外さない)
- 室外機を置ける場所の広さと、ベランダなら手すりまでの距離を測る
- 室内機・室外機を運び入れる経路(玄関・廊下・階段の幅、何階か)を確認する
- いま付いているエアコンがあれば、室内機の型番シールを撮っておく
やってはいけないのは、分電盤のカバーを外すこと、コンセントのプレートを外すこと、配線に触れること、既設の配管や室外機のバルブに工具を当てることです。確認は目とスマートフォンのカメラまでにしてください。屋外の配管が傷んで銅管が見えている場合の見方は、エアコンの銅管むき出しで扱っています。
業者に渡すと、話が一度で済む情報
上で集めた材料を、そのまま問い合わせのときに渡します。現地調査の前に情報がそろっているほど、見積もりの精度が上がります。
- 設置する部屋の階数と、建物の種類(戸建て・集合住宅)、持ち家か賃貸か
- 配管穴の有無と位置、無い場合に壁の材質が分かるなら合わせて
- コンセントの写真と、エアコン専用のものかどうか分かる範囲で
- 室外機の設置予定場所(ベランダ・地面・壁面・屋根置きなど)と、そこまでの距離
- 既設エアコンの型番と、取り外し・リサイクルまで頼むかどうか
賃貸にお住まいなら、壁に穴を開ける工事や室外機の設置について、申し込む前に管理会社へ確認しておく必要があります(必要な手続きは物件ごとの契約によります)。
工事のあと、自分の目で確認できること
富士通ゼネラルの据付説明書には「据付工事後に、必ず確認してください」というチェック欄があり、「電源は専用回路です」「室内外ユニットはがたつきがなく設置されています」「水を流してドレン排水が正常であることを確認しました」「壁穴部の隙間は完全にふさぎました」といった項目と、確認日・工事会社名・電話番号の記入欄が並んでいます。工事が終わったときに、この欄が埋まった書類を受け取れるかどうかは、あなたが自分で確かめられることです。
確認できなかったこと、よくある質問、まとめ
今回、原典で確認できなかったこと
調べたけれど裏が取れなかったものを、そのまま書いておきます。
- DIYでいくら浮くのか。工具のレンタル代も部材費も工事費の相場も、公的な統計は見つかりませんでした。旧版にあった金額の目安はすべて削除しました
- 無資格でのエアコン工事が摘発された件数。公表された統計・事例を見つけられませんでした。「摘発される可能性は低い」と書いている記事もありますが、その根拠も確認できていません
- 家庭用ルームエアコンと高圧ガス保安法の関係。適用除外の数値は施行令で確認できましたが、家庭用機がそこに入ると明示した公的資料は見つけられませんでした
- 賃貸でのDIY工事と原状回復。エアコンの自主設置を名指しした公的なガイドラインは確認できませんでした。契約書と管理会社の回答が判断材料になります
よくある質問(FAQ)
Q1. 冷媒配管の接続は資格が要らないと聞きました。やってもいいのですか?
A. 電気工事士法の対象ではありませんが、それは「やってよい」という意味ではありません。NITEの公表資料では、冷媒を集める作業の誤りによる室外機の破裂が5年間で6件起き、うち1件は重傷事故です。また据付説明書は「据付工事は販売店または専門業者に依頼する」と明記しており、NITEの定義では説明書が禁じている作業を自分で行うこと自体が「無謀なDIY」にあたります。
Q2. 専用コンセントも配管穴もすでにある場合はどうですか?
A. 条件がそろっていても、室内機と室外機をつなぐ配線と冷媒配管の作業は残ります。NITEの事象別の表では、連絡線の途中接続部からの発火が13件で2番目に多い項目でした。条件がそろっている状態は「工事が簡単に終わる」という意味であって、「自分でできる」という意味ではありません。
Q3. すでに自分で取り付けてしまいました。どうすればいいですか?
A. まず購入した販売店に状況を伝えて相談してください。日立のように工事の問い合わせを受けていないメーカーもあるため、窓口は販売店または設置業者になります。点検や手直しに応じるかどうかは事業者の判断ですが、隠したまま使い続けるより先に相談したほうが選択肢は多く残ります。
Q4. 延長コードやテーブルタップでつなぐのは駄目ですか?
A. NITEの資料は「エアコン専用に設置されているコンセントに電源プラグを差し込んでください」としたうえで、延長コードやテーブルタップを用いると異常発熱により発煙・発火するおそれがあると書いています。理由の詳細はエアコンに延長コードを使ってはいけない理由にまとめました。
Q5. 化粧カバーの取り付けや室外機置き場の整地も駄目ですか?
A. 既設の配管や電線に触れない範囲の作業(置き場所の広さの確認、周囲の片付けなど)は、この記事が止めている範囲には入りません。ただし配管に巻かれたテープや保温材を自分で外す・巻き直すことは、内部の銅管や断熱に影響するため勧めていません。工事とセットで依頼するのが確実です。
まとめ:線は2本あります
エアコン工事のDIYには、線が2本あります。1本目は法令の線で、電気工事士法第3条第2項がコンセントの新設や電線の接続を止めています。施行令第1条が外している「軽微な工事」は6種類だけで、そこに電線どうしをつなぐ工事は入っていません。違反の罰則は第14条の「三月以下の拘禁刑又は三万円以下の罰金」です。
2本目は安全と保証の線で、こちらのほうがずっと手前にあります。NITEが集計した2017年度から2021年度の事故263件のうち、原因が特定できた202件では「無謀なDIY」など製品の不具合以外が53件、26%を占めていました。その内訳の上位である洗浄剤による発火16件も、冷媒を集める作業の誤りによる破裂6件も、電気工事士の資格の線の外側で起きています。メーカーの据付説明書は全社そろって「販売店または専門業者に依頼する」と書き、説明書に従わない施工は保証の対象外、場合によっては修理を断ると明記しています。
ですから、この記事は「自己責任でどうぞ」とは書きません。工事は渡す、下見と採寸と情報の整理は自分でやる。これが、いま原典から言える一番はっきりした線引きです。壁を測って、コンセントを撮って、室外機を置く場所と搬入経路をメモする。そこまで済ませてから問い合わせれば、見積もりの精度は確実に上がりますよ。

