エアコンの水漏れとネズミ|メーカーが警告しているのは配線のかじりでした

ネズミにかじられて破損したエアコンのドレンホース 故障・トラブル対応

こんにちは、エアコンラボのアキです。

「天井裏でカリカリと音がする」「エアコンの下に水たまりができている」。この2つが重なると、ネズミがドレンホースをかじって水漏れしているのでは、と考えたくなりますよね。

先にお断りしておきます。私は害獣や衛生の専門家ではありません。ですのでこの記事では自分の推測を書かず、エアコンメーカーの据付説明書と、環境省・自治体・NITE(製品評価技術基盤機構)が実際に公表している資料に書かれていることだけを整理します。調べてみると、この検索でよく出てくる話とは結論がかなり違いました。

  • 「ネズミが水漏れの原因」と書いたメーカー資料は見つからなかったこと
  • メーカーが名指しで警告しているのは配線のかじりで、想定されている被害は水漏れではなく感電・火災であること
  • 公的機関が示している「ネズミが通れるすき間」の大きさと、エアコンまわりの侵入経路
  • ネズミの気配があるときの相談先と、法律上の扱いがコウモリと決定的に違う点

エアコンのドレンホースと配管まわりを確認しているイメージ

水漏れの原因に「ネズミ」を挙げたメーカー資料は見つかりませんでした

最初に、いちばん肝心なところからお伝えします。国内エアコンメーカーが公開している水漏れの説明を探しましたが、原因としてネズミや動物を挙げているものは見つけられませんでした。

メーカーが挙げている室内機の水漏れの原因

日立の公式サポートは、室内機からの水漏れについて「エアコン内部の不具合や排水経路のトラブルが原因で発生している可能性があります」としたうえで、確認する場所を次のように挙げています。

  • ドレンホースが折れ曲がったり、持ち上がっている
  • ドレンホースにゴミが詰まっている
  • ドレンホースの先端が水に浸かっている
  • エアフィルターが汚れていて、吹出し口が結露しやすくなっている

詰まりの正体は「ゴミ」までしか書かれていません。吹き出し口以外から水が漏れている場合については「お客様ご自身での対処は難しいため、お買い上げの販売店または修理相談窓口に点検のご相談をしてください」と案内されています(日立「エアコン(室内機)から水が漏れています。」)。

「ホースをかじられて水が漏れる」と書いた資料はありませんでした

私が確認できた範囲では、日立・三菱電機のルームエアコン据付工事説明書にも、ドレンホースが動物にかじられるという記述はありませんでした。ドレンホースについて書かれているのは、勾配・先端の高さ・断熱材といった施工条件ばかりです。三菱電機の据付工事説明書では、たるみや先端の持ち上がり、先端が水につかる状態などが水漏れの原因図として示され、地面とのすき間は50mm以下にしないよう図示されています。

つまり「ネズミがドレンホースをかじったので水が漏れている」という説明は、今回読んだ資料(日立・三菱電機の据付工事説明書と、各社の水漏れのFAQ)には見当たらなかったということです。あとで見るとおり、日立の据付説明書は「ねずみ」に触れてはいるのですが、その対象はドレンホースではなく接続ケーブルでした。確認できていないことを「ある」とは書けませんので、この記事でも書きません。動物とドレンホースの詰まりについてはエアコンの水漏れは猫が原因?で、水漏れそのものの原因の切り分けはエアコンの水漏れが夜だけ起きる理由で扱っています。

メーカーが警告しているのは「配線をかじられること」でした

では、メーカーはネズミについて何も書いていないのか。そんなことはありませんでした。むしろはっきり名指しで警告しています。ただし対象はドレンホースではなく電線で、想定されている被害も水漏れではありません。

据付説明書にある「ねずみ」の記載

資料 記載されている内容
日立 ルームエアコン据付説明書
(警告)
「保護パイプは必ず使用する」「接続ケーブルが壁の中のメタルラスに接触したり、壁が中空の場合、ねずみにかじられたりして感電や火災の原因となります」
三菱電機 ルームエアコン据付工事説明書 「内外接続電線が壁の中の金属部などに接触したり、壁が中空の場合ねずみにかじられて感電などの危険が生じる場合がありますので、壁穴用スリーブは必ずご使用ください」
日立・三菱電機 いずれの説明書にもある注意 「室外機は、小動物のすみかになるような場所には設置しない」「小動物が侵入して、内部の電気部品に触れると、故障や発煙・発火の原因になることがあります」

2社とも、壁の中を通る配線がかじられることを前提に、保護パイプや壁穴用スリーブの使用を義務づけています(日立 ルームエアコン据付説明書(PDF)三菱電機 ルームエアコン据付工事説明書(PDF))。壁穴はφ65mmであけ、すき間はエアコン据付用パテで完全にシールする、とも書かれています。

NITEも「内部配線をかじってショート」を挙げています

製品事故を調べている公的機関のNITEは、ペットや小動物・害虫による事故についてこう公表しています。

小動物や害虫がエアコンやガスふろがまなどの製品内部に侵入し、基板に接触してショートしたり、内部配線をかじってショートさせるなどの事故を引き起こしています。製品の外観からは分かりにくいので、点火しにくいなどの動作不良が生じた際は、必ず点検を受けてください。

同じ資料では、平成24年度から平成28年度までの5年間に収集されたペット及び小動物や害虫による事故が78件、そのうち約72%にあたる56件が火災に至ったと報告されています。事故事例には「ネズミが冷蔵庫の電源コードをかじり、断線させたことでショートし、火災が発生した」というものも挙がっています。ここでの「小動物」はネズミや鳥、ヤモリなどを指すと注記されています(NITE「身近な動物が思わぬ火災事故を引き起こします」)。

NITEが挙げている対策は「小動物や害虫の侵入する可能性がある製品の周りはこまめに清掃し、動作不良や焦げ臭いなどの異常がみられた際は点検を受ける」というものです。焦げくさい、ブレーカーが落ちるといった症状が出ている場合は、水漏れよりそちらが先です。電気側の異常についてはエアコンの漏電の記事でまとめています。

注意
天井裏の配線を自分で確認しようとしないでください。東京都の資料でも、電気配線が壁を貫通して配電盤につながる部分のすき間をふさぐ作業は「危険なので、電気屋さんにお願いしましょう」と注記されています。

公的機関が示している、ネズミが通れるすき間と侵入経路

ここからは自治体と東京都の資料に沿って、エアコンまわりが侵入経路になり得るのかを見ていきます。

家ねずみ類3種類と、通れる穴の大きさ

東京都保健医療局の「都民のためのねずみ防除読本」によると、日本国内には18種類のねずみが生息し、そのうち住環境で問題になるのは家ねずみ類と呼ばれるクマネズミ・ドブネズミ・ハツカネズミの3種類です。

種類 体長 主な生息場所
ドブネズミ 22cm〜26cm 植込み、公園の地面、下水管、下水溝、ビル低層階
クマネズミ 15cm〜20cm ビル内部の高い所、壁の中、天井裏
ハツカネズミ 6cm〜9cm 畑(農村型)

同じ資料には、クマネズミとドブネズミの運動能力を整理した表もあります。出入り可能な穴の大きさは1.25cm、跳躍力は垂直に1m・水平に1.2m、4.5mの高所から水平に2.4m以上跳べ、15m落下しても怪我をしない、掘削力は地中に深さ1.5mの穴を掘る、と書かれています。クマネズミは電線や網の上を水平に歩けるとも記載されています。

すき間の目安は自治体によって表現が少し違います。江東区は「ねずみは人の親指が入るほど(約1.5センチメートルぐらい)の隙間があれば、屋内に侵入できます」としています。千代田区はさらに踏み込んで、「侵入口の大きさが1センチメートル以上あれば齧(かじ)って穴を拡げて侵入します」と書いています。ネズミが虫や猫と決定的に違うのは、この「今あるすき間を自分で広げる」という点です。

自治体が挙げる侵入経路にエアコンが入っています

千代田区は、クマネズミの侵入経路として次の場所を挙げています。

  • 電線等導入部や屋根裏通気口
  • エアコン室外機パイプ導入部
  • 閉まらない換気扇
  • 建物と基礎のすき間
  • 雨戸の戸袋のすき間
  • 配管導入部
  • 壁のひび割れ

エアコンの配管が壁を貫通している部分は、行政の資料でもはっきり侵入経路として名前が挙がっています(千代田区「ねずみの種類・特徴と対策」)。江東区も主な侵入路として「排水管周りや通風口、換気扇等の隙間」を挙げ、金タワシや目の細かい金網、パテ等でふさぐことが重要としています(江東区「ねずみの防除について」)。

エアコンの配管まわりの隙間をパテで埋めた様子

ふさぐ材料として公的資料に書かれているもの

東京都の資料では、侵入経路をふさぐことを「防そ修繕」と呼び、場所ごとの方法が示されています。エアコンに関係が深いところを抜き出すと次のとおりです。

場所 資料に書かれている方法
配管貫通部分 不燃性のパテやモルタルで埋める。応急措置としては、すき間に金属たわしを詰める
電線導入部 電気や電話線が外壁に貫通している部分のすき間を、不燃性のパテを詰めてふさぐ
通気口 格子の幅が1.25cm以上の場合は1cm位のものに取り替える
広いすき間に金網をかぶせる場合 網目幅が1cm以下の金網を使用する

ただし同じ資料は「天井裏や高所などの危険な場所については、専門業者に依頼したほうがよい場合もあります」とも書いています。エアコンの壁穴のパテについてはエアコンのパテ隠しエアコンの粘土(パテ)で詳しく扱っています。

エアコンのドレンホース先端に取り付けたドレンキャップ

ドレンホースの先に付ける防虫ドレンキャップについても触れておきます。ダイキンの案内は「小さな虫が外から部屋に侵入してくる場合は、『防虫ドレンキャップ』をドレンホースの先に取り付けることで、害虫の侵入を防ぎます」というもので、対象として書かれているのは虫です(ダイキン「エアコンの標準取付工事とは?」)。ネズミ対策として案内されているわけではないので、そこは分けて考えてください。キャップ自体の話はエアコンの防虫キャップにまとめています。

ネズミの気配があるときの相談先と、コウモリとの違い

法律上の扱いはコウモリと正反対です

動物が家に入り込んだときに必ず問題になるのが鳥獣保護管理法ですが、ネズミとコウモリでは扱いが正反対です。環境省の解説によると、鳥獣保護管理法は「鳥獣」を鳥類または哺乳類に属する野生動物と定義し、平成14年の法改正でネズミ・モグラ類も概念に含まれることになりました。ただし続けてこう書かれています。

鳥獣保護管理法第80条の規定により、「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼす鳥獣又は他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣」として、ニホンアシカ・アザラシ5種・ジュゴン以外の海棲哺乳類、いえねずみ類3種については、鳥獣保護管理法の対象外とされています。

つまり家に住み着くいえねずみ類は法の対象外です(環境省「鳥獣保護管理法の概要」)。コウモリは対象なので許可なく捕獲・殺傷できず、対応の順番も時期も制約を受けます。そちらはエアコンの臭いとコウモリの記事が本体なので、法令の詳しい話はそちらをご覧ください。この記事では「同じ小動物でも手続きがまったく違う」という点だけ押さえておきます。

衛生面について公的機関が書いていること

健康被害の話は私が判断できる領域ではないので、自治体の表現をそのまま引用します。江東区は「ねずみはふん尿を撒き散らす、感染症を媒介する、ダニを運ぶ等、衛生上有害な動物です。また、建物の柱や壁をかじって傷めたりします」と説明しています。東京都の資料も、ねずみによる被害として感染症の媒介、イエダニによる吸血被害、精神的被害、電線ケーブルやガス管のかじりによる停電や火災を挙げています。

この記事では駆除の方法や死骸の扱いは書きません。自治体によって窓口も対応も異なるためで、たとえば江東区は死骸の処理について清掃事務所に相談するよう案内しています。フンや痕跡から獣の種類を見分ける方法も書きません。素手で触らずに済ませるのが前提なので、見た目での判別を勧めるのは筋が悪いと考えています。

まず自治体に相談するのが早いです

東京都の資料は、ねずみについての相談・問い合わせ先を「お住まいの特別区(区役所・保健所)、及び市町村(市役所・町村役場)のねずみ昆虫等の防除事務を所管する部署」と案内しています。千代田区のように保健所が個別相談を受け付けている自治体もあります。ネズミの気配がある段階なら、まずここに連絡するのがいちばん早いです。

業者に頼む場合の注意点も、同じ東京都の資料に書かれています。確認事項として挙げられているのは、事前の生息調査と防除後の効果判定を実施していること、環境的防除の側面からも対策や指導ができること、防そ修繕の内容や施工方法を説明して理解を得ていること、費用は条件で異なるため見積書を出して納得できるまで説明できること、の4点です。そのうえで、こう釘を刺しています。

なお、ねずみ防除に直接関係ない作業を強く勧めたり、必要以上に顧客の危機感をあおるような業者は、適切とはいえません。

費用の相場については、この資料も「周囲の環境、住宅構造、作業条件などによって異なります」として金額を示していません。私も金額は書きません(東京都保健医療局「都民のためのねずみ防除読本」(PDF))。

エアコンの水漏れとネズミに関するよくある質問

Q1. 水漏れとカリカリ音が同時に起きています。ネズミが原因ですか?

A. 同時に起きていることと、片方がもう片方の原因であることは別です。メーカーが挙げている水漏れの原因はドレンホースの状態やエアフィルターの汚れで、動物は入っていません。音のほうは自治体の窓口へ、水漏れのほうは販売店やメーカーの修理窓口へ、別々に相談するのが確実です。

Q2. ドレンホースに傷があります。ネズミにかじられた跡でしょうか?

A. 傷の形からかじり跡かどうかを判定する基準を示した公的資料やメーカー資料は見つけられませんでした。この記事で見分け方の表を作らないのはそのためです。ホースが破損している場合の交換はドレンホースの交換の記事を参考に、販売店や修理窓口へご相談ください。

Q3. ネズミは駆除してしまって法律上は問題ないのですか?

A. 環境省の解説では、いえねずみ類3種は鳥獣保護管理法第80条により法の対象外とされています。コウモリのように許可が必要な動物とは扱いが異なります。ただし具体的にどうするかは自治体の案内に従ってください。この記事では駆除の手順は扱いません。

Q4. 室外機のまわりに物を置いていますが、関係ありますか?

A. 日立と三菱電機の据付説明書は「室外機は、小動物のすみかになるような場所には設置しない」とし、周辺をきれいに保つよう利用者に依頼するよう書いています。NITEも、小動物や害虫が侵入する可能性がある製品の周りはこまめに清掃するよう案内しています。

Q5. すぐ点検を頼んだほうがよいのはどんなときですか?

A. NITEは「動作不良や焦げ臭いなどの異常がみられた際は点検を受ける」よう案内しています。焦げくさい、運転が不安定、ブレーカーが落ちるといった症状は、水漏れとは別に扱ってください。日立も、吹き出し口以外から水が漏れている場合は自分での対処が難しいとして点検を勧めています。

まとめ

調べた結果を一言でまとめると、ネズミとエアコンの本当の接点は水漏れではなく配線でした。ドレンホースをかじられて水が漏れるという説明はメーカー資料にありませんでしたが、壁の中の接続ケーブルがねずみにかじられて感電や火災につながるという警告は、日立と三菱電機の据付説明書に明記されていました。NITEも内部配線のかじりによるショート事故を報告しています。

一方で、エアコンの配管が壁を貫通している部分が侵入経路になり得ることは、千代田区が名指しで挙げているとおりです。出入りできる穴は1.25cm、1cm以上のすき間ならかじって広げられる、というのが公的資料が示している数字でした。ネズミの気配があるならまず自治体の窓口へ、水漏れそのものは販売店やメーカーの修理窓口へ。危機感をあおる業者に急かされる必要はありません。

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