こんにちは、エアコンラボのアキです。
「自衛隊が紹介したエアコンの節電法」。SNSやニュースでこの話題を見かけて、うちでも試してみようかなと思った方は多いんじゃないでしょうか。室外機の上にバケツを置いて、濡らしたタオルをかけておく。道具は家にあるものだけ。しかも電気代が半分になるかもしれない、と。
ただ、いざやろうとすると手が止まりますよね。室外機って電気で動いている機械です。そこに水を持っていって、本当に壊れないのか。そして半分という数字は、誰がどうやって測ったものなのか。
そこで私は、報道の内容とエアコンメーカーの公表資料を突き合わせてみました。取扱説明書のPDFを1社ずつ開いて該当箇所を読む、という作業です。結果は少し意外でした。同じ方法を実際に測っていたメーカーがあり、その実測は話題とは逆の方向を示していたんです。
- 報道された方法の中身と、電気代が半分という数字の出どころ
- ダイキンが公表した濡れタオルの実測値と、その測定条件
- メーカー7社の取扱説明書に何が書かれていて、何が確認できなかったか
- 打ち水と、室外機に水をかけることの違い

エアコンの節電で話題になった自衛隊の方法とは
まず、何が紹介されたのかを正確に押さえておきます。ここを曖昧にしたまま安全性の話をしても噛み合わないので、報道で確認できた範囲と、確認できなかった範囲を先に分けておきますね。
報道されたバケツと濡れタオルの手順
私が本文を取得できた報道は、オトナンサーの記事でした。それによると、発信元は自衛隊東京地方協力本部の公式インスタグラムアカウント。方法は、水を張ったバケツにタオルを浸し、そのタオルを室外機の天板にかけておく、というものです。タオルが吸い上げた水が蒸発するときの気化熱で、室外機を冷やすという考え方ですね。
報道では、あわせて3つの注意点が紹介されていました。1つ目は天板への直置きを避けること。100円ショップのスノコや耐震マットを敷く、という案内です。2つ目は、冷やすべきなのは天板ではなく背面のアルミフィン(熱交換器)であり、タオルが空気の流れを妨げないようにすること。3つ目は、台風や強風の日、長時間の外出時にはバケツとタオルを室内へ戻すこと。
電気代が半分という数字の出どころ
気になるのは効果の数字です。そこで報道の本文を読み直しました。結論から言うと、今回確認したオトナンサーの記事本文には、削減率の根拠となる測定条件・測定値の記載は見つかりませんでした。「電気代が半分に!?」は記事の見出しに置かれた表現で、本文中に何kWhから何kWhへ減った、という数字は示されていないんです。
もう1本、上位に出てくるオリコンの記事も開きましたが、こちらは文字コードが壊れていて本文を読み取れませんでした。読めなかったものを「書いていない」とは扱えないので、「確認できなかった」とだけ記しておきます。
つまり半分・半減という数字は見出しの表現であって、公表された実測値に紐づいたものではない、というところまでが今言える範囲です。
投稿の原文には到達できていません
正直にお伝えしておきます。私は自衛隊東京地方協力本部のXとインスタグラムの両方に当たりましたが、該当する投稿本文そのものには到達できませんでした。Xはサーバーがエラーを返し、インスタグラムはプロフィール欄までしか読めなかったためです。
ですのでこの記事は、あくまで報道された内容を対象にしています。発信元を評価したり批判したりする意図はまったくありません。扱うのは「この方法をやると室外機にどう作用するのか」という一点だけです。
ダイキンは同じ方法を実測して結果を公表している
ここからが本題です。上位の記事を10件ほど見た限りでは、メーカーの公表資料に当たった記事が見当たりませんでした。それで自分で探したところ、大手が同じ方法を測って公開していたんです。
濡れタオルありのほうが消費電力量は多かった
ダイキン工業が2024年4月24日に出したダイキン公式のニュースリリース「エアコンの効果的な節電術で削減できる電気代を4つのケースで調査」に、室外機に濡れタオルをかけた場合の実測が載っています。数字はこうです。
| 条件 | 消費電力量 | 測定日 | 設定温度 |
|---|---|---|---|
| 室外機に濡れタオル あり | 3.87kWh | 2023年8月8日 | 26℃ |
| 室外機に濡れタオル なし | 2.77kWh | 2023年8月2日 | 27℃ |
測定は8時から19時までの11時間。場所は神奈川県横浜市にある鉄筋コンクリート造6階建ての2階、約20畳のリビングダイニングです。
読み間違いではありません。濡れタオルをかけたほうが、消費電力量は多く出ています。ITmediaはこの差について、1カ月換算でおよそ1,020円電気代が増える計算になると報じました。ただしこの1,020円はITmediaによる換算であり、ダイキン自身の公表値ではない点は添えておきます。
ダイキンが挙げた理由は空気の通り道
なぜ増えたのか。ダイキンはリリースの中で理由も書いています。原文はこうです。
濡れタオルが室外機側面の吸込口や吹出口の一部に垂れ下がり、空気の通り道をふさいでしまったためと考えられます
室外機は、後ろから空気を吸い込んで前へ吐き出しながら熱を捨てています。その通り道にタオルが垂れると、捨てたはずの熱をまた吸い込むことになる。冷やそうとした行為が、逆に熱を溜める方向に働いてしまったわけですね。
ダイキンは同じリリースで、エアコンの消費電力の約8割は圧縮機で使われるとも説明しています。圧縮機は室外機の中にあります。室外機まわりを整える発想自体は理にかなっているのですが、整え方を一つ間違えると、そのまま消費電力の大部分に跳ね返るわけです。
この数字をそのまま一般化はできません
ここは慎重に読んでください。この2つの数値は、別々の日に、別々の設定温度で測られたものです。あり側は8月8日の26℃、なし側は8月2日の27℃。外気温も日射も同じではありませんし、設定温度が1℃違えば消費電力量も変わります。
ですから「濡れタオルを載せると必ず1.4倍になる」とは言えません。私が言えるのは、メーカーが自社で測って公開した結果は、少なくとも節電の方向を示さなかったということまでです。逆に「気化熱で消費電力が何%下がる」という公表値のほうは、今回確認したメーカー各社の資料・環境省のページ・報道の範囲では見つけられませんでした。
◆アキのワンポイントアドバイス
節電の話でいちばん大事なのは、数字そのものより測定条件です。3.87と2.77も条件つきの1例として受け取ってくださいね。
メーカー7社の取扱説明書を1社ずつ確認しました
次は安全の話です。「どのメーカーも禁止している」といった大づかみな書き方はせず、確認できた社と確認できなかった社を分けて出します。
水の入った容器を載せないと書いている社
話題の方法は、バケツに水を張って室外機の上に置くものです。これは水の入った容器を載せる行為そのものにあたります。そこで各社の「安全上のご注意」を、この表現で検索してみました。
| メーカー | 確認できた記述 |
|---|---|
| パナソニック | 「室外ユニットは」の欄に「水洗いしたり、花瓶など水の入った容器を載せたりしない。(水が中に入ると感電や発火の原因)」 |
| シャープ | 「室内機・室外機を直接水洗いしたり、水の入った容器を載せたりしない。(感電・発火の原因)」 |
| 富士通ゼネラル | 「水洗いしない、花びんなど水の入った容器を載せない(内部に水が侵入して電気絶縁が悪くなり、故障や感電、火災の原因)」 ※この欄に室内・室外の別は明示されていません |
| 日立 | 「本体に水をかけない 感電の原因になります。」 ※室外機に限定した記述ではありません |
| 東芝 | 「エアコン本体を水洗いしない 感電の原因になります。」 ※水の入った容器に相当する記述は見つかりませんでした |
| 三菱電機 | 取扱説明書48ページ全文を複数の語で検索しましたが、室外機への水や水の入った容器に関する記述は見つかりませんでした |
| ダイキン | 取扱説明書の該当記述には今回到達できませんでした(取材コメントは後述) |
読み取れることを正確に言うと、室外機を名指しで書いているのはパナソニックとシャープの2社です。富士通ゼネラルは同じ記述がありますが、その欄が室内機に限った話なのか室外機も含むのかまでは読み取れませんでした。日立と東芝は「本体」という言い方で、室外機限定とは書かれていません。
ですので「どのメーカーも禁止している」とは書けません。同時に「明記していない社があるからやってよい」とも言えません。確認できたのはここまで、というのが誠実な線引きだと思っています。
室外機の上に物を載せないは確認した全社に記載
一方で、こちらは足並みがそろっていました。室外機の上に物を載せないという趣旨の記述は、今回確認した7社すべてにありました。
| メーカー | 挙げられている理由 |
|---|---|
| パナソニック | ベランダなど高い場所に設置の場合、転落の原因 |
| シャープ | ベランダなどでは、落下の原因 |
| 三菱電機 | 落下・転倒により機器の故障や破裂、ケガなどの原因 |
| 日立 | 落下や転倒などにより、けがの原因 |
| 東芝 | 落下・転倒などによりけがの原因。また変形などにより、火災・感電の原因になります |
| 富士通ゼネラル | 落下、転倒などにより、けがの原因/破損の原因 |
| ダイキン | 落下の危険や、重さによっては室外機の変形や故障などにつながる場合もあります(ニュースリリース) |
注目したいのは東芝です。6社の取扱説明書の中で、載せることの理由に変形による火災・感電まで挙げているのは東芝だけでした。落ちてケガをする話だけではないんですね。
ここで報道の1つ目のルールを思い出してください。スノコや耐震マットを敷く、という案内でした。ただ各社が挙げている理由は、サビや傷ではなく落下・転倒・変形です。何かを敷いても、載っていることと重さは変わりません。敷けば載せてよい、と読める記述は、今回確認した範囲では見当たりませんでした。水を張ったバケツはそれなりの重さになりますし、ベランダ設置ならなおさら気をつけたいところです。
取扱説明書の探し方
取扱説明書は各社の公式サイトで型番から無料で開けます。型番は室内機の前面パネルの内側か、室外機側面のラベルにありますよ。読むべきは冒頭の「安全上のご注意」と「お手入れ」の章。この2か所を「水」「容器」「載せ」で追えば数分で見つかります。私が今回参照したのは以下です。
- パナソニック ルームエアコン取扱説明書(CS-221CJ 他)
- シャープ ルームエアコン取扱説明書(AC-N22ATC 他)
- 富士通ゼネラル ルームエアコン取扱説明書(AS-C22H-W 他)
- 三菱電機 霧ヶ峰 取扱説明書
- 日立 ルームエアコン取扱説明書(RAS-KJ22Y)
なお東芝については、今回はメーカー公式ではないミラーサイトに置かれたPDFから引用を確認しました。公式のPDFに当たり直せていないため、この記事ではリンクを掲載していません。お手元の機種の説明書でご確認ください。
打ち水と室外機に水をかけることは別の話です
「でも打ち水は環境省も勧めているし、水で冷やすこと自体は正しいのでは?」と思いますよね。ここは混ざりやすいので丁寧に分けます。
環境省が案内する打ち水は地面に撒くもの
環境省のウェブマガジンecojinが2023年8月9日に公開した打ち水の記事には、日中の打ち水では気温が下がらなくても体感温度は約1.5℃下がるとされていると書かれています。ポイントとして挙げられているのは次のようなことです。
- 水がすぐに蒸発しない地面に撒くと効果が長持ちする
- 日なたより日陰に撒く
- 朝や夕方の日差しが弱い時間帯に撒くと涼しさが続く
- 風呂の残り水、子ども用プールの残り水、雨水、米の研ぎ汁でもよい
ここで大事なのは、今回確認した環境省のこのページに、エアコンの室外機への言及は見当たらなかったということです。打ち水は地面に撒く話であって、機械に水をかける話ではありません。ですので約1.5℃という数字を、室外機を冷やしたときの効果として持ち出すことはできません。
ちなみにダイキンも、先ほどの2024年のリリースの中で「室外機に日陰を作ったり、室外機周辺に打ち水をしたりすると節電効果が期待できます」と書いています。周辺に、です。この一語が効いていますよね。
ダイキンは水道水を勧めていないと答えている
では室外機に直接水をかけるのはどうなのか。ダイキンは報道の取材にこう答えています。2021年7月16日のマイナビニュースに載った広報担当者のコメントです。
室外機を冷やした方が省エネになるので、あながち間違いとは言えません。ただ、室外機は雨でぬれる分には問題ないのですが、水道水をかけると熱交換器の劣化が進んでしまう場合もあるため、お勧めしていません。
2020年8月18日の東海テレビの取材でも、別の担当者が「電子部品や電子盤に水がかかったりすると、事故につながったりショートしてしまったりということが考えられるので、直接は(水を)かけないでください」と話しています。
言い回しに注目してください。「禁止」ではなく「お勧めしていません」です。冷やすという発想を頭から否定してはいないけれど、水道水を直接かけることは勧めない。なお、この2件はいずれも報道媒体に載った取材コメントであって、ダイキンの取扱説明書の原文ではありません。
室外機の中には電気が通っています
室外機は鉄板の箱に見えますが、中には圧縮機やファンを動かすための基板や電装部品が入っています。雨に濡れる前提で作られてはいますが、それは降ってくる雨に対しての設計であって、上から水を注がれたり、水を含んだ布を貼り付け続けられたりする想定とは違います。
各社が理由として並べているのが感電・発火・電気絶縁の低下だったことも、この文脈で読むと納得できます。数字で「何%の確率で壊れる」と言えるデータは見つかりませんでしたので、私も「必ず壊れます」とは書きません。ただ、メーカーがわざわざ挙げている原因が何なのかは、知ったうえで判断してほしいなと思います。
なお、室内機に高圧洗浄機やスチームを使う場合の危険については、このブログの別の記事で詳しく扱っています。水と電装部の関係という点では、考え方は同じです。
エアコンの節電なら自衛隊の話題より先に試したいこと
最後は前向きな話です。室外機まわりで、メーカー自身が案内している手立てがあります。しかもお金はほとんどかかりません。
室外機から離して日陰を作る

ダイキン公式の2018年7月19日のニュースリリースで、こう案内されています。
夏、室外機は日陰に設置するか、室外機から1mほど離れたところに、植木を植えたり、すだれをたてかけるなどして日陰を作ってあげましょう。
ポイントは1mほど離れたところにという部分です。室外機に何かを被せる、載せるのではありません。少し離れた場所に日陰を作り、室外機が吸い込む空気そのものを涼しくする。同じリリースには「室外機を板で囲ったり、すだれをかぶせた時に吹き出し口をふさいでしまわないよう十分な注意が必要です」という但し書きまで付いています。
メーカーが一貫して言っているのは「離して日陰」であって「載せる・被せる・かける」ではない。この差が、今回いちばんはっきりした結論です。
吸込口と吹出口をふさがない

各社の説明書に共通していたのが、空気の通り道の確保です。シャープは「上手な使いかた(省エネ)」の章で、室外機の吸込口や吹出口に物を置いてふさぐと能力が低下し電気代もムダになる、と書いています。富士通ゼネラルも、障害物があると性能が低下したり正常な運転ができなかったりして故障の原因になる、としています。
ダイキンの実測で濡れタオルの消費電力量が多く出た理由も、まさにこれでしたよね。節電のつもりの行為が、空気の通り道をふさいでいないか。物置がわりに使っていないか、雑草が伸びていないか。この夏いちど見に行ってみてください。
室外機の置き場所や周囲に必要なスペースの詳しい話は、室外機とブロックの設置についての記事にまとめてあります。必要な寸法は機種ごとに取扱説明書・据付説明書で定められているので、そちらもあわせて確認してみてください。囲うことで起きる不具合についてはベランダの室外機がうるさいときの記事で扱っています。なお、風量の設定を見直すだけでも消費電力は変わります。こちらはエアコンの風量自動についての記事をどうぞ。
エアコンの節電と自衛隊の話題に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 結局、室外機に濡れタオルを載せてはいけないのですか?
A. 「絶対に壊れる」と言える根拠は見つかりませんでした。ただ、今回確認した7社すべてが室外機の上に物を載せないよう書いており、パナソニックとシャープは水の入った容器についても室外機を名指ししています。そしてダイキンの実測は節電の方向を示しませんでした。私はこの材料を見たうえで勧めない立場です。
Q2. スノコを敷けば大丈夫ではないのですか?
A. 各社が理由に挙げているのはサビや傷ではなく、落下・転倒・変形です。東芝は変形による火災・感電にも触れています。何かを敷いても載っていることと重さは変わらないため、これらの理由は解消しません。敷けば載せてよい、と読める記述は今回確認した範囲では見当たりませんでした。
Q3. 室外機に水をかけると本当に電気代は下がりますか?
A. 気化熱で何%下がるという公表値は、今回確認したメーカー各社の資料・環境省のページ・報道の範囲では見つけられませんでした。逆にダイキンの実測では、濡れタオルありが3.87kWh、なしが2.77kWhと出ています。ただしこれは2023年8月8日の26℃と8月2日の27℃という別々の日・別々の設定温度での比較なので、そのまま一般化はできません。
Q4. 室外機の周りに打ち水をするのは問題ありませんか?
A. ダイキンは2024年4月24日のリリースで、室外機周辺への打ち水は節電効果が期待できると書いています。室外機そのものにかけるのではなく、周辺の地面に撒くという点を守ってください。なお環境省が示す体感温度約1.5℃という数字は地面への打ち水についてのもので、そのページに室外機への言及はありませんでした。
まとめ:エアコンの節電と自衛隊の話題で確認できたこと
最後に、今回の調べで分かったことを並べておきます。
- 電気代が半分という数字の測定条件は、今回確認した報道の本文には見つからなかった
- ダイキンの実測は濡れタオルあり3.87kWh・なし2.77kWhで、節電の方向を示さなかった(別日・別設定温度の比較)
- その理由は「空気の通り道をふさいでしまったため」とダイキン自身が公表している
- 水の入った容器について室外機を名指しで書いているのはパナソニックとシャープ。三菱電機では該当記述を確認できず、ダイキンの取扱説明書には到達できなかった
- 室外機の上に物を載せないという記述は、確認した7社すべてにあった
- メーカーが案内しているのは「1mほど離して日陰を作る」「周辺に打ち水」であって、載せる・かけるではない
面白かったのは、「室外機を冷やす」という発想そのものは、メーカーも否定していなかったことです。否定されているのは手段のほう。間違いというより、やり方が一歩ずれていたという表現がいちばん近いのかなと思います。
今日からできることは、室外機の前に物を置かないこと。日が強く当たる場所なら、少し離れたところにすだれを立てること。あなたの家の室外機、いま何かに囲まれていませんか?

