こんにちは、エアコンラボのアキです。
寝室のエアコンの真下にベッドがあって、「エアコンの電磁波は体に悪い」という話を見かけて不安になった。毎晩その下で寝ているとなると、気になって当然ですよね。
この記事では、環境省などの公的機関が出している資料の原文をもとに、エアコンからどのくらいの磁界が出ているのか、距離でどう変わるのか、健康への影響について何が分かっていて何が分かっていないのかを、順番に見ていきます。
- 電磁波と電磁界の違い、リモコンの赤外線が別の話である理由
- エアコン室内機の磁界の測定例と国際ガイドラインの値
- WHOやIARCが健康影響について示している見解
- 室外機・対策グッズ・電磁波過敏症について言えること言えないこと

エアコンの電磁波とは?まず言葉と基準を確認
最初に、「電磁波」とは何を指すのか、目安となる基準はどこにあるのかを確認します。
電磁波と電磁界の違い
環境省の冊子「身のまわりの電磁界について」(令和5年3月)では、「電磁界」を電圧と電流が流れている電線などのまわりに発生する「電界」と「磁界」の総称と説明しています。一方の「電磁波」は、電界と磁界が交互に発生しながら空間を伝わっていく波のこと。ふだん「電磁波」とひとくくりにされている話は、家電の場合、ほとんどがこの電界・磁界のことなんです。
同じ冊子によると、家電製品からは電源の50Hzまたは60Hzの超低周波磁界が出ています。さらにインバーターやモーターを使う製品からは、より周波数の高い「中間周波磁界」も生じるとされています。エアコンはまさにインバーターとモーターを使う家電なので、両方が関係してくる製品と言えます。
ちなみにリモコンが使っている赤外線も、広い意味では電磁波の仲間です。ただ周波数がまったく違い、この記事で扱う50Hz・60Hzの電磁界とは別の種類のもの。リモコンの赤外線について安全性を数値で示した公的資料は今回の調査では確認できなかったので、この記事では「別の話」と区別するだけにとどめます。
国際ガイドラインと日本の規制値
電磁界の目安としてよく使われるのが、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインです。環境省の冊子に載っている値を表にすると、次のとおりです。
| 項目 | 50Hz | 60Hz | 対象 |
|---|---|---|---|
| ICNIRP 2010年版 磁界 | 200μT | 200μT | 一般公衆の参考レベル |
| ICNIRP 1998年版 磁界 | 100μT | 83.3μT | 旧ガイドライン |
| ICNIRP 電界 | 5kV/m | 4.2kV/m | 一般公衆の参考レベル |
| 日本の規制(電力設備) | 磁界200μT以下・電界3kV/m以下 | 送電線などの電力設備 | |
ここで注意したいのが一番下の行です。日本の200μT・3kV/mという値は、経済産業省の「電気設備に関する技術基準を定める省令」による送電線などの電力設備向けの規制で、家電製品を対象にしたものではありません。家電の話でこの数値が「法律の基準」として紹介されていたら、少し割り引いて読むのがよいかなと思います。
なお家電の磁界は、JIS C 1912:2014(国際規格IEC 62233に対応)という測定方法の規格で測ることになっています。数値は環境省の環境省「身のまわりの電磁界について」(令和5年3月)で確認できます。
エアコンから出る磁界の大きさと距離の関係
では、エアコンからは実際にどのくらいの磁界が出ているのでしょうか。ここでは原文で数値を確認できた資料と、数値までは読み取れなかった資料を分けて紹介します。
室内機は0cmで1.34μTという測定例
環境省の平成17年度の報告書(第3章、p.25)には、エアコン室内機について次のような記述があります。「エアコン(室内機)の磁界は、距離0cmで1.34μT、距離20cmで0.734μT、距離50cmで0.104μTと小さい」。この値は、測定値が最大になる面で測ったものとされています。
| 室内機からの距離 | 磁界(報告書の値) | 200μTに対する割合(筆者が計算) |
|---|---|---|
| 0cm | 1.34μT | 約0.67% |
| 20cm | 0.734μT | 約0.37% |
| 50cm | 0.104μT | 約0.05% |
右の列は、報告書の値をICNIRP 2010年版の200μTで私が単純に割り算したもので、報告書に載っている比率ではありません。目安として見てください。また報告書自体は、当時のガイドライン値100μT(50Hz)を前提に書かれています。
表を見ると、20cm離れるだけで値はおよそ半分、50cmでは0cmの1割以下まで下がっています。環境省の冊子にも「磁界の強さは電流が大きいほど強く、発生源から離れると弱まります」とあり、この傾向と合っていますね。原文は環境省 平成17年度報告書 第3章(PDF)で読めます。
この報告書は平成17年度(2005年度)のもので、今のエアコンの値とは違う可能性があります。また報告書自身も、参考レベルは全身がばく露される場合に意味を持つものであり、文献ごとの数値をそのまま比べても意味がない、と注意書きをしています。
新しい測定でもガイドライン内という結果
もう少し新しい資料もあります。一般財団法人 家電製品協会が平成26年(2014年)3月にまとめた調査では、10Hz〜400kHzの範囲で29製品72機器を測定しています。対象には「ルームエアコン 8〜12畳用」が含まれていて、暖房の最高温度設定、室内機の周囲温度15±5℃という条件で測られました。
結論は「ICNIRPのガイドライン(2010)を超える機器は見られなかった」というものです。インバーター由来の中間周波数まで含む範囲での結果なので、これは心強い材料かなと思います。ただし、ルームエアコンの具体的な割合はグラフ画像で示されていて、私は数値を読み取れていません。原文は家電製品協会「家電製品から発せられる電磁波測定」調査(PDF)です。
また、電気安全環境研究所 電磁界情報センターの資料「家電製品から発生する磁界の大きさ」も、エアコン(冷暖房運転)を含む42種目131機器を測定。ICNIRP2010の参考レベルと比べて「十分小さいことが分かります」とまとめています。こちらもエアコンのμT値はグラフ画像のため、この記事では数値を書いていません。
室外機の値は調べた範囲で見つからず

室外機についても気になりますよね。ただ、今回確認した環境省の平成17年度報告書(第3章・資料表)、令和5年の冊子、家電製品協会の2014年の調査、電磁界情報センターの資料では、室外機の磁界の測定値を見つけられませんでした。平成17年度報告書の値も室内機だけです。
そのため「室外機は◯μT」とは書けません。分かっているのは、環境省が示す「発生源から離れると弱まる」という一般的な性質までです。ベランダの室外機と寝室のベッドの間には壁と距離があるので、その点は判断材料の1つになるかと思います。
体への影響と対策の考え方
数値が小さいとして、では健康への影響はどう考えればよいのでしょうか。ここでは環境省の冊子が引用しているWHO・IARCの見解と、電磁波過敏症、対策グッズについて順に見ていきます。
WHO・IARCの見解と小児白血病の話
まず強い磁界を短時間浴びたときの「急性影響」について、WHOの環境保健クライテリア(EHC No.238、2007年)は、ガイドラインを守れば適切な防護が得られるとしています。一方で長期間の話になると、少し複雑です。
WHOは、日常的な0.3〜0.4μT以上の慢性的な磁界ばく露について、小児白血病のリスク上昇を示す疫学研究があるとしつつ、「因果関係があると考えるほどには証拠は強くないが、関心を残すには十分に強い」と述べています。国際がん研究機関(IARC)は2002年に、超低周波磁界を「発がん性があるかもしれない」グループ2Bに分類しました。
2Bと聞くとドキッとしますが、WHO自身が「因果関係と見なせるほど強いものではない」とも書いている点は、セットで知っておきたいところ。また0.3〜0.4μTという数値は「日常的・慢性的なばく露」の話で、先ほどの室内機の表(最大となる面で測った値)とそのまま比べるものではない点にも注意してください。あなたは、どちらの情報を先に目にしましたか?
電磁波過敏症について言えること
頭痛や不眠などの症状を電磁波のせいだと感じる「電磁波過敏症」についても、環境省の冊子はWHOのファクトシート(No.296、2005年)を引用しています。そこでは、明確な診断基準がなく、症状を電磁界ばく露と結び付ける科学的根拠は示されていない、という趣旨が書かれています。冊子は「電磁過敏症」というWHOの呼び名を使っています。
同時に、同じファクトシートは「それぞれの症状は確かに現実のものです」とも述べています。つまり、つらさそのものは本物。原因が何であれ、体調不良が続くなら医療機関に相談するのが一番かなと思います。私は医療の専門家ではないので、この記事では公的資料の紹介までにとどめますね。
電磁波カットグッズと配置換えの考え方

電磁波カットをうたうシールやシートについては、今回調べた公的資料の中で効果を評価したものは見つかりませんでした。そのため、この記事では「効く」「効かない」のどちらも書きません。
配置換えについても、「◯m離せば安全」という距離の目安は、確認した資料には書かれていませんでした。言えるのは、室内機の測定例では50cmで0.104μTまで下がっていたことと、ICNIRP 2010年版の200μTと比べるとかなり小さい値だったことです。それでも気になるなら、ベッドの位置を少しずらすのは手軽な選択肢の1つでしょう。
エアコンの電磁波でよくある疑問とまとめ
最後に、エアコンの電磁波についてよく聞かれる疑問に答えたうえで、記事のポイントを振り返ります。
エアコンの電磁波に関するよくある質問(FAQ)
Q1. エアコンの真下で寝ても電磁波の影響はありますか?
A. 環境省の平成17年度報告書では、室内機の磁界は0cmで1.34μTと、200μTより小さい値でした。2014年の家電製品協会の調査でも、ルームエアコンを含めガイドラインを超える機器は見られなかったとされています。
Q2. 何cm離れれば安全という目安はありますか?
A. 今回確認した公的資料には、エアコンについて「◯cm離せば安全」という目安は書かれていませんでした。分かっているのは、磁界は発生源から離れると弱まるということと、室内機の測定例では20cmで0.734μTまで下がっていたことです。
Q3. リモコンからも電磁波は出ていますか?
A. エアコンのリモコンは赤外線を使っていて、赤外線も広い意味では電磁波の一種です。ただ、この記事で扱った50Hz・60Hzの電磁界とは種類が違います。リモコンの赤外線の安全性を数値で示した公的資料は、今回の調査では確認できませんでした。
Q4. 日本に家電の電磁波を規制する基準はありますか?
A. よく見かける200μT・3kV/mは、送電線などの電力設備を対象にした経済産業省の基準です。家電製品向けの規制値は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。家電の測定方法はJIS C 1912:2014で定められていて、評価にはICNIRPのガイドラインが使われています。
エアコンの電磁波について押さえたいこと
- 家電の「電磁波」は主に50Hz・60Hzの電界と磁界の話で、リモコンの赤外線とは別物
- 室内機の磁界は0cmで1.34μT、50cmで0.104μTという測定例があり、200μTと比べて小さい
- 2014年の調査でもルームエアコンを含めガイドライン超えの機器は見られなかった
- 室外機の値と「◯m離せば安全」という目安は、調べた範囲では確認できなかった
- WHOは小児白血病との関連を因果関係とまでは見なしていない
エアコンの電磁波は、公的資料で確認できる範囲では国際ガイドラインよりかなり小さい値でした。それでも気になるなら、ベッドの位置を少しずらすなど、無理のない範囲で調整すれば十分かなと思います。寝るときのエアコンの使い方については、寝るときの除湿運転の使い方をまとめた記事も参考にしてみてください。

