こんにちは、エアコンラボのアキです。
「エアコンの取り付け工事って、どのくらいうるさいんだろう」「マンションだから、近所から苦情が来ないか心配」。工事の日が決まってから、この不安に行き当たる方は多いはずです。
検索すると「穴あけは○デシベル」「工事は1時間半〜2時間」といった数字が並びますが、出どころをたどると工事会社や比較サイトの自社コラムばかりでした。そこでこの記事では、騒音規制法とその政令の条文、環境省の告示、厚生労働省のガイドライン、国土交通省のマンション標準管理規約、メーカーの据付説明書だけを根拠に、決まっていることと決まっていないことを分けて整理しました。原典に無かったことは「無かった」とそのまま書いています。

エアコン工事は、騒音規制法の規制対象ではありませんでした
規制がかかるのは、政令が名指しした8種類の作業だけ
騒音規制法が規制しているのは、工事のうち「特定建設作業」に当たるものだけです。第2条第3項は「この法律において『特定建設作業』とは、建設工事として行なわれる作業のうち、著しい騒音を発生する作業であつて政令で定めるものをいう」と書いています。政令のリストに載っていない作業は、この法律の対象になりません。そのリストが騒音規制法施行令の別表第二で、載っているのは次の8種類です。
| 号 | 別表第二に挙げられた作業(要約) |
|---|---|
| 一 | くい打機・くい抜機・くい打くい抜機を使用する作業 |
| 二 | びよう打機を使用する作業 |
| 三 | さく岩機を使用する作業 |
| 四 | 空気圧縮機(電動機以外の原動機で、定格出力15キロワット以上)を使用する作業 |
| 五 | コンクリートプラント・アスファルトプラントを設けて行う作業 |
| 六〜八 | バックホウ(80キロワット以上)、トラクターショベル(70キロワット以上)、ブルドーザー(40キロワット以上)を使用する作業 |
エアコンの取り付けで音が出るのは、据付板をネジで留める作業と、配管を通す壁穴をあける作業です。据付説明書に工具の指定はありませんが、使うのは手持ちの電動工具で、くい打機やさく岩機といった別表第二の機械ではありません。
そのうえ「その日のうちに終わる作業」は定義から外れている
もう一段の除外があります。施行令第2条は、別表第二の作業を挙げたうえで「ただし、当該作業がその作業を開始した日に終わるものを除く」と続けています。仮に該当する機械を使っても、1日で終わる工事なら特定建設作業にはなりません。エアコン1台の取り付けはこの点でも対象外です。
対象外ということは、作業開始の7日前までに市町村長へ届け出る義務(第14条)も、環境大臣が定めた基準も、エアコン工事には及ばないということです。横浜市も、特定建設作業に当たらない作業について「作業日や作業時間等の法的規制はかかりません」と書いています。
「昼間55デシベル以下」という環境基準も、工事の音には使えません
環境省の「騒音に係る環境基準について」には、地域の類型ごとに昼間50〜60デシベル以下、夜間40〜50デシベル以下という数字が並びます。比べたくなる数字ですが、同じ告示の第3にこう書かれています。
「第3 環境基準の適用除外について この環境基準は、航空機騒音、鉄道騒音及び建設作業騒音には適用しないものとする。」
工事の音は、はじめから対象外だと明記されています。運転中のエアコンの音とは当てはめる物差しが違うわけです。据え付けたあとの音はベランダのエアコン室外機がうるさい原因と対策のほうを参考にしてください。
「穴あけは○デシベル」という数字は、公表されていませんでした
公的な85デシベルは、隣の家ではなく作業者の耳元の話
メーカーの据付説明書、大手販売店の工事案内、環境省・自治体の資料を当たりましたが、エアコンの配管穴をあけるときの音の大きさを数値で示した資料は見つけられませんでした。よく見かける「80〜90デシベル」に対応する原典にはたどり着けていません。
数値が出てくるのは、別の文脈です。ひとつは環境省の告示「特定建設作業に伴つて発生する騒音の規制に関する基準」で、「特定建設作業の場所の敷地の境界線において、八十五デジベルを超える大きさのものでないこと」と定めています。ただしこれは前章の8種類への基準で、エアコン工事には適用されません。
もうひとつは厚生労働省の「騒音障害防止のためのガイドライン」です。別表第二に「インパクトレンチ、ナットランナー、電動ドライバー等を用い、ボルト、ナット等の締め付け、取り外しの業務を行う作業場」が挙がっており、解説はこの別表を「等価騒音レベルが85dB以上になる可能性が大きい作業場を掲げたもの」と説明しています。手持動力工具の例には電動ドリルも入っています。
混同しやすい点: 厚生労働省の85dBは、工具を持つ作業者を難聴から守るための数字です。測るのは作業者の位置で、隣室や隣家で聞こえる大きさではありません。「近所にこれだけ響く」と読み替えることはできません。
時間が書かれている工程は、真空引きだけでした
音の大きさは分からなくても、工程ごとの中身は据付説明書に書かれています。富士通ゼネラルとアイリスオーヤマのルームエアコン据付説明書は、どちらも「壁穴は、直径 65mmの穴を室外側に下りぎみにあけます」と書き、穴あけを1か所の作業として扱っていますが、かかる時間には触れていません。時間が明記されているのは、配管の空気を抜く真空引きの「真空引きを 15 分以上行い」「1 〜 2 分間そのままの状態にして連成計の針が戻らないことを確かめます」だけでした。
| 工程 | 据付説明書に書かれている内容 | 音についての記載 |
|---|---|---|
| 壁の穴あけ | 直径65mm、室外側に下りぎみ。外径60mmの壁穴用パイプを挿入 | 記載なし |
| 据付板の固定 | ネジ(大)5本以上で固定。石膏ボードはカサ式ボードアンカー | 記載なし |
| 真空引き | 15分以上。停止後1〜2分間、針が戻らないことを確認 | ポンプの運転音の変化で状態を判断する記載 |
| 試運転 | 冷温風・ドレン排水を確認 | 「運転音や吹き出した風・ドレン排水が、ご近所の迷惑になっていませんか」 |
注目したいのは最後の行です。据付説明書が近隣への影響に触れているのは、工事中の音ではなく試運転の運転音のほうでした。穴あけの音について近隣への配慮を求める記述は、2社のどちらにもありません。壁の穴そのものはエアコン工事で外壁に穴は開けられる?で扱っています。
工事の所要時間を公表していたのは1社だけでした
大手販売店5社の工事案内を「所要時間」「作業時間」で調べたところ、数字を出していたのは楽天ビックだけで、「作業時間は、標準設置工事の内容で、1台につき1〜2時間ほどいただきます」という記載でした。よく見る「1時間半〜2時間」の出どころは、今回も確認できていません。日程の決まり方はエアコン工事はいつ来てくれる?で扱っています。

マンションでは、挨拶より先に決まっている手続きがあります
「エアコンの設置」は理事長の承認が要る工事の具体例に挙がっている
国土交通省の令和7年改正マンション標準管理規約は、第17条第1項で「共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのある」修繕等について、あらかじめ理事長に申請し書面による承認を受けなければならないと定めています。コメント第17条関係②は、その具体例として「床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置」を挙げています。
承認が要らない工事でも、騒音は届出の対象になっている
近隣の音の話に直結するのは、同じ第17条の第7項です。
「区分所有者は、第1項の承認を要しない修繕等のうち、工事業者の立入り、工事の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等工事の実施中における共用部分又は他の専有部分への影響について管理組合が事前に把握する必要があるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長にその旨を届け出なければならない。」
コメント第17条関係⑫は、この届出について「他の居住者等に影響を与えることが考えられるため、上記届出に加えて工事内容等を掲示する等の方法により、他の区分所有者等へ周知を図ることが適当である」としています。何軒回るかを考える前に、届出と掲示という道筋がすでに用意されているわけです。規約は各マンションで違うので、手元の管理規約と使用細則を確認してください。
戸建て・賃貸で、工事の前にできること
あいさつ回りは義務ではない、と自治体が明言しています
横浜市の環境相談のよくある質問には、「工事前のあいさつ回りも無く工事が始まりました」という問いへの回答として「工事前のあいさつ回りは、法令等で義務付けられたものではありません」と書かれています。
そのうえで横浜市は、特定建設作業に当たらない作業についても「騒音・振動の大きさや作業時間等に配慮するようにお願いをしています」としています。東京都では環境確保条例第123条により、すべての建設工事を行う者に「人の健康または生活環境に障害を及ぼさないよう努めなければなりません」という努力義務がかかります。義務ではないが配慮は求められている、というのが工事の音の位置づけです。
時間帯は法律ではなく、あくまで目安として
特定建設作業の基準は、1号区域で午後7時から翌日の午前7時まで、2号区域で午後10時から翌日の午前6時までを作業禁止としています。1日の作業時間は1号区域10時間、2号区域14時間、同一場所で連続6日まで、日曜日その他の休日は不可です。エアコン工事は対象外ですが、行政が線を引いた時間帯なので、依頼日時の目安にはなります。
それでも困ったときの相談先
- マンション: 管理規約と使用細則を確認し、理事長へ届出。掲示による周知も規約コメントが勧めている
- 賃貸: 穴あけや電気工事は大家・管理会社の事前許可が必要だと販売店側も明記している
- 近隣とこじれたとき: 家屋の被害などは民事の問題で、横浜市は法テラスや無料法律相談を案内している
- 工事への不満: エアコン工事のクレームはどこに言う?

よくある質問と、この記事でわかったこと
エアコン工事の音に関するよくある質問(FAQ)
Q1. エアコン工事に役所への届出は必要ですか?
A. 第14条の届出は特定建設作業を伴う工事に課されるもので、エアコン工事は別表第二の8種類に当たらないため対象外です。ただしマンションでは、管理規約にもとづく理事長への申請・届出が別に必要になることがあります。
Q2. 穴あけの音は何デシベルですか?
A. メーカー・販売店・行政のいずれの資料でも見つけられませんでした。厚生労働省のガイドラインは電動ドリル等を扱う作業場を「等価騒音レベルが85dB以上になる可能性が大きい」としていますが、これは作業者の位置での話です。
Q3. 日曜日にエアコン工事を頼んでも大丈夫ですか?
A. 法令上の禁止はありません。日曜日その他の休日を禁じているのは特定建設作業への基準で、エアコン工事は対象外です。横浜市も「特定建設作業に該当しない作業の場合は、作業日の規制はありません」と回答しています。
まとめ:規制の対象外だからこそ、規約と配慮の話になる
エアコンの取り付け工事は、騒音規制法施行令別表第二の8種類に当たらず、しかも当日中に終わるため、法律上の「特定建設作業」にはなりません。届出義務も、85デシベルという基準も、作業時間の制限もかかりません。環境基準のデシベル値も、告示自身が建設作業騒音を適用除外にしています。穴あけの音が何デシベルかを示した資料も、今回はどこにも見つけられませんでした。
代わりに原典から言えるのは、マンションでは管理規約という別のルールが動くこと、自治体は「義務ではないが配慮を」という立場をとっていることです。工事日が近づいたら、まず手元の管理規約と使用細則を開いてみてください。日程を動かしたいときはエアコン工事の延期もどうぞ。

